【感想・ネタバレ】A3 下のレビュー

あらすじ

【第33回講談社ノンフィクション賞受賞作】「なぜあんな事件が起こったのか、その理由と背景を今最も考えているのは(これほど皮肉なこともないけれど)、この事件の実行犯であり、今は死刑判決を受けている元信者たちだ」――地下鉄サリン事件以降、日本社会は凶暴で邪悪な存在への不安と恐怖に煽られ、セキュリティ意識と応報感情を急激に高揚させた。事件の本質を探り、変化の方向性を見つめる問題作。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

p.26
こんな事情を背景にモザイクは濫用され、やがて視聴者も馴れ始めた。つまり、例外の常態化だ。

p.93
かつて今も死刑を決めた判決文の多くには、「死刑を求めざるをえない」との常套句が、とても頻繁に使われている。つまり死刑は「突出した刑罰である」との前提が存在していた。実際に他の刑罰のすべてが教育刑であることを考えれば、死刑はきわめて例外的な刑罰だ。でも光市母子殺害事件において最高裁が出した「死刑を求めない理由はない」との二重否定が意味することは、まずは「死刑ありき」という前提だ。例外が例外ではなくなった。

p.249
強引な施設誘致の背景には、とにかくオウムの痕跡を消し去りたいとする地元の要望が大きく働いていた。跡地のままならば以前の記憶が滞留する。だから新しい何かで更新したい。

p.323
なぜオウムが不特定多数を殺戮しようとしたのか、その理由がどうしてもわからない。だからこそ不安と恐怖が疼き続ける。善悪二分化が進行する。これに対抗するために集団化が進み、見えない悪の可視化を求め、過剰なセキュリティ社会が出現し(現在の日本の監視カメラ数はイギリスを抜いて世界一位と推測されている)、厳罰化が進行した。

p.326
アーレントが(君が絞首されねばならぬとした)「その唯一の理由」としたことは、「多くの人の殺害に関与したから」ではなく、ましてや(最近の日本の裁判官が判決理由で述べるような)「残虐このうえく」とか「あまりに身勝手すぎ」とか「更生の可能性もなく」でもなく、ナチスという政治体系の指示に従ったことである。(アイヒマン)
裁かれるべきはアイヒマンの特異性ではなく、優秀な中間官吏としてのアイヒマンの凡庸さなのだ。

0
2013年05月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

地下鉄サリン事件と、その事件の首謀者である麻原彰晃。そしてオウム真理教。何故あんな凄惨な事件を起こしたのか?その謎を解けないまま突き進み決まってしまった麻原死刑判決。それでいいのか?という本。

確かにこの事件当時の報道(というかワイドショー)の過熱報道ぶりはよーく覚えている。テレビも雑誌もオウム一色だった。そんな中で語られた事件の流れは、麻原は以前薬事法違反でパクられて、それを契機に体制に恨みをいだき宗教団体を立ち上げるも、衆院選に大敗して大量殺人を決意。そして決行。てな感じだったと記憶してる。

本書でも書かれているけど、まぁそんな単純な話しじゃないでしょ?と。言われてみればその通り。しかもそれって検察側が一方的に言ってるだけど、あんまり言質取れてないんだよねぇ。

きっと裁判中の麻原は壊れて、意思疎通もまともに出来る状態じゃなかったんだと思う。それでも、訴訟能力なしとして、裁判を長引かせることは大人の事情で出来なかった。悪い意味で歴史に名を残す巨悪麻原をルール度外視でとっとと死刑確定しても、誰も困らないし、むしろ喜ぶ。

俺も麻原を無罪にしろなんてとても思わないし、ルールは徹底順守!とか優等生なことを言うつもりもないけど、何故こんな恐ろしい事件が発生してしまったんだ?って謎は、もう少しきっちりしておいた方がよかったんじゃねぇかなぁ…。それともキッチリしちゃうと困る人がいたのかなぁ…。

ここまで複雑だと、正直「もーいーよ、死刑で」とか思っちゃうんだよねぇ。すげぇ恐ろしいことだとは思うけど。

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2013年11月15日

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