あらすじ
亡くなった恋人を追悼するため東尋坊を訪れていたぼくは、何かに誘われるように断崖から墜落した……はずだった。ところが気がつくと見慣れた金沢の街にいる。不可解な思いで自宅へ戻ったぼくを迎えたのは、見知らぬ「姉」。もしやここでは、ぼくは「生まれなかった」人間なのか。世界のすべてと折り合えず、自分に対して臆病。そんな「若さ」の影を描き切る、青春ミステリの金字塔。
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Posted by ブクログ
痛い。心に突き刺さるのは文章と北陸の冬の寒風。
自分が生まれてこなかった世界では自分がいる世界より尽くが上手く回っている、そして、その原因は自分の存在と自分の代わりに生まれてきた姉に起因する。
本来産まれてこなかった姉は持ち前の想像力と行動力で様々な問題を意識的に、時には無意識に解決していた。
本当に産まれてくるべきだったのはどっち?
こんなに自分の存在を否定された主人公がかつていたかな?
『 もう、生きたくない』と零した瞬間に元の世界へと戻される。これも酷く残酷だ。
無味無臭な人生において唯一意味のある存在であったノゾミは自らの死を望んでいる。こっちにこいと手招きしていた。
そこにラストのあのメール。
ラストはいわゆるご想像にお任せしますエンドだけど十中八九一人でいたから魔が差したんだろうと思う。。
Posted by ブクログ
主人公の高校生、リョウがひょんなことからパラレルワールドである自分の生まれてこなかった世界線であるサキの世界に迷い込む話。と言っても異世界モノではなく、両親が不倫、ネグレクト、恋心を抱いた相手の死など、がっつりダークテイスト。
作中、自分の世界と違う点を見つけてはサキ持ち前の「想像力」で解説が入る展開。その異なる点が悉く先の世界線では好転しているというのがポイント。
傷ついた末に「何もしない」を選んだリョウと「オプティミスト」になることを選んだサキで変わってしまった現実が結構シビア。
ラストは考えさせる系だが、タイトルの「ボトルネック」という文言から全てが察せられるかと…。
Posted by ブクログ
これほどまでに救いのない物語だとは思わなかった。
自分が存在していない世界がみんなが生存している世界だったら……
こんなの辛すぎる。
最後、あのメールを見てどういう選択をしたのか気になる。
パッと見は悲しい結末になりそうな気がするけど、どうなんだろう。
Posted by ブクログ
なんともつらい。最後にサキによって救われたりするのかなと思ったけどそんなことはなかった。ノゾミにとってもリョウは特別なんだろうと思っていたらそれも全然そんなことなかった。ことごとくつらい方になっている。最後の最後にあのメール。救いがどこにもない。
読み終わってみるととにかくタイトルが本当につらい。
でも物語としてどんどん読み進めたくなるしおもしろかった。
Posted by ブクログ
えぐかったな。最初から最後まで救いなし。
あのオチのつけ方は予想もしてなかった。
ミステリ系はあまり好きでもなかったが、これは面白かった。純粋に謎は気になるし、これからどうなるんだろうという気持ちでページを進めていた。
物語自体は最初から最後まで暗い展開が多く、気が滅入るくらい主人公は不幸の塊。高校生らしさは捨てきれていない分、暗い主人公に少しイラッとしてしまう部分もあったが、1番多感な時期に恋人が死んで両親もあれじゃ仕方ないのだろう。
じゃあ、サキの世界はリョウの理想の世界なのか。それはわからない。羨ましいという描写はあったが、だからといって理想と決めつけることもできない。リョウはこんな世界を想像もしていなかったと思う。だからこそ全て受け入れた上で生きてきたのだ。あの世界はあくまで可能性であって、サキと同じようにリョウが動いてもああなったかどうかもわからない。
自信や可能性に満ち溢れていてもおかしくない高校生という時代を、どれだけ自分は無力なんだと痛感させられてしまうのは、エグい。気の毒でしかない。どうせ自分なんてと諦めるとかならわかる。けれど、この作品は、どこかお前のせいみんなこうなったんだと言っているようなもので、生きる希望を根本的に打ち砕いている。不幸な奴は、とことん不幸なんだなって感じた。
個人的には、この先のリョウに救いはないと思う。この展開からの打開は無理だ。本当の幸せを掴み取ることはできない。行動できなかったから、サキはこうしてたんだ、自分も!ってなっているなら、あの3日間でなっている。東尋坊に誘われて堕ちていく末路しか想像できない。それか、生きてはいるし普通に生活もしているが心が壊れてどうしようもない状況のどちらかだと思う。
小説としてもミステリーとしても面白いので、個人的にはオススメです。
Posted by ブクログ
ふたつの可能世界、「自分が存在している世界」と「自分が存在していない世界」。
自分がいないほうが、世界が良い方向に向かっていくという事実をいくつも突き付けられていくのがとても残酷。
自分が、ボトルネック(=阻害するもの。排除されるべきもの。)だと理解するところなんて痛ましすぎる。
⋯なんだけど。
起きたことは仕方がない、受け入れるしかない、と全てに対して投げやりだった彼が「自分が存在していない世界」で数日過ごしたことで、結果として自分自身とあれだけ向き合うことになった。
もう生きていたくないと思ったとしても、
母からあんな衝撃的なメールが届いたとしても、
きっと彼は今までと違う生き方ができるし、生きていってほしいと思う。
Posted by ブクログ
高校の頃に読んで、すごく好きだったお話です。自分がいなくてもなにも問題なく世界は回るどころか自分がいないほうが上手くいってるという…この…つらさが好きです。私自身「自分いなくてもいいんじゃないか」と考えることが多いので、勝手に共感しながら読んでいました。終わり方もすごく好きです。あの終わり方じゃなかったらこんなに印象に残っていないと思います。
Posted by ブクログ
<目次>
略
<内容>
いわゆるパラレルワールドの話なのだが、そこにミステリーの要素が絡み、事件の首謀者はあまり登場しない、という話。解説で村上貴史が詳細に論じているが、そこを読むともう少し作品を楽しめるかも…。そこかしこに伏線が張り巡らされているから。
Posted by ブクログ
ボトルネック
リアルタイムでは無く「過去作」として読んでいる為、発売当時の読者とは違った印象になるかも知れない。米澤穂信は面白い作品を数多く発表しており僕の中では圧倒的な作家である。
古典を読むときには、特に年代は気にしないが、リアルタイムで読んでいる作家の作品は、どうしても時系列が気になってしまう。この時代には何があったとかそういうことではないが、少なからずまだ様々な作品が発表されていない、新進気鋭の作家であっただろうこの時代とたくさんの作品が生み出され一流作家と言われるようになった、現在の作品と比べたときの取り方はどうしても異なってしまう。
今作は、主人公であるリョウと、亡くなった彼の恋人であるノゾミの関係を中心に、リョウと言う人物のわびしさや生き様、彼を取り巻く環境が描かれていく。
少し読み進めるとわかるが、現代風に言えば、いわゆる「転生もの」に近いかもしれない。違った時間軸、もしくは違った世界に迷い込んでしまった主人公と言う設定だが、それが死産してしまった自身の姉が生きている世界線で、リョウが生きてきた世界と姉が生きている世界の違いを比べながら、リョウは自分に起きた事象を受け止め、自身の人生に結論を出していくというストーリーだ。
今作もかなり衝撃的な内容だし、ある意味でリドルストーリーの様相もあるが、現代の筆者が持っている薄気味悪さの様なものが少しだけ垣間見える作品だ。設定やストーリーは面白いし、この独特な空気感はとても哀愁的だ。
別世界に登場する姉のサキは素晴らしいキャラクターであるが、同時にこの特異な環境を受け入れるスピードが早すぎてリアリティが余りにも欠落している。もう少し読者が腹落ちできる内容だったら更に凄い作品になっていたと思う。また、現代の米澤穂信であれば、サキはフミカを殺し、もしくはリョウがフミカを殺すというダーティーな結末もあったかも知れない。いくら聡いサチであっても永遠にノゾミを守る事は出来ないし、フミカは事あるごとにあらゆる手を使い人の不幸を手に入れようとする人物だ。この様な結末も面白いし、その後、今作品の結末に繋がっても魅力的だったと思う。