【感想・ネタバレ】金魚鉢の夏のレビュー

あらすじ

社会福祉の大胆な切り捨てで経済大国に返り咲いた近未来の日本。警察の経費削減で捜査を委託された元刑事の幸祐は、孫娘の女子大生・愛芽と共に、老婆の死亡事故が起こった山奥の福祉施設を訪れる。単なる事故死のはずが、閉鎖的でクセのある施設の人々と接するうち幸祐の勘が騒ぎだして……スモールタウン・ミステリの傑作。

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ネタバレ

*社会福祉の大胆な切り捨てで経済大国に返り咲いた近未来の日本。警察の経費削減で捜査を委託された元刑事の幸祐は、夏休み中の孫娘・愛芽と共に、老婆の死亡事件が起こった山奥の福祉施設を訪れる。単なる事故死で片づけるはずが、クセのある施設の人々と接するうちに幸祐の刑事根性が疼きだして…ノスタルジックな夏休みの情景に棄てられた人々の哀しみが滲む傑作ミステリ*

一言で表すならば「ぎっしり」。これでもか!と言うくらいに色々なネタや仕掛けがぎゅうぎゅうに詰め込まれている感じ。近未来の設定も、まさに今起こりうるような展開も面白かったし、樋口ワールドも堪能したけど、ネタが多すぎて収束しきれていないのがもったいなかった。とは言え、さすが樋口ワールド、蜃気楼の向こう側に揺れるようなラストが心地いい。

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2017年05月15日

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ネタバレ

生活保護が廃止された近未来。「希望の家」という低所得者の収容施設で起きた殺人事件を巡る物語。まずその、生活保護が廃止された社会という世界観が独特で、事件以上に目を引いてしまう。ここにあるのは格差社会のリアルさではなく、昨今の世論の息詰まるような閉塞感から感じる「そうなってもおかしくない」というリアリティのほうが強い。かなり悪夢的な世界観で、事件より設定のほうの異質さを感じる作品だった。反面、事件そのものは大したことはなく、ありふれたつまらない殺人事件ではあるのだが、それが逆に異様さを伴っているのが空恐ろしく、返って非常に不気味に映った。異常な社会の中での普通の殺人は文字通り黙殺され、探偵役の初老の刑事やその周囲も、適当に済ませ穏便に片付くことを望んでいる。そこに倫理観や正義感はなく、その命の軽さが異常な社会と相まって一層不気味に感じるのだ。殺人事件の扱いがそのまま作品の舞台設定の世相を反映しており、命の価値や値段などに優劣が付いているというのがミソで、あえて主人公側を単純な正義の人間にしていない辺りに、隠されたリアリティがあるのだろう。異常な社会で暮らせば、価値観は揺らぎ、それを貫こうにも、貧困から漂う諦観が作品全体を包んでいる。単純な施設の隠蔽というわけでもなく、ありがちな個人のエゴや保身による隠蔽ではなく、都合の悪いことを押し包む個人では対抗できないシステムの指示、つまるところは世間からの要請が隠蔽の背景にあるというのは非常に恐ろしい。読後感はやや人を選ぶものの、風刺的ではあるが教訓や警句めいたものは無いので、そのあたりの作者のバランスの匙加減を楽しめるか否かでこの作品の評価は変わるだろう。個人的には、貧困は同情や正義感、倫理観ではなく、無情なまでのリアリズムと、単なる善悪の二項対立では計れない闇の深さを感じるので、その部分を丁寧に描いたこの作品には好感を持てます。加えて作者特有の「身振り」の描写が非常に上手く、風景描写も相まって、非常に文章力は高く感じる。各登場人物の台詞回しなどもウィットに富んでおり、冗長ながらも流れるように読めた。ミステリとしては真犯人の断罪がないのは非常に判断に迷うものの、罪の適用範囲や社会そのものが狂っている状況では真相やその罰に価値があるかという根幹的なことまで考えてしまう。ひそかに行方不明の女児のミスリードなどは上手く、そこは引っかかってしまった。

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2019年05月27日

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ネタバレ

帯と表紙に惹かれて読んだ。正直それほど期待していなかったのに次々起こる怪しい事件に心を躍らせ読み進めた。

**ネタバレ**
おじいちゃんホームズと孫娘ワトソンか、新鮮だな(*'ω'*)と読んでみたら全然違う…!設定はリリー・フランキーの短編を思い出した。こんな世界になればいいのにって思っちゃうのは自分が恵まれているからなんだろう。名探偵役を期待したひとは普通の女子大生と普通の元警官でしかなかったし、頑張ってみても結局名探偵はいないんだと衝撃を受けた。謎解き部分がしっかりしてないからミステリ色は強くないのに、やたら考えさせられる。おじいちゃんは頑張ったし、ちゃんと事件に迫ったけれど肝心のところはうやむやなまま。神の視点からしかわからない事件はまるでタイトルの金魚鉢のようだった。
そのわざわざタイトルになっている金魚鉢。小さな金魚鉢で泳いでいるのは誰なんだろう。由希也と蛍子はいつか罪に窒息するのではないか。夜宵のことを知った蛍子が由紀也への束縛を強くしそうで、気持ちを繋ぎとめるために、共犯で居続けるために殺し続ける未来が見えてしまった。

ただ説明に出てくる海外の描き方がいまいち。近隣諸国を嫌いなのは別にいいのだが、小説で押し付けられちゃうとちょっと引く。私だって好きではないけれど、いちいち地の文に作者の影が出るのはきつい。あと、人名が読みにくい。愛芽を何度「あいめ」「まなめ」と読んだことか。夜宵って字面は綺麗だけど弥生でもいいじゃん…。設定が突飛なのはミステリにはつきものなので、それを差し引いてもおもしろかったけど、私が編集者なら直すかなあ。

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2014年10月04日

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ネタバレ

樋口センセの作品を上梓順に読んでるわけでは無いし気にしても居なかったから今作に触れるのがたまたま2018年の終わりになったワケなんだけど。
しかし今作で描かれる作品背景がフィクションなんだけど妙に生々しく感じてしまう世界情勢との符号か。
創作だと絵空事だと捨てるのも簡単だけど、少しでも針が振れたら今作のような日本もあり得るのではないかなー…というあたりが巧みなのかそれとも自分の政治信条と近しいのか。

自分が触れてきた樋口センセの作品にしては、推理役が真面目に推理しているなぁ…という。
そりゃ「元刑事」なら当然でもありますか。
刑事ってのは元が付こうが、作品の中では勘が働いて不整合や不条理が気にくわないものなんですよね。

センセらしい「考えが多い」未熟な男子も登場するのですが、主に引っ張るのはその老いた元刑事ってのも自分には新鮮でしたなあ。
さらに幾つかの事実が交錯しながら積み上がって、結局のところ誰ひとりとして「全体」の姿には辿り着けてないというのも面白い。
真実を知っているのが読者だけという。
舞台劇なんかにしたら面白いんじゃないですかね。

それでも、小狡いことをしたヤツには罰が下っているし、主人公サイドはベストじゃ無くてもベターな幕引きを向かえているので、こういうのは自分には合ってますね。
少しだけ苦かったり酸っぱかったりするのが樋口有介センセの作品って感じがして。


…作品の感想とはズレるけど、所長の山本夜宵。
幾花にいろセンセの絵柄でキャラ像つかんでたわー。「演色」の大高さんあたりの。

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2018年12月09日

Posted by ブクログ

ネタバレ

北朝鮮がミサイルを撃ってきた後の世界
生活保護施設での転落死から
事件が思わぬ方向に転がって…

話の動き出しが遅いし、
最後までモヤモヤした感じで終わった気がする。
そんな終わり方でいいの?

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2018年04月14日

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