【感想・ネタバレ】城塞(中)のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

大坂の冬の陣・夏の陣を、戦が始まるきっかけから大坂城落城まで描いた歴史小説。
2016年大河ドラマ「真田丸」の予習として読んだ。
主人公は小幡勘兵衛という牢人で、後に軍学者となる人物。彼は、戦の表舞台には立っていないが、徳川方の間諜として豊臣方に入り込んでいた人物であるため、両者を行き来しつつ狂言回しとして物語を進めていく。でも、途中で時々、全く登場しなくなり、誰が主人公だっけ?となることも。司馬小説ではよくあることだけど(いわゆる「余談だが現象」)。

たまに勘兵衛が、恋人お夏のために豊臣方に肩入れして徳川を裏切りそうになり、その場面だけはグッとくるものがあるのだけど、最終的には打算と私利私欲で動く人物なので、途中からはそんなに感情移入は出来ない。

それ以外の、戦の表舞台に立つ登場人物は以下の人達
豊臣:淀殿、豊臣秀頼、大野治長、真田幸村、後藤又兵衛、片桐且元
徳川:徳川家康、徳川秀忠、本多正純、本多正信

どの人物も、何かしら足りないところや汚いところがあって、他の司馬小説の主人公(竜馬・高杉・土方・信長・秀吉ら)みたいに純粋にカッコいいと思える人はいない。でも、その人間臭さこそが、司馬さんが群像劇としてこの小説を描いた意味なのだろう。

そして、女優で歴女の杏さんが本の帯か何かで書いていた、『最強の城も、人間や組織次第でこうも簡単に滅びるのか』みたいなことが、この小説の一番のテーマ。最強の城と、実戦経験豊富な現場担当者。これらが揃っていながら、なぜ大坂城は落ちてしまったのか。上に立つ者が世間知らずでマヌケだったから、なのだろうけど、その一言だけでは片づけられない、数々のボタンの掛け違いによる失敗から学ぶことは多い気がする。

以下、印象に残ったエピソード

片桐且元の豊臣方から徳川方への転身
- 豊臣を裏切る気持ちは無かったのに、家康の策略と豊臣上層部の疑心暗鬼から、やること全て裏目に出て、転身せざるをえなかった片桐且元。豊臣への忠誠心は誰よりも強かったはずなのに、最後は大坂城へ向けて大砲を打つことまでさせられた彼の心境は、言葉に出来ない。人と人との些細な擦れ違いから、人生を狂わされてしまうこともあるのだ。大河ドラマ「真田丸」小林隆さんの悲喜劇入り混じった演技も、印象深かった。

大坂五人衆集結
- 真田幸村、明石全登、後藤又兵衛、毛利勝永、長曾我部盛親ら五人衆。戦う場所を欲して、家の再興、キリスト教布教許可など、各々の理由を持ちつつ大坂城に集まって来て、団結して戦いに臨む。大河ドラマと並行して読んでいたため、映像とシンクロしてワクワクして読み進めた(負けるのは分かっているのだけれど)。
犯罪者家康と、純粋な豊臣方牢人たちとの対比

- 司馬さん曰く、徳川家康の大坂攻めは戦争というよりも、本質は「犯罪」(主家である豊臣家に対し、騙したり、約束をすっとぼけたり、内部分裂させたりしたから)。家康をとことん悪人に描いているが、それは彼が「後世にどう思われるか」という発想が無かったから、との解釈。一方、真田幸村・後藤又兵衛ら大坂方牢人は、豊臣が滅んだら他に頼るものが無いわけで、自然、死を恐れず武名をあげ、後世に向かってよき名を残すことに純粋に研ぎ澄まされていくようになる。それぞれの生き方の違いだったのだろう。

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2017年02月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 真田幸村が登場し、大坂冬の陣がえがかれる中巻。

 武士たちは己のために自分の居場所を決め、行動している。
 様々な価値観のもとで動く武士を1つの軍としてまとめ、全体として動かすのが大将の仕事。

 大将によって、大坂冬の陣の勝敗は決まった。
 秀頼が大将として機能すれば、この戦の結果はかわったかもしれない。

 歴史の話だけでなく、どんな場面でもトップによって組織が大きく変わることはあると思う。
 トップが有能である事、それにはトップが自分自身を知り組織の人間を知り尽くしているという事が必要なのだと思う。
 決して、目立つトップが有能という事ではない。トップ自身が苦手な事は得意な人間にふるというのもトップの力。
 組織の1人1人の性格や能力をいかし、うまく使っていくことができれば、きっとその組織は最大の力を発揮する。

 徳川家康は、そういうトップだった。だから、徳川が主筋であるはずの豊臣を滅ぼすという、あぶなっかしい計画を進めることができ、成功させる事ができた。

 真田幸村の真田丸。名前は知っていたが、この小説で初めてその機能を知った。
 幸村もまた、己を知り己を生かすためにこの戦に出た。
 彼は恩賞を求めていたわけでもなければ、豊臣の勝利への固執もない。ただ、自分自身の力を試し、結果を残すために豊臣家へ戻った。

 次は下巻。

 歴史的な結果は有名で、読まなくても分かる。
 それを司馬遼太郎がどういう始点からどうえがいていくのかが楽しみです。

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2013年09月07日

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