あらすじ
性交渉未経験の男性がこの20年間、増え続けている。いまや30歳以上未婚男性の4人に1人が童貞だ。オタクが集うシェアハウスで理想の女の子の絵を描き続ける32歳、容姿への自信のなさから同性愛を選択した36歳、AV男優に採用されたが女優に嫌がられセックスできないまま自殺した33歳―。彼らに共通するのは、過剰なプライドの高さ、コミュニケーション不全、潔癖な女性観だ。童貞というコンプレックスは彼らの社会的な自立をも阻害する。性にまつわる取材を続ける著者がえぐる日本社会の不健全さ。衝撃のルポルタージュ。
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Posted by ブクログ
ルポ 中年童貞 (幻冬舎新書)2015/1/30
ある程度自分自身や社会を客観的に分析できる力、外から自分を見る視点のない人物では全くダメ
2016年10月17日記述
中村淳彦氏による著作。
1972年生まれ。中村淳彦は、日本のノンフィクション作家、ノンフィクションライター。
東京都目黒区生まれ。 明治学院中学校・明治学院東村山高等学校、専修大学経済学部卒業。
編集プロダクション、出版社を経て、フリーライターとなる。
中年童貞と言ってもまず高学歴型と極端な低学歴型の2種類がある。
本書内でも紹介される読書会で世間知を取り戻したネトウヨ宮田氏やAKBに金をつぎ込みまくる私大職員増井氏あたりは疑問を感じながらもまだ良い。
それ以外の登場人物には大きな違和感を覚えざるを得ない。
やはりある程度自分自身や社会を客観的に分析できる力、外から自分を見る視点のない人物では全くダメだということだ。
童貞が原因というよりそこら辺のおかしさがあって結果として中年童貞に至っているという印象。
著者は性欲があり風俗に行く事自体は恥ずかしいことではないとしている。
その通りだ。ただ実際に知っている知人で風俗は行っていて童貞じゃないからって
頭のネジのおかしい奴は残念ながらいるのも事実だ。
印象に残った文章を引用してみたい。
男性独自の冷静沈着、客観的な判断力というのは、多く童貞を失うことによって得られるものだからであります。
童貞のあいだのものの考え方には、どうも
禁欲からくるマイナスがある。
「貞潔は、ある人々においては徳では有るが、
多くの者においては、ほとんど悪徳である」とニーチェも言っているとおりです。
「行動学入門」三島由紀夫
年齢に関係なく、二次元好きなオタクに共通しているのは処女信仰です。
処女信仰は、処女であることがなにより重要であるという考え方です。
処女じゃないと人間ではないっていうのは異常ですが、オタクにとっては当然の思考。
愛情を注ぐのは必然的に幼い女の子になる。
基本的にオタクの人は真面目で、一つのことに集中できる職人気質な性格です。
40代、50代はお金がある。若い世代のオタクは金がなく親にパラサイトしたりニートになってしまっている。
警備会社はあぶれ者とかドロップアウトした人たちのセーフティネットとして機能している業界
ネットを居場所にして発信している人で、ぶれない軸を持っているのは一部である。
大部分は多数派意見に流される。
成功者で高学歴、金を持っているけど女性だけは苦手、みたいな中年童貞以外は現実から離れすぎて、救いようがない。
中年童貞に多い属性は介護職員、農業関係者、ネット右翼の3種類。
介護も農業も国や自治体の政策で、補助金出して人を集めている。
政策が絡むと失業者のセーフティネットになって、本当にとんでもない奴ばかりが集まる。
職場が破壊されるのは当然、産業も破壊される。
モテるのは、いつの時代もヤンキー、運動部のエースである。
女性は無条件に強者を選択する。
女性はどんなに真面目で誠実であっても、自信のなさやコミュニケーション能力に難があったり、また流行からズレていたりする男性は弱者として排除する。
男が女性に排除されない為には、強者に見えるコミュニケーション能力、
それが叶わないならば弱者として切り捨てられない環境に身を置くことが必要なのだろうか。
恋愛は「お互いの完璧さを競い合うレース」ではありません。
お互いの強みを生かし、弱みを補い合う為にするのが恋愛でありセックスであり結婚です。
子供への過干渉、価値観の押し付け、退治扱いするなどの毒親が中年童貞を産んでいる
中高年の婚活は就職活動を超える厳しい状況だった。
相手に外見と収入、勤務先と趣味くらいしか伝わらない為、そもそも婚活をする必要のない
スペックが高い男性だけが、女性とカップルになるという現実がある。
婚活女性が結婚相手に求めるのは年齢、外見、収入の3点である。
どれが欠けても排除の対象となる。
残念ながら多くの中年童貞が誇りにしている純粋さや
優しさ、異性に対する潔癖さは、女性が男性に求める条件には入ってこない。
婚活市場においても童貞の人は基本的に人見知りが多いから、誰ともちゃんと会話ができない。
他人と比較して客観的に自分を見直したり、
外部から情報を入手して成長することがないので厳しいです。
中年童貞には父親的存在が必要
60代の団塊世代と70代以上の人達では、父親としての能力が違う。
団塊世代は甘やかされて育っているから、何事も自分を優先する。
そういう人は子供を育てられない。
Posted by ブクログ
男性独自の冷静沈着、客観的判断力というのは、多く童貞を失ってから得られるものだからであります。『行動入門学』(三島由紀夫)
男は男性ホルモンで闘争心を掻き立てられて、ガリガリ仕事をこなす。それができないと女性にモテない。豊かな社会になって、男性ホルモンを無暗に分泌しなくてもやっていける世の中になった。
中年になっても童貞でいる男が増えている世の中。。。どうしていくべきか。
ここでいう童貞は単純に性交体験が無い人だが、実際では性交を経験していても所帯を持てない人間はアウトである。将来的社会の維持に必要な人材を再生産できなければ、社会保障を貪るだけの不必要な存在になる。
いかに社会的自立ができる人間を育てるか、それを何より大事に考えていかなければいけない。
早く日本にもベーシックインカムこないかなー。社会的脱落者は酔いつぶれてそのまま知らぬ間に凍死する、そんな社会も優しいのかも。そんな風に思ってしまった。
理想を並べ立てない、リアリスティックな社会派な一冊だった。
Posted by ブクログ
介護事業を携わるようになった著者が、混沌とした現場で「中年童貞」を目の当たりにしたことをきっかけに始まった連載をまとめた書籍。プライベートな恋愛や人間関係で女性と性行体験がない30歳以上の男性を「中年童貞」と定義し、その本人たちや性産業に関わる人に話を聞きに行く。
登場する「中年童貞」のほとんどは、精神的にバランスを崩してしまった人ばかりで、コンプレックスや人間関係のつまづきなどで性格がねじ曲がり、客観性を失って自尊心が肥大していった結果、オタクコンテンツに極端にのめり込んだり、10年以上も前の想い出に浸ったり、ネトウヨに走ったり、部下へ攻撃をするようになる。
また、介護業界は圧倒的な人手不足なため採用のハードルが低く、「中年童貞」を含む「なにもできない人」が集まりやすくなって混沌とした状況となっているという。パートナーを見つけるための婚活パーティーも年齢、外見、収入でシビアに査定されるため、「中年童貞」に付け入る余地はない。
おそらく「中年童貞」をとりまく状況のひとつの側面、極端な例にすぎないのであろうが、非常に厳しい内容で読んでいて暗澹とした気分になる。読書会に参加して自ら交友関係を広げようとしている宮田氏や、この人の言うことだったら聞いてもいいというお父さん的存在が必要だと説くAV男優の小川氏がわずかな希望を抱かせてくれる。
「中年童貞」はパーソナルな問題ではなく、社会の個人化、少子化、婚姻率の低下、雇用の非正規化、関係性の貧困など、社会的要因が重なって生まれた存在である。自身が「中年童貞」であるかどうかにかかわらず、宮田氏のように自分の弱点すらも笑える明るさと、居場所を見つけて積極的に他者とかかわっていくことが重要だと再確認させられた。
Posted by ブクログ
心のすきま(寂しさ)を媒介にお金を落とさせようとする商売方法、人材不足のために誰でも受け入れようとしてクラッシャーを招き入れてしまった介護業界の闇。。。
中年童貞を生み出すのは母親の過保護、ひいてはそれを生み出す家父長制度、ひいてはそれを支える社会制度。。。
そう、中年童貞はそんな社会の歪みと結びついている面も大きいのだ。
ルポなので著者は実在の中年童貞氏にインタビューをしてるんだけど、社会には私のまだ知らない、想像を越えた環境や価値観で生きてる色んな人がいるんだなあ。。って思った。
童貞か否かは置いといて哀しいコミュニケーションしか知らないモンスターのような人。
反面教師にして自分はそうなっていないか?って客観的に問い続けないとだめだな、って思わせる人。
なんか重くて落ち込んでしまうね。。
大人になったら自分の非や欠落はその人自身の責任になる。でもその人が「そうなってしまった」原因が、何らかの歪みがその人の周りにはたぶん確実にあるのだ。
叩こうと思えば叩きどころ満載の本著。
それでも色んなことを言いきって問題提起したのであろう著者の気概を感じる。
著者の述べることすべてに同意はできないけど、少なくとも私は今までと同じように「中年童貞」をネタとして笑えなくなったな。