あらすじ
幼児期の記憶がなかったOLの貴浦志鶴子。偶然知り合った露木の言葉に、幼い頃の記憶がよみがえってきた。過去をもっと思い出すため、会おう約束したその日、露木は何者かに殺されてしまう。廃村となった露木の出身地をつきとめた志鶴子は、なくした記憶の欠片を取り戻すため、幻の故郷・長野東屋敷へと向かう。しかしそれは禍々しい過去との対面のはじまりであった。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
表題作はミステリー、と言うより
人間の人生、を見ている感じの作品。
抗うことの出来ない運命。
そして、逃れられない宿命。
それが一人の女性に襲い掛かります。
逃れられればよかったのですが
違和感を抱いた時点で彼女は
負けだったのですから…
もうひとつの作品も
なんともいえない読後の悪さを覚える作品。
偶然と言うものがにくくなってきます。
砂の碑銘
砂の碑銘
志鶴子は子供のころの記憶が曖昧で、自分の生まれた育った場所を思い描く。
ある日、志鶴子は、混雑した電車の中で、痴漢と間違われた露木を助ける。実は痴漢被害を訴えた女性は女スリ。志鶴子は、女スリが彼から何かを抜き取ろうとしていたのを目撃したのである。
露木との会話から、思いもかけず幼いときの記憶を覚醒させる訛りを聞く。ここが物語の出発点であるが、読者はまだ今後展開される志鶴子の数奇な運命や生い立ちを知る由もない。
露木からお礼の誘いを受け待ち合せた志鶴子だったが、彼は現れなかった。物語が進むにつれて、露木は志鶴子の生い立ちにも複雑に関わっている者であったことが明らかにされていく。
志鶴子が関わる人々が亡くなる、ついには志鶴子自身も人を殺める、そして子供のころの忌わしい記憶が蘇る。
志鶴子の数奇な人生を描く、悲しすぎる物語である。