あらすじ
世界最高のインターネット・カンパニー、サークル。広くて明るいキャンパス、一流のシェフを揃えた無料のカフェテリア、熱意ある社員(サークラー)たちが生み出す新技術――そこにないものはない。どんなことも可能だ。 故郷での退屈な仕事を辞めてサークルに転職した24歳のメイは、才気あふれる同僚たちに囲まれて幸せな会社生活を送りはじめる。しかし、サークルで推奨されるソーシャルメディアでの活発な交流は、次第にメイの重荷になっていき…… 人間とインターネットの未来を予見して世界を戦慄させた、笑いと恐ろしさに満ちた傑作小説。
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Posted by ブクログ
主人公メイが最初のうちは戸惑いながら、徐々に盲目になっていく様子が恐ろしかった。第二部の最後でなんだ、ここまで盛り上げて陳腐なラストか、と思ったけど最後まで読んで唸らされた。この物語が終わったあとの世界がどうなるなか気になる。
(映画は見ていないのですが、キャスティングは知っていたので主人公エマ・ワトソンで再生していたから余計に結末が意外だった。と思ったらやっぱり映画版は結末が違う模様。そりゃ陳腐になるわなぁ。)
Posted by ブクログ
とにかく面白かった。500ページ超の本を一気に読んだ。
実在するIT企業を髣髴をさせる現実的な設定が特に面白かった。
あと10年もすれば全て実現できるのでは?と思わせる
妙にリアルな近未来の世界がぞわぞわと心に迫ってくる。
便利にすること、だれにでも分かりやすくすること、正直で公平であること。
そこから始まったことが段々と常軌を逸していく。
スタートが「善」だと、そこに異議を唱えるのは難しい。
中庸というのは本当に難しいのだと改めて思った。
このシステムは本当に便利だ、だれにでも無料で使えるようにするべきだと思うシステムもあった。けれど、その裏には常に危うさが付きまとう。
オンラインが実生活から切り離せなくなっている以上、この難しいバランスをずっと取り続けなければならないのだ。
Posted by ブクログ
現代の1984。舞台はサークルという「C」のロゴを持つIT企業。疑いようもなくモデルはGoogleであり、世界は知らず知らずのうちに情報を管理され、プライバシーはなくなり、監視のもとに晒される。「C」の穴が閉じるとき、サークルは完全な円になる。
ここでは、SNSのニコマークを得るのに中毒になっている人間や、知る権利の正義を信じてハードワークをこなす人間がたくさん出てくるが、それらは全て私たちの生き写しだ。私たち一人ひとりは罪のない一般人だし、影響力もないし、そんなに悪い人でもない。ただその無意識の盲信が集団で持つ力はあまりに大きすぎる。
知る権利は確かにあるところまで正義だろう。性犯罪をなくすこともできるだろうし、介護が必要な親の生活を見届けることもできるだろうし、税金の無駄遣いをなくす効率的な政治をすることもできるだろう。しかし、アカウントを義務化して、人間にマイクロチップを埋め込むのはやりすぎだ。ただ、その境目はどこだろう。その境目ははっきり分かったり急にやってくるものではなく、あまりにグレーで緩やかにやってくるために、我々は変化に気付かず、気付いた時には世界は終わっている。
非常によくできた小説で、デイヴ・エガーズという新進気鋭の作家の実力にも非常に惹かれた。
Posted by ブクログ
「すごい、ここは天国だ」という書き出しで始まる、現代ディストピア小説。かつてのディストピア小説は共産主義国をモデルにしていたわけだが、この現代ディストピア小説のモデルは言うまでもなく Google で、誰もが内心気がついている恐怖感を具現化した。そして、これが壮大なパロディとなるか、黙示録となるかは、まだ誰にも判らない。
Dave Eggers は現代アメリカを代表する作家で、この "The Circle" も New York Times bestseller #1。本当は原著で読もうと思っていたのだが、面白そうだったので翻訳でサッサと読んでしまった。
Posted by ブクログ
繋がること、シェアすることが加速していくと、こんな絶望的な世界になってしまうのかと思うととても怖い。こんなこと起こらないだろう、と笑えない今があるからこそ。
ブラックユーモアの極地、デストピア小説という言葉にも納得がいった。
Posted by ブクログ
ますます進化するIT化、ソーシャル化。
「いいね」押していい気分に。「いいね」押されていい気分に。
会社の資料はすべて共有フォルダへ。メールは全員へ返信で。
CCには知らない部署の人の名前までずらっと並ぶ。
すべてオープン、それが「善」となんとく思うようになり、
すべてを透明化することで社会が一歩前進すると信じていた。(少し前の頃)
透明化によって、貧富・優劣の差はなくなり、手助けし合える“素敵な”社会が生まれても、
なんか居心地の悪さも感じる。個性もいつの間にか失われている気がする。
そんな「違和感」が脳裏をよぎる人もちょいちょい出てきたが、世間の“ムード”には抗えない。(ここが今)
10年後 あの時に感じていた「違和感」は正しかったんだ、と気付いても遅い。
サークルという輪の真ん中は空洞。何もない。
手遅れにならないように、今、多くの人にこの本を読んでもらいたい。
ただ、手遅れにならないようにこの“ムード”に抵抗したいところだが、
抵抗する方法がわからない現実に気付くと恐怖感はさらに倍増する。
この本に書かれてるのは、良かれと思って築き上げた夢のような未来の影に潜む、
取り返しのつかなくなった「奇妙な世界」。
罪のない“ムード”をどうやって軌道修正すればいいのか、考えさせられた。
BGMはゆらゆら帝国「空洞です」の小泉今日子バージョンで。
Posted by ブクログ
誰もが知っている検索大手のあの会社っぽい架空の会社「サークル」が舞台。そこに中途入社した若い女性が主人公の話。普段何も考えずに利用しているIT技術の数々、ソーシャル系のツール類が「社会を良くしたい」という私企業によって統合され、個人情報が丸裸になってしまった場合、行き着く先はどんな社会かを垣間見れる。企業に情報が集中してしまうこと対する警告とも読み取れるが、政府がやっている個人情報の透明化施策にも同様の恐怖を感じた。
Posted by ブクログ
2017年映画が来るということで先読み。まぁおもしろかったのだが、スピーディーなテンポがまるで映画向き。読書としては少々疲れます。原文がそうなのかどうか未確認とした上で、日本語版はけっこう読みづらかった。古式ゆかしい文学ではなく、そのスタイルでさえ情報の海の中心である“サークル”的な表現なのだとすれば、ふさわしい訳文と言うべきか。
Facebookなどソーシャルメディアとのつきあい方を見直したい人や違和感を明文化しておきたい人(大なり小なりきっと誰もがそうだと思うのだけれど?)は読んでみるといいかも。確かに「嘘やヒミツがなければその場面で争いや憎み合いにならないのに」と思うことはある。でもヒミツ――まだ語られていないということは、人生で必要だとも信じているので、同書で描かれている世界はわたしにとって完全にデストピアでした。
予告編で観ただけで判断するなら、メイ役のエマ・ワトソンがおそらくはまり役。完全にイメージ付けられてしまい、読書中も脳内再生はエマ・ワトソンだらけでした(笑)
これは映画が楽しみ。救われる方向の描写があると嬉しいのだけど、どうなるのでしょうか。
Posted by ブクログ
なんという恐怖小説。グロでもオカルトでもないのに。
訳者はあとがきで「にやりとさせられたり膝を打ちたくなったりするようなエピソード満載」と書いているが、笑えるどころではない。最高に恐ろしくて気持ちが悪かった。
もちろんそれはこの小説が面白くないという意味ではなく、SNS疲れを感じている人や、逆に所謂ツイ廃の自覚がある人に読んだ感想を聞いてみたい。
恐怖と気持ち悪さの要因は2つ。強制コミュニケーションとファシズム的情報管理。
1部では、見聞きした情報や映像を含む自分の全ての情報を同じ「サークル」の社員たちと共有するのが当たり前であり、毎日膨大なメッセージを交わし合うのがコミュニケーションであるという社風が延々描かれる。
何しろポルトガルの話で盛り上がるためのブランチ会のお誘いメッセージをスルーした主人公が上司に呼び出され、メッセージを無視されたことに涙ぐむ会の主催者に謝罪させられ、その経過レポートを全社員が共有するというんだから相当気持ち悪い。
この上司いわく、
「たとえば、この会社が幼稚園のクラスだとして、ひとりの女の子が誕生パーティーを開いたときクラスの半分しか出席しないとすると、誕生日の女の子の気持ちはどうなると思う?」
幼稚園児の集まりかこの会社は。
主人公はこんな社風に疲れ病んでいくのか……と思いきや、2部ではむしろ主人公のほうが気持ち悪さのスターダムにのし上がっていく。
全ての情報が公開され誰もがそれを見られることこそが全世界の幸せだと信じて疑わない主人公は、ただ静かに病気を癒したいと願っている両親のメルアドを無断でネットに公開し、「サークル」に情報管理されたくなくて逃亡した元カレを監視カメラとネット信者の「協力」で追い詰める。
どれもこれも発端は彼女の「善意」であり、何故それを両親や元カレが厭うのかが彼女にはさっぱり分からない。全てをオープンにして全世界と繋がることをどうして拒むのか?
果ては昏睡状態に陥った友人の頭の中を覗けないことにすら苛立ちを覚えて侮辱と感じる。
いよいよ世間で不評のマイナンバー制度が施行されようとしているが、これを読んだらますます不安しか覚えない。
Posted by ブクログ
SNSをカリカチュアライズしたような小説で、Facebookなどを一生懸命やっているのであれば面白く読めるのかもしれない。
冴えない地方公務員であったメイは知人のつてで人も羨む最先端企業サークル(グーグル?)に転職する。「起こったことは全て知らされるべし」の原則のもと、メイはSNSに没頭して社内でのパーティーランクを上げ、プライベートでも謎の男性カルデンとの関係を深めていく。サークルの新たな社是である透明化(常にカメラを装着してプライベートの全てを公開する)にもいの一番に志願し、世界の全てを透明化し選挙もサークルのSNS機能に統合しようという会社の広告塔になっていく。
カルデンがサークル設立者の一人であることを明かされ、過度の透明化、政治化への危惧を説かれたメイは、一大発表会で透明化への反対を表明するように説得されるが、、、