あらすじ
全国の書店員が「世に出したい」新作を選ぶ、エンタメ小説新人賞
第 1 回 本のサナギ賞大賞作品が文庫版で登場!
「読み終えたときは胸が震えた。完成度の高さで群を抜き、これほど読ませる作品を書く作者が、いままで無名であることが信じられなかった」 さわや書店・松本大介
<あらすじ>
天保八年、飢饉の村から 9歳の少女、駒乃(こまの)が人買いによって江戸吉原の大遊郭、扇屋へと口入れされる。駒乃は、吉原のしきたりに抗いながらも、手練手管を駆使する人気花魁、艶粧(たおやぎ)へと成長する。
忘れられぬ客との出会い、突如訪れる悲劇。苦界、吉原を生き抜いた彼女が最後に下す決断とは…。
「ここは吉原じゃ。世間からは苦界とか地獄とか呼ばれておる。お前にもそのうちわかる。ここから生きて出たければ強い心を持たんといかん。それができないものは死んでいく。馴染むものには極楽じゃ、嫌う者には地獄じゃ。まあ、これはどこも同じじゃがな……
地獄か極楽かはお前さん次第じゃ」
本書は2017年に小社より刊行された著作を文庫化したものです。
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Posted by ブクログ
紅色の装丁のこの本は、全国の書店員が世に出したい作品を選ぶ新人賞、本のサナギ賞の第一回大賞受賞作品です。
本の中で吉原特有の言葉の説明や、女郎達の暮らしぶりなどが詳しく書かれているので、読みやすかったです。
まず、飢饉にあえぐ村から吉原の扇屋に売られた9歳の駒乃が、16歳で“艶粧(たおやぎ)花魁„となるまでに、名前が変わると共に暮らしぶりも変わる様子が書かれていました。そのなかで、吉原の大門をくぐったときから、ひと味変わった彼女の奔放さに、スカッとする場面が何度かありました。
そして一見華やかな吉原が、実はそうではないことがよくわかりました。過酷な労働、病、借金などを抱え、悲しい最期を迎えた女郎達も多かったのです。火事のとき、足抜をはかった女郎への折檻のひどさや、追い詰められたうえの自死など、すさまじい表現もありました
22歳で花魁の最高位に登り詰めた後も、波乱万丈でした。死があまりにも身近で、地獄とも言われた吉原を無事に足抜けした後、長崎での穏やかな日々と奇跡の再会にやっと救われた気がしました。
大変な生き方をしなければならなかった場所が吉原であることを思うと、決して綺麗事として語ってはいけないと思いました。
〈目次〉
第一章 飢餓の村から
第二章 駒乃、苦界へ
第三章 しのほ十二
第四章 明春十六
第五章 艶粧襲名
第六章 御禁制の誘い
第七章 遥かなる長崎
第八章 滔々と流るる