あらすじ
身分をのりこえたい、剣を極めたい、世間から認められたい――京都警護という名目のもとに結成された新選組だが、思いはそれぞれ異なっていた。土方歳三、近藤勇、沖田総司、永倉新八、斎藤一……。ひとりひとりの人物にスポットをあてることによって、隊の全体像を鮮やかに描き出す。迷ったり、悩んだり、特別ではないふつうの若者たちがそこにいる。切なくもさわやかな新選組小説の最高傑作。
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Posted by ブクログ
現在、大河ドラマ『新選組!』にハマっている私が、組!が好きなら是非この本も、とSNSのフォロワーさんからおすすめされて読んだ小説。
タイトルにある「青嵐」とは、「初夏の青葉を揺すって吹き渡るやや強い風」のことだそう(コトバンク参照)
なるほど、登場人物それぞれ青さがある……!
永倉新八は自分は普通の人間、周りの人達のようになにかに秀でているわけではないと思い込み、序盤の土方歳三は定職に就けず家族から白い目で見られていて……
アイデンティティの揺れや自己評価の低さに共感できる部分があると思った。
そして、自己評価と他者から見た様子のギャップが面白いな……と感じた
(例えば、沖田・斎藤は永倉新八のことを肝が据わった人物だと思っている。本人は秀でたものがないと思っているのだけれど……)
キャラクターの個性も際立っていて愛おしい。
不思議ちゃんだが本質を見抜く目を持つ沖田総司、
優しくて温和、そして京に馴染めず武州に帰りたいと密かに思っている源さん(井上源三郎)、
仕事が早く段取り良し、実は情に厚く流されない芯を持った土方歳三、
そして周りが悩んでいる時も「俺は人を斬って生きる」と決意し、一匹狼……と見せかけ、組織への想いが段々形作られていく斎藤一……等、それぞれの人物の良さや脆さを存分に感じることのできる小説だと思った。
印象的なシーンも沢山ある。
土方さんが沖田が吐血して倒れているのを見つけてしまい、沖田よりも青い顔をし、まるで土方の方が死んだような有様だと原田左之助視点で描かれるシーン。
アツくなりやすく、そこを斎藤に指摘されたこともある藤堂平助が、油小路の変にて斬られてしまい、「死にたくない」と繰り返しながらも息絶えてしまうシーン。
斎藤の、組への愛着が垣間見えるシーン。
市村鉄之助と土方さんの別れのシーン。
今、大河ドラマ新選組!にハマっている影響から様々な新選組作品を読んでおり、それぞれの解釈を感じ取っている。
この小説は、心理描写が繊細で美しいと思った。
そして、情景描写もとても良い……近藤、土方の故郷である多摩のシーンは、草や土の匂いも感じそうになった。
切なく、哀しく、時に惨いシーンもあるが、読後感は爽やかな小説だった。とても愛おしい。
Posted by ブクログ
志を持った男達の生きざま!すっかり虜になってしまった。
新選組のメンバーが順番に語り手となり、他のメンバーのことや時勢について語る。
同じ時勢のことも語り手が変わると違った印象になるのも面白い。
メンバーそれぞれの個性もよく分かりクスッとなったりニヤリとしたり、切なくなって泣けてきたり悔しくて憤ったり、と様々な感情が次々にわき上がる。
幕末の時代の波に翻弄された若者達。
初めは全員が揃って志を高く持ち、先へ、これよりももっと先へ…と突き進めると信じていたはず。
けれど思惑は人それぞれで、不器用な若者達の野心が手探りで交錯し絡まっていく。
「なにも持っていないということは、実に強い。こうした動乱の時期こそ、なにも持たぬ者からなにかが生まれてゆくのかもしれない」
何も持っていなかった若者達が様々な葛藤を経て何かを掴み新たに生み出し、それにより時代も動く。
「周りから馬鹿だと言われようが、これと思えるもんがあるなら、とことんやり通したほうが面白ぇさ。そうすればきっと、はっきり景色が見えるんじゃねぇか、と思ってさ」
己の全てを新選組に捧げた男・土方。彼にはどんな景色が見えたのだろうか…。
新選組がとても身近な存在に思えた作品だった。
Posted by ブクログ
新撰組ファンとして読んでよかったと心から思う小説だった。
”よくあそこまでやったという崇敬と、さぞ大変な仕事だったろうという痛みと、きっとあれでよかったのだという願いと。”これは小説の最終章、佐藤彦五郎によって語られる言葉である。『幕末の青嵐』を読み終わったあと、私はまさにこの言葉のように複雑で一言では言い表せない感情に襲われた。
それぞれの視点で描かれるこの小説では、近藤や土方を筆頭に新撰組に関わった人物達がとても色鮮やかに描かれている。視点の主によって人物への印象がことなり、それによって人物に深みを与えている。
始めはどこか心の距離があった試衛館のメンバーの間に、強い情が生まれていくのがよく分かり、それがとても嬉しいと同時に彼らの行く末を思ってとても辛い気持ちになる。油小路以降、ひたすら悲劇的な展開で読むのが辛かったが、それでも止められないのが新撰組の不思議な魅力である。
それは彼らを見ているとこの結末が必ずしも悲劇的なだけだったとは思えないからだろう。特に土方は権力にも時勢にも媚を売らず、自らのやりたいことをやり遂げたのだ。土方のあの最後をただ悲観するのは土方に対する冒涜だろう。
小説の最後に語られる佐藤彦五郎の言葉は新撰組への愛に満ちており、作者がいかに新撰組に愛情を抱いているかがよく分かる。本当に読んでよかった。