【感想・ネタバレ】楽毅(四)のレビュー

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武霊君が亡くなったのちに、趙での仕官のみちながなくなり魏にて法家について学ぶ。孔子の言葉、学問をするものは童心のような純粋さをもって師に学ばなければその深奥に触れることができない、という言がよかった。
 また法家を学んでいる際の修めるべきところを修め、棄てるべきところを捨てていると評されたことも上に立つ者の学び方だと感じた。
楽毅が魏の使者として、燕に向かう途中で趙の奉陽君に面会した際、奉陽君が楽毅の器を見抜けなかったことも興味深い。この時代魏から、燕は1000里の距離があるが、孟嘗君や魏王の臣下にそのような使いができないものがいないはずがなく、それでも楽毅が任命されている背景に思いを至らせれば、楽毅の器の大きさを見ることができた。
白起と司馬錯が2人で1年の間に61城を落とした話が興味深い。小さな城を落とすのにも100日はかかるというのが常識の時代にこれができるというのは、非常に驚いた。
一つ考えられるのは、白起はこの前に24万の首印をとっている。周辺の諸侯には恐怖の象徴になっていたのかもしれない。
そこで情報をうまく使えば、相手が自ら降るようにもっていけるのかもしれない。
これは勝利の使い方がうまいのかと思う。ここはすべて空想だが。

覚えておきたいという言葉もう一つ、燕王が昭王から息子の嗣王へと変わった際に燕を追われ、楽毅がいなくなったとたんに燕軍は総崩れとなったため、戻ってきてくれとなった際の文に返した文の一文『昔の君子は交際が絶えても悪口を言わず、忠臣は国を去っても己の潔白を唱えないものです』

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2021年12月13日

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魏王の客として小国・燕に赴いた後、燕王の懇請によって燕に留まった楽毅は、燕王の志を輔け、燕を遥かに凌ぐ大国・斉の七十余城を降し、諸国に威名を轟かせる。燕王没後の冷遇があるから余計にそう感じるのか、燕王と楽毅との交流が清潔で心地良い。第4巻まで読み進めてきた読者も、楽毅の心をなぞったように、労苦が報われた心持ちになるのだと思う。

史書を読み比べ、ときに最も正確であろうものを採り、ときに矛盾した記述を公正に提示しながら、物語を紡ぐ作者の文章は変わらず説得力がある。地に足をつけたうえで、華を感じさせる、読み応えのある歴史小説。

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2018年01月11日

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燕の昭王に気に入られ、燕の将軍となった楽毅の活躍を描く最終巻。

小国である燕が超大国である斉を攻略するという図式のクライマックス。
これはこの大作の前半部で悲劇的に描かれた、楽毅の祖国中山と趙の戦いを思い起こさせます。

ところが今回は上司にも恵まれ、有能な部下もたくさん。
そして何よりも、祖国を失ったがゆえに大きく成長した楽毅自身がある。
彼の熟達した戦術が、怒涛の勢いで超大国を呑み込んでいくさまは、読んでいて圧巻でした。

また、楽毅の上司である趙の昭王、この人の名君ぶりも印象的です。
楽毅と昭王の上下関係は、本当に理想的ですね。
孫子が説くように、そして秦の統一の基礎を作った商鞅と孝公が実際にそうであったように、偉業を成し遂げるには、絶妙な信頼のうえに成り立った上下関係が必須であるということでしょう。

さて、「楽毅」は、全編を通して、戦争が描かれる作品であります。
ですが戦争を描くことで、そこにある人間を描くことに成功しています。

今は平和な世の中ですが、だれの人生にも、なんらかの難局があるはず。
それを現代人にとっての戦争と呼ぶなら、この作品はその戦争を勝ち抜くための勇気をくれるものだと思います。
大切なことは、勝ち抜くといっても、手段を選ばずに、とにかく勝てばよろしい!というわけじゃないということ。
勝つことで信頼を得る、それがこの作品で生きている楽毅という名将の「見事な」勝ち方なのです。

困った時、楽毅ならどうするか……??と考える。
この作品を読めば、常に冷静に、謙虚に生きた名将が、読者にとっての戦争に、新しい活路を見出してくれるかもしれません。

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2015年08月05日

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楽毅,完結!
楽毅の勇名を轟かせることとなる,対斉の軍略が描かれた巻であった.
しかし,そこから晩年まではさらっと描かれていったように感じられた.
中山国時代の軍略を扱っている巻の方がワクワクしたし,感動したように思われたのは何故だろう.

いや,中山国時代の経験があったからこそ,燕での活躍があったのだ.そして天才が才を発揮するには,その上に立つ者の資質・そして両者の信頼関係も非常な重要な要素だったのである.
天才を用いる者の資質・信頼なくしては,天才も歴史に現れることができないということであろう.

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2014年10月07日

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・人は不運故に、胆知を練り、知恵を育てる。
・身内優先の仁、他者への愛である義。義をきわめることで仁にせまる。
・他人を侮蔑すると、感情の濃度が高くなりすぎて、精神の働きを鈍化させ、人としての成長をとめてしまう。
・人は両眼を備えているのに、その両眼で人を見極めることができない。
・失敗を心の中で引きづり続けると、起死回生の機を損なう。
・内を修めないで、外に力を発揮することはできない。
・わかるということは知ることではなく、日常と非日常にいかすことでなければならない
・欲をたつことが、自分を守ることになる。
・家族だけではなく、他人のことをおもいやり、他人の心を容れて、他人のために尽くせば、自分だけでは決して会うことのできない自分に会える。

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2012年05月10日

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燕に辿り着いた楽毅が中華を巻き込む合戦に挑む。大国秦vs連合軍。孫子(孫臏)の兵法を駆使し、秦に挑む楽毅は勇猛であり狡猾(それでいて清々しい)
宮城谷昌光作品の特徴でもあるけど、出来るだけ史実に基づき描いているので、クライマックスシーン直前の註釈は読み手の温度が下がってしまうが仕方なし。読後にはただの痛快歴史小説にはない徒労感が湧き出て来るのも含め宮城谷ワールドな一冊。

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2019年04月02日

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