あらすじ
絵には、現実世界とは別の、絵画という文法がある。私たちはその「文法」を通して、絵を描き、読み、鑑賞している。その文法は、絵の表面からは隠されていて、すぐには見ることができない。しかし絵画には、四角い(あるいは丸い)画面の中に確かに文法があり、人の目を通して、脳で解読されているのだ。いわば、隠された「美の秘密」。本書では「構図」をテーマにその秘密、つまり絵画の文法を一つ一つ取り出していく。
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Posted by ブクログ
「美術の見方を,身につけたい。いったい,何を学んだら,美術はわかるのか。大学を卒業した私は,美術史の研究には進まず,他の分野から美術の核心に迫る道を歩み始めた。美術史とは別の方法で,「美術の理論」をかたちにしたい。そう考えながら。ともあれ,あれから30年。いま,こんな本がある。」(おわりに より)
美術について構図から見てみようといった感じの本。ところどころ著者のこだわりがみられる,特に仏像と美術解剖学についての掘り下げが深い(この辺は養老孟司に師事した影響が強いのだろう)。
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同じ著者による『色彩がわかれば絵画がわかる』が面白かったのでこちらも読んでみました。さすがの安定感、高いクォリティで、両方読むと絵画の「色と形」がわかるようになっています。
本書の素晴らしい点は、著者の美術に対する姿勢。あとがきにそのあたりがよくあらわれています。
(引用注: 著者の美大生時代の考えとして)何百年も昔の絵であっても、いつでも「今」それがすばらしい。それは歴史とは無関係だ。(中略)
そこで私はこう考えた。歴史の中に美術はあったが、しかし美術の中に歴史はない。(中略)
ならば、美術史という方法論では、美術の本質はとらえられない。(中略)
美術史とは別の方法で、「美術の理論」を形にしたい。(p.279-280)
私は何によらず、寄り道した人の視点が大好きなのです。エリートコースまっしぐらの純粋培養ではなく、留学とか挫折とか病気や事故などを経験し、外から中を、邪道から正道を見る視点が大好きなのです。
大学を卒業した私は、美術史の研究には進まず、他の分野から美術の核心に迫る道を歩み始めた。(p.280)
その結果、本書はとてもユニークかつ「誰も言ってないけど確かにその通り!」という観点から「色と形」を論じています。
例えば透視図法。透視図法という技法を論じるのではなく、まず「垂直線」から話しを始めます。題材は、フェルメールの『牛乳を注ぐ女』。牛乳が地球の重力にしたがってまっすぐに落ちていることに触れてから、地球の重力は万物に及ぶ普遍的な力であり、故に垂直線はとても大事、という。「えっ、そこからはじめるの?」
そう、そこから語り始める。
その調子で水平線と対角線を論じるから、次の章で「奥行き」の表現手法としての透視図法がはじめはじわじわと、そして最後に爆発する感じで「あぁ、わかった」と感じられるのです。
そんな感じの、一般的とは言えないけれど腑に落ちるような、よく考えられた角度からの解説が続きます。目次をみると、本書の「構図」それ自体も美しい、と気がつきます。
目次
Step1 ー平面ー
第1章 「点と線」がつくる構図
第2章 「形」が作つく構図
Step2 ー奥行きー
第3章 「空間」がつくる構図
第4章 「次元」がつくる構図
Step3 ー光ー
第5章 「光」がつくる構図
第6章 「色」がつくる構図
Step4 ー人体ー
第7章 人体を描く
第8章 美術解剖学
最後にもう一つ。
著者が理論的に絵画を見る視点を提供しているからといって、理論一辺倒でないことも強調しておきます。印刷物やパソコンのディスプレイでみてもわからない、「物としての美術品」の大切さを訴えます。
超一流の名画の、精巧な複製よりも、二流の現物のほうが、はるかに素晴らしい。美術とは、そういう「モノ」であることを忘れてはいけません。絵は、モノなのです。物質なのです。(p.157)
絵の画面に思い切り近づくと、筆の跡や、絵具の盛り上がりが見えます。絵というのは、線や面がつくる構図、色と色の並び、そういうもので構成されていると思ってしまいますが、本物の絵をまじまじとみると、そうではなくて、絵というのは、筆で描いた、絵具の痕跡なのだということが分かります。(p.157)
Posted by ブクログ
久々に面白い新書だった。「構図」と題してる割にそれ以外の叙述が多く、賛否が分かれると思う。個人的には、釈迦の生涯といった脱線振りが良かったけど、純粋に絵画鑑賞の案内書を求めている人には納得できないかもしれない。絵画の書籍というより、美術との向き合い方を紹介した本というべき。
でも、これを読んで益々東博の円空展を見にいきたくなってしまった。
Posted by ブクログ
絵画において構図はかなり重要な要素を占めている。しかしながらその構成要素を理解してその観点から見るということはなかったので今後活用したい知識。
垂直線、水平線、対角線、円や三角形といった形などの平面的要素、一点から三点まである遠近法、二から四次元などの奥行き、光と色、人体や解剖学。構図に直接的に関係しない仏教美術に関する知識は、それをここに入れることが本としての構図として見本を示しているとのこと。
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思ってた「構図」ではなかった。
「構図」の概念みたいな事が書かれているのかな?
絵画を見る時の視点が増えました。
仏陀の話は興味深かったです。
Posted by ブクログ
絵を描くときの勉強になった。縦横三角色彩遠近法、みななるほど。マイナス★は仏陀の生涯の部分(2段組みになったところ。編集者もそう思ったんだろうな)。この本のテーマにはちょっとそぐわないか。仏像の誕生について、筆者が関心を寄せているということは分かったけど。
Posted by ブクログ
構図。
それはあれこれの図形をいかに画面上に配置するかという、視覚的な問題だと思っていた。
この本を読んでその認識が変わった。
構図は、視覚的要素のみを扱っているわけではない。
画面左下に人影が描かれていたとき、それは単なる黒い点ではない。「人」という意味が、見る者にはっきりと伝わってくる。
人間は、意味の世界で生きている。構図もまた、意味に接している。
Posted by ブクログ
幼少より絵心がなかったこともあり、美術的な感覚が乏しかったが、改めて絵画の楽しみ方を教わったような気がします。確かに構図というのはなんらかの目的があって採用されるわけで、そこから捉えれば理解しやすいと共感。振り返って、何事もアウトラインをまず押さえることの重要性を改めて実感した次第である。
Posted by ブクログ
構図、というと、モチーフを三角形やらなにやらの形に配置すること・・・
その程度の浅い理解しかなかったわけだが。
構図は形だけが作るのではなく、色や光や空間も構図を作り上げる要素であることを知った。
そして、人体にも脊柱を中心とする重心のバランスがあり、これが人間の自分の位置を知る能力の礎となり、位置関係の把握から構図への意識が生まれるという話も、興味深かった。
古今東西の美術作品が例としてふんだんにあげられていて、楽しく読める。
Posted by ブクログ
大変面白かった。私のような素人が「構図とは何ぞや?」ということについて知るとても良いガイドになっていると思う。なるほど、このような知識を持って絵を見るとまた違った味わい方が出来る(ように思う)。写真の構図の勉強にもなった(ように思う)。
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絵の見方が分からなかったので、美術について何か新しい発見があるかもと思い読んでみた。
美術のことが好きな物知りなおじさんの話を聞いてる感じだった。よく分からないところもあったけど、筆者が楽しそうに語る様子が思い浮かぶ。話がよく脱線するところも、興味のある分野を熱く語る人らしくておもしろかった。
絵の見方が分かったかどうかは分からないけど、美術館に行ってみたいなぁと思った。あと、もっと美術について色々学びたい!
Posted by ブクログ
なるほど~、そういう見方をするのかー、という目からうろこがちらほら。やはり芸術とかスポーツとか、知識の有無で楽しめる幅がずいぶん違ってくるね。
ま、ただ最後の方の仏像の話は蛇足だったような。。。
Posted by ブクログ
step2の遠近法や次元の話はおもしろかった。step4の仏像や骨格の話は、本のタイトルから考えても、それまでの話の流れから考えても、(著者自身が文中で語っている通り、)一冊の本としてのまとまりをなくしてしまっている。そんな「破綻」も悪くないというようなことを著者は書いているが、どう読んでも、良い「破綻」ではなく、ただの「破綻」である。著者の余分な話に付き合わされた気分になる。
Posted by ブクログ
ダビンチ「最後の晩餐」の1点遠近法は凹んでいる感覚、ゴッホ「オーヴェールの教会」の2点遠近法は3Dのように立体的な存在感、そして大徳寺の枯山水の高さ、深さを強調して感じさせる3点遠近法など興味深い。そして3次元の構図から、なんと4次元の構図。モネの「積わら」など連作の時間と光の表現。長谷川等伯の「松林図屏風」の凹凸展示の際の美しさなど、絵画の世界は深い。フェルメールの絵、また写真における人物の有無が全体のバランスに大きな影響を与えていることは、私も写真を撮る際には注意したいと思います。色彩学にとどまらず、宇宙論、宗教学、そして何と人体解剖学など、絵を学ぶことの奥深さを痛感する。
Posted by ブクログ
構図を形から空間、光、色まで広げて説明している。最初の方は理解できたが、補色も構図となるとついていけない。最後のインドの仏跡探訪と美術解剖学は、面白かった。十分に理解できなかったが、読後感は悪くない。
Posted by ブクログ
何気なく読みはじめた本ですが、これまでの世界観が少し変わりました。構図とは、点と線、形、空間、次元、光、色によってつくられ、結局構図は宇宙を要約したものだということです。
また構図のもう一つの要素として人体がありますが、これも結局内なる宇宙であります。
僕らは、宇宙(地球、光、地平線、時間、人体など)が適切な構図で表現されているものを美しいと感じているにすぎないと感じました。
構図には理論があり、論理的に美しいものを導き出すことができるということですが、さらにそこに感性や感覚を表現できるのが真の芸術家であるということでしょう。確かに、ゴッホやピカソ、ダ・ヴィンチ、フェルメール、セザンヌなどの絵は構図の原則を踏まえてそれぞれの宇宙が表現されていることがよくわかりました。