あらすじ
走っても走ってもどこにもたどりつけないのか――。土方歳三や近藤勇、沖田総司ら光る才能を持つ新選組隊士がいる一方で、名も無き隊士たちがいる。独創的な思想もなく、弁舌の才も、剣の腕もない。時代の波に乗ることもできず、ただ流されていくだけの自分。陰と割り切って生きるべきなのか……。焦燥、挫折、失意、腹だたしさを抱えながら、光を求めて闇雲に走る男たちの心の葛藤、生きざまを描く。
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Posted by ブクログ
主人公は、阿部十郎、篠原泰之進、尾形俊太郎。
新撰組のいわば負の部分が、彼らをとおして描かれていると思います。
近藤、土方、沖田、斎藤あたりはこの作品では脇役なんですけど、それぞれの濃さがいい具合に出ています。尾形さんが監察方なだけに、山崎さんの出番がかなり多いです。ピリリとした美味しいところをもっていきます、山崎さん面白い人です。
土方さんがやっぱりカッコいいです。そして、いいひとなんです。これは尾形目線の土方さんという描かれ方で「いいひと」なんですけど。鬼の副長の「苦労」をね、尾形さんと一緒に垣間見る感じです(笑)。伊東さん離脱の後、伊東さんについた隊士が案外少なかったことを指して、「近藤さん、あんたは勝ったんだぜ」と土方がそっと語る場面が物凄く物凄く好き。
沖田さんは腹黒不思議ちゃん。ただ、篠原あたりから見たら腹黒いんだけど、本人に腹黒いつもりはないんだろうな。フリーダムなひと。無邪気で動物的なひと。けったいなこと言って尾形さんを困らせたり、篠原さんをイラッとさせたり、三木三郎の地雷をふんじゃったり。主にひっかきまわし役。そして、するどく真実を語る人(笑)。
あと、個人的にこの斎藤さんがすごくよかったな! 斎藤さんの不気味なところというか剣客としての凄みがしっかり描かれていると同時に、朴訥なかわいらしさが垣間見えたりして。この斎藤さんは萌ゆる。御陵衛士の中でいろいろあって浮いてしまった阿部に、斎藤さんらしい分かりにくい優しさを見せるんだけどもちろん全然伝わらなくて(笑)。そんな不器用さも堪らない。
あと、伊東さんのことがほんとうによく描かれているな、と思いました。上から目線な言い方ですみません。
正論でまっすぐな伊東さんの強みと弱みとか、生きることに精いっぱいで苦労のしどおしだった十代、やっと人心地ついた江戸の道場主時代、そしてはじめて若者らしく夢を追いかけようとしたこと。そこらへんは主に篠原目線で語られるのだけれど、伊東さんのいっぱいいっぱいの姿がいじらしく思えてきます。
油小路の決闘のあと、命からがら逃げこんだ商家の二階で、篠原が顔をおおって泣くシーンがほんとうに切ないです。
阿部十郎の、闇雲で流されっぱなしでそれでいて負の感情でいっぱいの屈折したところも上手くハマっていたと思います。彼との対比みたいに浅野薫が描かれているんですが、浅野はほんとうにいい人!なんです。あれ、君って天使?みたいな(笑)
浅野のまっすぐな心をなにかと重荷に感じながらも、阿部にとって、彼は大事な拠り所な人になっていきます。それだけに、浅野が迎えた結末はつらい。
男の人たちの錯綜する思惑やら、大切に守りたいと思うものと現実との乖離やら。
悩んで、間違って、掴んで、喪って、走って―――。
一生懸命な姿は決してカッコいいものではないのだけれど、人にはそれぞれの真実があり、現実がある、っていう、人生の当たり前のことが深く語られていました。
会津で消息を絶った尾形さんが、しぶとくひっそり生きているのかも(・・!?)という終わり方がよかったです。
全体暗い話ですが、尾形さんが出てくるとかなり和みます。
Posted by ブクログ
2016/2/3
いやーがんばった。私。
なぜこのジャンルに手を出したのか。
歴史モノはダメなんだ。苦手なんだ。
9割方読んだところでやっと入り込めた。
「幕末 簡単に」とか検索した。努力した。
史実は知らないけどこの時代の若者の群像劇としては普通に楽しめた。
昔の人はすごいな。二十歳そこそこでこんなことやっちゃうんだ。
病床の沖田に接する土方がせつない。
他にも色々、土方はせつない。
人気あるのもわかる。
でも私は斉藤一を贔屓にしよう。
新撰組も幕末も良く知らないけどとりあえず。
Posted by ブクログ
『幕末の青嵐』のあとに読みました。
裏表録と言うだけあって、『幕末の青嵐』は表、『地虫鳴く』は裏の物語。
青嵐と同じように章ごとに視点がかわり、それぞれの人物を見れる。
阿部の人間臭さが愛おしい。
あと山崎烝のしゃべり。
尾形と関西弁でペラペラしゃべってる。
山崎ファン必見です。