あらすじ
「全ての内なる物を破壊する」――恐ろしい生物兵器によって人類絶滅計画――世界の再編と一部の人類だけを残す現代のノアの箱舟――を企む、狂った大富豪ウルリック。豪華客船<ジェネシス・ドーン号>にて、人類壊滅計画の実行を図ろうとするウルリックの計画を察知したタイラー・ロックとディララは船に乗り込む。調査を開始する2人だったが、ウルリックによって先回りされ、逆にディララが拉致されてしまう。ウルリックと彼女の後を追うタイラー。世界各地での同時多発的に行われる計画の実行時間が刻々と迫る。タイラーは果たして計画を阻止することが出来るのか。そして<ノアの箱舟>は本当に実在するのか? そしてそれはどのような形で存在しているのか?すべての謎はアララト山にあった……。旧約聖書の偉大なミステリー〈ノアの方舟〉伝説に隠された謎を、大胆かつ戦慄する解釈でスピーディーに描き切ったミステリー・アクション・スリラーの傑作!
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宝探しもいよいよ佳境!
上巻も面白かったが、下巻はそれ以上。ついに解き明かされるノアの方舟の謎。ワクワクしながら読んだ。クライブ・カッスラーとジェームズ・ロリンズを足して2で割ったような感じの作風。増えすぎた人口を抑制し、自然との調和を図るべきと主張する人々は実在するだけに、ありえない話ではないなとも思う。本当にノアの方舟が見つかったら世紀の大発見。歴史のロマンを感じる。
Posted by ブクログ
"ネタばれあり
歴史の「もしも」と現代科学のコラボレーション。まるで、ジェームス・ロリンズさんのシグマフォースシリーズのような作品。
聖書にあるノアの方舟。聖書に記載されているものが、長年の伝承を繰り返すうちに誤った内容のまま伝わっているとしたら?神はノアに巨大な船を作らせて、動物のつがいとノアの家族を舟に乗せ、洪水が全世界を水没させるという内容が記載されているが、実は世界を滅ぼしたものは洪水ではなく、水辺に多く発生する疫病だったとしたら?
その疫病はプリオンで、太古のプリオンを生物兵器に変えて、ノアの方舟伝説そのものを現代で行うことをたくらむ人物を阻止するのが主人公。
プリオンと聞いて思い出すのが狂牛病(BSE)。プリオンという蛋白質が異常発生することで発症するもの。蛋白質なので、口から摂取することで感染していくものだと思っている。牛のえさに肉骨粉(牛や羊の脊髄などが入っているもの)を使っていたため発症した。人間でも食人の風習のある部族からクロイツフェルト・ヤコブ病の症例があると聞いたことがある。また、遺伝でプリオン病が代々受け継がれている家系があるそうだ(「眠れない一族」という本に詳しい)。
本書では、それが空気感染するらしい。空気感染し、宿主である人間をむさぼりつくすと死滅する。体が溶けてなくなる恐ろしい兵器だ。幸いフィクションなので恐れる必要はない。
歴史に埋もれた、人類がまだ発見していない遺跡があるかもしれないというストーリーには興味をひかれる。このタイラー・ロックの冒険はシリーズものらしい。次の作品も読んでみたい。"
Posted by ブクログ
ボイド・モリソンによるタイラー・ロックシリーズ第1弾の下巻。
いよいよノアの方舟の謎が解き明かされる。それはこれまでの常識を覆す奇想天外ともいえる仮説ではあるものの、周到に用意された伏線のおかげと聖書の解釈の幅のおかげで実に納得できる形で提示される。
タイラーとディララの恋に発展するかどうかという関係や、ウルリックの執拗なまでの執念も見所の一つで、ノアの方舟やそこに隠されているであろう宝、上巻でその威力を存分に知らしめたプリオン病原体など、物語の終結に向けて加速度的に収束していく。
タイラーは最後の最後に秘密を一人で抱え込むことになるが、次作に向けて明るい展望を伺わせる終わり方となっており、読後感はすこぶる良い。次作が刊行されるかどうかは全く情報がないようだが、刊行されたら是非手に取りたいと思う。