あらすじ
ぼくはすごく不幸な少年・青年時代を送ってきた。親や先生の「いい子」だったぼくは「自殺してはならない」と自分に言い聞かせ、強く生きようと決意し、長い間、修行してきた。そして、30年間「なぜ生きるのか?」と悩んで見出したのは、「そのことを知るために生きるのだ」という回答だった。自らの苦い経験を振りかえりながら、いま不器用に生きるすべての読者に捧ぐ、「生き方」の訓練。
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Posted by ブクログ
カイン好きなので何となく気になり中古で購入。
十数年振りの中島義道さんの本。
想像していたよりずっとずっと胸に刺さりました。
『T君』に語りかける中島さんの過激な言説の裏に見える真摯さ。
その言葉も実は『自分に向けて』語っていると吐露する正直さ。
読みながら自分中途半端だなあと思った。
言ってることがすごくよく分かると思ったり、もしかしたら自分は中島さんが言う『粗野で鈍感な』マジョリティかもしれないなと思ったり。
中島さんのようになりたくはないけど、彼の言うマジョリティにもなりたくない。
では、どうするか。
Posted by ブクログ
嫌われる勇気とかとも似てるような人間関係や社会に悩む若者(青年)への本。
今の筆者が進路に悩む若者に語りかける形式で進んでいく。彼は親から期待されている道と自分の興味の狭間で悩んでいるという。
自分の若いときの話を引き合いに出しながら、『弱い』若者に向けて主にカントの哲学にそっていかに自分が『強く』なったのか、どんなことに苦しみを、救いを、感じたのかを告白する。
著者は自分は強くなったという。しかし決して幸福になったとは感じていない。彼は強くなる過程でいろんな人の存在を打ち消してきた。それがよかったのか悪かったのか。ただその道は生き延びるために必要だったのだ、という。
彼自身、強くなったことを後悔しているような節もあるのが面白い。彼の孤独の城は、地位は、成功は、ある意味敗北と取れなくもない。しかし死には打ち勝つことができた。たぶん人の数だけ戦いがあって、そして敗北も勝利もあって。こんな人もいたのだなあと思う。
カインな人に向けて、限定的な書き方をしているが、ちらとでも思い至るところのある人は意外と多いのではないだろうか。みんな何かしらの印を刻みながら、自分を殺しながら(生まれ変わった、変わった、というのはある意味少しずつそれまでの自分をあやめていくことでもあるのだなあと思う。変われなかったら自分自身への死が待っているのかもしれない)、生きていっている。
タイムリーすぎる本を読んだなあと思う。個人的にはそこまで死を恐れていないという天の邪鬼な気持ちがある。単純に死んではいけない、という論理はむしろ苦しいと思う側だ。しかし死にたくないときにこういう本は力になる。自分の命の始末が自分で決められる世界であって欲しい。ただそんな世の中は単純な幸福はもたらさないだろう。むしろ物事を複雑にする。だけど私は死よりも自由が欲しい。それはたぶんこの著者の言葉でいったら、人に迷惑をかけることから逃げたいからだ。そして私は弱いまま生きたいと思う。
Posted by ブクログ
初中島作品。
簡単に人物を批評すれば、この上ない比類ない皮肉屋であり、環境がそうさせた典型例だとも感じた。
心理学的用語でいえば、離人症、ACである。
苦しみ続けることによって変化する。自殺してしまったらその苦しみさえ無に帰してしまう。
106⇒人類には粗野な人種と繊細な人種がいる。全く別に人種。粗野な方が総じて人生というゲームで勝ち続け、繊細な方は負けに負ける。それによってどんどん偏屈な人間になっていく。
107⇒粗野なものは悩まない強さ、気にしないという鈍感さ、そして忘れるというずるさを持っている。
繊細なものは粗野にはなれない。
そして日本に蔓延する思いやり教、優しさ教、気遣い教といわれる伝統的な慣習に嫌悪してる。日本は道徳のレベルが高く謙虚で慎み深い民族。と、一般的に言われる。俺が思うに、それはどうもうっわつらの自己保身のためのツールに過ぎないと感じる。
氷山の一角とまでは言わないが、笑顔優しさは人間の先っぽの表層の部分に過ぎない、と。
そう友達も家族も表象に過ぎない。つまり性格ではない。自分がそのように認識しているだけ。
この日本に蔓延する常識と呼ばれるマジョリティ側の価値観に窒息死しかけるマイノリティの叫びの声。
Posted by ブクログ
ここ数年に流行したアニメに描かれている主題は、ガンダムしかり、エヴァンゲリオンしかり、攻殻機動隊しかり、「お互いのコミュニケーション不全が問題の原因だということだ。だから「心が分かり合えることが理想なんだ」という流れにいきつく。
エヴァンゲリオンでは全人類が1つになることで他人を無くし、傷つくことのない世の中を理想とした。しかし主人公はやはり他人が居る世界を望むことになる。それはこの厳しい現実の世界で生きていくということだ。
しかし、この本は言ってしまえば他人のいない世界をあえて望んでいる。他人がいるから気を遣うのだ、期待して傷つくのだ、他人の評価に踊らされるのだ、いい子でいようとして窮屈になるのだ。自分の殻にこもれ!他人を拒絶しろ!世の中に迷惑をかけろ!
言いたいことは本当に良くわかる。善人がいかに利己的な都合で自分を縛ろうとするのか、そんな利己的な評価を受けようといい子にしようとする自分はなんて不自由なのか。
この本に書かれている指針のように行動しようと、しまいと、「誰かのため」や「愛」や「善行」は自分の中に潜むいったいどんな動機に駆り立てられての行動かを考えるきっかけになる1冊である。