あらすじ
「真夜中は、なぜこんなにもきれいなんだろうと思う」。わたしは、人と言葉を交わしたりすることにさえ自信がもてない。誰もいない部屋で校正の仕事をする、そんな日々のなかで三束さんにであった――。芥川賞作家が描く究極の恋愛は、心迷うすべての人にかけがえのない光を教えてくれる。渾身の長編小説。
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Posted by ブクログ
光について
本人でさえ自覚がないまま、ぼんやりと暗いところにずっといた入江冬子を、照らして、冬子は選択をできるようになって、そして、どこかへ吸収されてしまった冬子の光、三束さん
私生活は荒れども美人で仕事熱心でマッチョメンタルな聖は色々周りに言われていて割かし外れてもいないのだけど、それでも嫌いになれない弱さを持っている
冬子が三束へ電話越しに、私と寝たいと思ったことがあるか聞いて、はい と言われたシーンは、自分までが冬子になったように気持ちがいっぱいになってしまった 三束さんはどんな気持ちでその返事をしたのだろう
Posted by ブクログ
人間関係のもやもや欲張りセット! な本。
・同級生を「家に自分で上がったから」と襲う男子学生
・男性上司との飲み会の席で口論になり、引き下がらない女。それだけでなく、何も言わないその場の女性たちを卑下する女
・↑この女性の知人に「あなたは利用されているだけ。あの人は男性をとっかえひっかえしている性悪女」と吹き込む会社の元同僚
・独身の同級生(女性)に家庭の愚痴を山ほどこぼした後、「あなたも子供を生むべき」と言い、最後には「この話ができたのは、あなたが自分の人生の登場人物ではなくなったから」と話す既婚女性
……そんな生活の中で、主人公・冬子は三束という男性と出会う。
恋愛中心かと思いきや、周囲がクズだらけな世の中で冬子に見えた一筋の光が三束さんだったのかもしれないな、と思いました。
しかし、その光はあっけなく手の内をすりぬけてしまうという、なんとも悲しい終わり方。
(現実的には、「あんな顔して泣くなんて引くわ……」とか裏で思われてそうだなと思ったり。この本、ほんと人間不信になるにはぴったりだなと思います)
恋愛小説というよりは、その後の失恋にスポットをあてている物語という感触。そんなジャンルは聞いたことないけど、失恋小説。
「どろどろした中に一粒光るものがあれば、それで人は生きられます」ということなんでしょうか?
ぜんぜん「恋人たち」が出てこないのはタイトルで選んだ人からしたら、これじゃない感満点かもしれないな……。
とはいいつつも、表現とか展開が好きだったので星満点にしてみました。
Posted by ブクログ
氷が張った湖のような透明感と静けさを感じる作品だった。光に感する描写が多くて綺麗。冬子の所在なさげな感じが読んでいてすごく共感できて、読みながら「頑張れ!」と心の中で応援している自分がいた。
とにかく冬子と三束さんがどうなるのか気になって、最後の方は一気に読み進めてしまいちょっと寝不足気味に笑
個人的には「そうかぁ…」と残念な結末ではあるけど、何も自分で選んでこなかった自覚のある冬子が初めて選んだものが、三束さんだったんだと思うと胸が熱くなる。きっと冬子にとっては忘れられない、意味のある出来事になるんだろう。
それにしても、聖さん好きだなぁ。
Posted by ブクログ
聖の言葉が、特に終盤の私との会話の中の言葉が自分に刺さりまくった。安全圏を保とうとすることで、周りへしわ寄せが行く、とまでは思わないけど、自己完結型の人間は社会の中で害がないようである存在だと感じた。
最後の場面で、私が0から1にする行動を起こす。それは、自分から何も生み出そうとしない本人にとっては大きな変革である。その原動力は成就しなかった恋。
恋愛感情をこれからも持ち続けたいと思った
Posted by ブクログ
映画化するの知らなかった()
主人公を応援するつもりはない(なんならお酒で失敗したことを思い出して辛くなる)けれど、一歩踏み出した人が感じる世界が確実に拓けていく様子(文中で「やらない後悔の方が大きいのはおかしい」旨まで言ってたのに……。)はただ綺麗なものだと思った。
踏み出した一歩目が上手く行かなかったけど、なんやかんやで踏み込んでくれる友人を得て、自分の好きなものを文字にして自分の外に出せているのから、ハッピーエンドだと思う。
Posted by ブクログ
とにかく大人の恋愛小説が読みたくて読み始めた。
まず、比喩用言がとても好み。名前のない、文章では見た事のない感情や風景がちゃんと文字になって思い浮かべられた。
内容について
最後、聖の言葉をかき消そうとした(嫌だと思った)のは冬子が社会に溶け込み始めていたからなのか。でも、化粧を自分でできないことや貰い物でおしゃれをするのは10代。結局は最後のデートの時はまだ自分の闇の中だったんだろう。
自分も過去の恋愛を引きずっているけど、思い出す頻度が極端に減っている事、少しずつ思い出せる事が減っている事、いつかこのまま忘れられる気がした。
またこの本の内容を忘れかけた時に読み直したい。
Posted by ブクログ
三束さんとのシーンの表現が美しかった
でも結局嘘で作られた世界だから美しかったのかなとも思えた
本音でぶつかりあえた聖みたいに三束さんも一方的に告げるのではなく本音でぶつかってほしかったかな
あと三束さんの仕事がなくなってから今までのことはどんなことが書かれていたのか気になる
Posted by ブクログ
昔からよく平積みされていて気になっていたことと、最近YouTubeでこたけ正義感が好きな本としてあげていたので、ついに読んだ。「川上未映子さんの書く文章が心地いい」というふうに言われていたけれど、私にはそれが感じとれず。
物語は35歳の女性が主人公で、人との関わり方の悩みや葛藤がテーマの物語だと感じた。昔からあまり話すことが得意ではなく、職場での居心地の悪さを感じる点など、初めは近しいものを感じていたけど、その後、とてもはつらつとした女の友達と親しくなるところやお酒をたくさん飲んでカルチャーセンターへ行き、結局気持ち悪くなって吐いてしまうところなど、あまり近しくないと感じる部分もあった。
偶然出会った20歳以上年上の人に対して、主人公が恋愛感情を次第に抱き、男性側も抱くのだけど、その年齢差の恋愛が気持ち悪いと感じてしまった。この恋愛は主人公視点だから、綺麗な物語だけれど、三束さん視点を勝手に考えてしまって気持ち悪くなっているのかも。
登場人物がどの人もいい面もあれば、あまり好きではない面もあるところが、現実的で、そうだよねとなりながら、心がシオシオした。
あまり話さない主人公に対して、「見ているとイライラする」というような言葉を投げかける高校時代の彼、聖、恭子さん。それまではそこが好きだと思っていたじゃない…好きなところが嫌いなところになるんだね…などと思いながら、悲しい気持ちになっていた。
高校時代の声の掠れている女友達も年齢を重ね、結婚、子供を産み、夫婦生活のどうしようもならないような悩みを話した。そして、「これを打ち明けた理由は、あなたがもう私の人生の登場人物ではないから」という言葉。それは、言わなくてもいいし他の言い方がなかったのかい…という悲しさがあった。
そして、女子のことを「くん」で呼ぶ人だったっけ、そんな設定あったっけと困惑した。(読めてなかったのかも)
思っていたより恋愛というよりは、人生、女性の生き方、というようなお話だった。
この小説を読んで、アルコールを摂取したくなり、お酒を飲みました。心がシオシオとするので、あんまり落ち込んでいる時には不向きかも。