あらすじ
前人未到のショートショート1001編という偉業を達成した星新一。長い作家生活のなかで単行本に収録していなかった作品を集めた没後の作品集『気まぐれスターダスト』を再編集。デビュー以前の処女作「狐のためいき」など初期作品と、1001編到達後の「担当員」を収録。さらに、文庫未収録のショートショート6編を加える。「まだ読んでいなかった」作品をそろえた、愛読者必携の一冊。
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Posted by ブクログ
子供の頃愛読した星新一。
今作は未収録作などが集められた作品集ということで、久々に手にとってみました。
表題作の「天国からの道」が好きでした。
まさに人間風刺の最骨頂。
子供の頃、”こんな風に人間を風刺した作品を書きたい”と感動したことを思い出します。
それにしても、こんな過剰サービスがあれば、死ぬのも楽しみになるかもしれません。
これまでに読んでいた作品とは趣の違うものもあって、新しい一面も知れました。
好みでない作品も結構ありましたが、全体としてやっぱり星新一。
楽しい読書時間をいただきました。
Posted by ブクログ
星新一のショートショート集。まだ未収録作品がこんなにもあったなんてびっくりした。
しかし初期の星氏の切れ味豊かなショートショートはここにはもう、ない。結構読者を突き放した形で終わる話が多く―これは後期星作品の特徴だったが―、ポイッと放り出されてどうしたものかと逡巡することが多かった。
収録作の中で気に入ったのは表題作の『天国からの道』、『火星航路』、『収穫』、『大宣伝』、『禁断の命令』、『疑惑』あたりか。
『天国からの道』は天使たちが二手に分かれて天国の会社を作り、死者の誘致合戦が行われ、次第にエスカレートするもの。結末は映画『マトリックス』の世界観を髣髴とさせ、ちょっとゾッとする。
『火星航路』は火星に調査に行く男女の団体の物語。てっきり火星に行き着くまでのSF冒険ファンタジーかと思いきや、さにあらず、2ヶ月に渡る宇宙船での暮らしぶりを語る辺り、星氏独特の着想が光り、しかもラヴ・ストーリーに着地するのが意外だった。これがベストかな。
『収穫』、『大宣伝』、『禁断の命令』、『疑惑』は初期星作品を想起させるオチもついて楽しめた作品。
宇宙を旅する謎の生命体が集める銀色の粒の正体が実は衛星核兵器だったというアイロニーが光る『収穫』。
社運を賭けて開発した新調味料を世間に広めるべく大宣伝作戦を打って出た結果がユニークな『大宣伝』。
隣人のロボットを預かった男が「命令をしてはいけない」という約束を破るとどうなるかを描いた『禁断の命令』。
霊媒を商売にすることになった男が妻の関心を惹くために行った霊媒がある疑惑をもたらすことになる『疑惑』。
この辺は良質のショートショートだ。
今回の特徴はいやにドライな性表現が多発すること。『平穏』と『解放の時代』がそれ。
前者はいきなり親が性教育をし出すし―しかもアブノーマルなものも含めて―、後者は異性・同性・獣の種類を問わず、道行くたびにセックスを交わす世界の話でいささか困惑を禁じえなかった。
あと冒頭にも述べた読者を突き放す形で物語が閉じるというのは、『つまらぬ現実』や『担当員』などを読むと物語を紡ぎすぎた結果の行く末、物語作家の視点が達観している感があり、仙人の境地にいるかのように思わせられた。
これをどう理解するかが鍵なのだろうが、やはりまだこの境地までには自分は至っていないようだ。
Posted by ブクログ
この本の前に読んだ本が割と体力を使う本だったので休憩のように手に取った一冊。
没後の作品集「気まぐれスターダスト」を再編集し、デビュー前の処女作や文庫未収録のものも集めた一冊。なんてことは全く知らず、星新一の本という理由だけで手に取ったがそういう背景を知って読むことができて面白かった。特に処女作「狐のためいき」は、切なさも感じたがどこか自分も普段感じている、他人に対して何か違うなあと感じていても言えないもどかしい感覚を覚えた。また、この作品はあまり星新一らしくないようにも感じられ、その『らしさ』という点では、「悪夢」「Q聖人来る」「収穫」のあたりがすごく『らしさ』を感じられたと思う。いずれにしてもどの作品を読んでもハズレはなく、星新一の著書の読みやすさ・皮肉めいた面白さ、何冊読んでも飽きないなあと改めて感じた。