【感想・ネタバレ】コラプティオのレビュー

あらすじ

「やがて歴史が私の正しさを証明する」震災後の日本に現れたカリスマ総理・宮藤隼人は、“禁断の原発政策”に日本復興を託す。だが、その矢先、一人の日本人がアフリカで殺される。事件の背景に広がる政権の闇を追いかける新聞記者と、宮藤を支える若き側近は、暗闘の末、最後に何を見るのか……。『ハゲタカ』の真山仁が「原発と政治」を描く超弩級エンターテイメント!

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Posted by ブクログ

ネタバレ

政治は言葉ー政策を自らの魂を込めた言葉で語る事で、思いの丈が相手に伝わり、そこで初めて相手が納得してくれる可能性が出てくる。当たり前のことだと思いますが、長らく忘れていた感覚かも知れません。
政治は思想・信条の異なる者同士が集う以上、互いがそれぞれの意見を懸命に語り合い、落とし所を見つけていく作業に他ならないはずです。
故に自分の言葉に力を込めざるを得ないと思います。

「言葉とは力ー私はそう思って闘っている。だから、私は語り続ける。(中略)思いの丈をぶつけて、語る。その時、言葉が力となるんだ」(9頁)

政治家は言葉を扱う仕事と言われていますが、まさしくその通りです。政治に必要な駆け引きなどドロドロし部分は避けて通れませが、まず、言葉がありきと言うのが政治の原点だと思いました。

コラプティオ(corruptio )はラテン語で「汚職・腐敗」の意味だそうです。最後のページに書いてありました。
「権力は腐敗する、絶対的権力は絶対に腐敗する」という有名な言葉がありますが、そのプロセスがうまく描かれていたと思います。どんな聖人君子も権力をもつと腐敗する。それは歴史的教訓で、故に腐敗しても国が成り立つように様々な装置をビルトインさせているのが現代の統治機構であり、第四の権力と言われるジャーナリズムの存在価値です。

この作品の概要を一言で乱暴に言ってしまうなら、衆議院議員の宮藤隼人が、総理大臣になり権力を掌握してから、腐敗していくまでのプロセスと言えるかも知れません。言葉の力で国民の支持を得て、やがて腐敗していきます。一方で暁光新聞社の取材によって腐敗が暴露されていきます。

政治の基本は言葉、また権力の腐敗とその監視等々、政治のあるべき姿をそのまま描いてくれたとも言えます。

第二次安倍政権はモリカケを始めとして、公文書改竄や桜を見る会等々腐敗の案件に事欠きません。それを監視するマスコミの力も弱まっており、一部の記者や新聞社の奮闘で、ギリギリ持ち堪えているのが現状ではないでしょうか。一昔前なら内閣総辞職と言われる腐敗が何度も新聞紙上を賑わせています。
また、安倍首相の国会答弁は、常にメモを見ながらの答弁に終始し自らの言葉で答える事には程遠いです。おまけに質問に誠実に応えるという姿勢にも乏しいです。言葉を蔑ろにしています。

至極当たり前であった政治の姿が、今は過去のモノになってしまったことを痛感させられたのがこの作品です。また、登場人物全てが大人の振る舞いしているように感じました。それぞれが自らの立場で動いていくわけですが、最低限のモラル持って行動していますし、本来ならこんな事には言及しなくてはならないぐらい、今の政治は幼稚化してると思います。

東日本大震災後の経済復興に原発輸出を絡めていくという刺激的なストーリーの中で、官邸の動きや、新聞記者の取材風景等々が、リアリティを持って描かれています。著者が新聞記者出身という事もあり、その説得力は十二分にありました。原発の発電方式に2種類あることなど知らない事も多く、勉強にもなりました。

真山仁氏の作品は他にも読みましたが、どれも徹底したい取材を感じさせる読み応えのある作品ばかりで大好きです。

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2020年05月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

めちゃめちゃ面白かったー!まさに現代を描き出している作品です。この作品のように、現政権も…と期待せずにはいられません。

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2019年08月13日

Posted by ブクログ

ネタバレ

実際には文庫ではなくハードカバーを読みました。
職場の人が教えてくれて初めて真山さんの本を読みました。
現実的で重みがあり読み応えのある本でした。

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2020年04月25日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「コラプティオ」とはラテン語で「疑獄」を意味するとのこと。本書真山仁の『コラプティオ』は原発を取り上げて3.11以降をイメージした物語である。しかも、ポピュリズムやカリスマが生まれる土壌と、登場人物にそこに楔を打たせることで、真山仁は読者あるいは国民に対し、政治への関心と、今何をなすべきなのか?問うていると思わせる。

「福一」が発生したことで、これまで週刊誌で連載していた内容を変更して書籍として発表したとのこと。作者としても原発あるいは政治をこれまで以上に強く意識するきっかけであった。そして、本書を通じ、改めて読者に対して問題意識を投げかけたのではないだろうか。

今の日本では、ヒトラーのような国民を煽動して取り込んでいくという手法は通じない、ということを断言できるだろうか?政治への無関心の蔓延とそこを突いたV字回復的な煽動手法は簡単に国民を熱狂に包み込んでしまうのではないか。現時点ではだいぶ過去のものとなりつつあるが、民主党への政権移行時にはそうやってなにかの期待感が高まったようにも見える。

現在は、異なる意味で閉塞感と安倍一強時代が継続しているが、これが崩れた次の次にまた歴史は繰り返されるような気がする。3.11が薄れてきた今こそ本書が本当に伝えたかったことの一つである煽動政治への恐れを思い返すべきなのだ。

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2018年09月02日

Posted by ブクログ

ネタバレ

性格も立場も異なるふたりの青年が政治の世界をどのように渡り歩き、どのようにこの国を憂うのか。

ひとりは総理補佐官の理想主義者の白石
もうひとりは新聞記者の野心家の神林

登り口や登頂ルートは違うのだけれど、同じ結論に至るのはおもしろかったです。
宮藤を軸にして田坂が白石を育て、東條が神林を育てた対立軸もおもしろかったです。

手段としての権力は、結果が手段を肯定しますが、
目的としての権力は、腐敗が進み権力はやがて暴力へとエスカレートしていきます。

また、理想とするリーダー像というのは存在しなく、その組織(社会)の成熟度や状況によって、理想のリーダー増というのが変容していくというのを提示しているのもおもしろかったです。


学生の頃に読んだ職業としての政治、君主論を再読したくなりました。今読んだらあの頃とは捉え方が変わっているとは思います。
(もうそんな気力もありませんが)

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2023年11月22日

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