あらすじ
二十歳になったら死ぬ子供…。そう予言された光陽(こうよう)が、間もなく二十歳を迎えようとしていた。予言を知らず、家の中に閉じ込められるようにして育った光陽は、祖父と約束した「二十歳になったら自由にしていい」という言葉を信じ誕生日を楽しみにしていた。しかしある日、光陽の前に美術愛好家の梁井(やない)と名乗る男が現れる。梁井は光陽を屋敷に呼び寄せ、「契約」を取り付けようとしてくる。「契約」の内容はとても屈辱的なもので、光陽には耐えられそうになかったが、「お互いが死なない為に必要なこと」だと言われ……。神か悪魔か…。謎の男に貪られてゆく…。
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Posted by ブクログ
夢枕獏の「キマイラ吼シリーズ」ファンにはたまらないモチーフがぶっ込まれ、それにBLの要素がてんこ盛りと言う…個人的になんとも贅沢なお話。獣化する人間、と言うのはDNAに擦り込まれているのか、たまらない要素の一つ。恐らく、人間の姿の時は美しいのが、獣化すると「獣」になってしまう、と言う、この急激な落差がたまらないんだろう。「キマイラ」も鳳と久鬼と言う、見目麗しい男二人が獣人化してしまう、と言う、「なんで、美しい者があんな姿に…」と言う、ある種背徳的な喜びがあった。20歳までしか生きられないと言われて、ひっそり身を隠すように生きて来た光陽と、彼の前に傍若無人に現れて契約を迫る梁井。(ここからネタバレ)光陽の宿命は、獣人の餌としての存在。貴重な餌を巡り、獣人同士の熾烈な戦いが繰り広げられるアクション面でもワクワクドキドキさせられるのは間違いないんだろうが、それに加えて、獣人の餌でしかない自分と言う存在を守って生かしてくれるのもまた獣人、と言う矛盾したものの中で、獣人を生かしてやれるのも餌、餌を生きながらえさせるのも獣人、と言う、離れ難い絶対的な関係性が「人」としての感情、相手を想う感情が加わる事で、命を懸けた守り合いの様相を濃くして、「俺はお前を守る」「お前を俺が守る」って世界が好きな人にはたまらないBL作品。自分の肉体を相手に与える、と言う意味合いで、正に自分の肉体を相手に食らわせるその痛みを凌駕する感情にノックアウト食らう。