あらすじ
小説はいつの時代も、いたるところで書かれてきた。古くは神話から始まり聖書へ、日本では漢語の輸入から文学の成熟へ。『ドン・キホーテ』、『ボヴァリー夫人』、『白痴』など、世界の名作を細部まで読み解き、物語の歴史を考察することで、小説の誕生からその構造や手法、作品同士の繋がりまでを面白く丁寧に解説する。現役東大生が熱中した特別講義を完全収録した究極の“世界文学”読本。
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Posted by ブクログ
小説論から文化論へ。
面白い!
視野の拡大と飛翔。
★★★
1 ゴーゴリ。カフカ。ナボコフ。
言語表現の根底には比喩の問題。
古びた比喩を壊すこと。その繰り返し。
何がリアルなのか。
2 二葉亭四迷 日本
NOVEL 内面を書く文章がない。
近代になって、行動の前に考える人間の登場。
近代的=ロマンチシズム。
近代人=個人。
成長する個人の見る自然。
リアル感=カタルシス。
自然=客観。
近代の散文は自然・風景をとらえる。あるがまま。印象主義。
内面がはっきりするのは肉体が病のとき。
詩想をとらえる。純粋言語を日本語によって救い出す。
ベンヤミン。翻訳者は自国語を外国語によって拡大し深める。
描写の問題と翻訳の問題。大和言葉のリアルと漢文のリアル。さらに欧米の外国語。
3 舌の先まで出かかった名前
近代小説は本になった物語。共同体から切り離された個人が作った。作者。
手の先に道具を持つ。さらに見えない言語としての言語を持つ。これは進化ではなく変化。
物語は共同体の共有体験。複数。
内面の動機を描くのが近代小説。
4 短編小説
長編にいろいろ背負ってもらいながら、短く爆発させる。
小さい器の中に人間をそっくり縮めてみせる。
爆発点。転換点。
5 ドン・キホーテ
読む人であり、後半には読まれる人にもなる。
偽の物語を受けて、後篇は行先を変更する。
自分の偽の物語が印刷されている場面に立ち会う。
小説が小説を意識した瞬間。理性を失う。
イエスのパロディ。
6 ボヴァリー夫人
重層性を、帽子やケーキを通じて示唆する。
読書する女。
7 白痴
主体は対象を欲望するが、そのあいだには媒体=モデルがいる。三角形。
媒体と主題の距離。
人間は生身で湿っている。小説の登場人物は乾かされた素材。燃え上がりやすい。
近代小説の終わりは死。
8 物騒なフィクション
ストーリーとプロット。
探偵小説。
世界文学は。日本は。イスラムは。
9 「枯葉の中の青い炎」
10 「ねじの回転」のパスティーシュ