あらすじ
菜摘もまた、店の客の紘子に一目惚れして付き合っていた。が、進展せず悩んでいた時、紘子の家でたまたま見たビデオから、伸が性風俗の商売に関わっていることを知る。一方、栗子も所在不明の伸に会いたくて、周辺を調べ始めた。一途な二人に、とんでもない恋の結末が訪れようとは……。揺れ動く女心を巧みに織り込んで描く痛快ラブ・サスペンス。ちょっと切ないけど元気も出ます!
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Posted by ブクログ
さっぱりした結末で、読後感がよかった。
これまで深い恋愛をしてこなかった白馬の王子様を待つタイプの栗子と、自分が相手にとって望ましくない存在になっていると自責しやすい菜摘、実は栗子と似た経験をしていた栗子の母、離れた方が幸せなように思う山猿と離縁しない紘子、と様々な女性が出てくる。
栗子の幼さと、菜摘の青臭さ(カッコつけ)はまったく違うが通じるものがある。それぞれお互いにさらけ出せたのは幼なじみのなせる技なのかもしれない。菜摘のような性的マイノリティで幼なじみと続いている方は少ないだろうし、また菜摘とくったくなく接することができる(無知ゆえの偏見はあれど)栗子の組み合わせは稀有な存在なのではないかと思う。
また、紘子のような存在は初版から20年以上経ったいまでもいる。男性がいないと生きていけないと思い込まされている一部の女性は、現代でも存在する。
暗く描かれがちな不倫や性的マイノリティをさっぱりと描き(性的マイノリティが出てくるストーリーで誰も死なないのは貴重)、一方で女性の自立とは何なのかというテーマをさらっと残していく、ストーリーを楽しみもできるし深いテーマをじっくり考えることもできる幅の広い作品だと思う。