【感想・ネタバレ】パンドラ’S ボックスのレビュー

あらすじ

画壇の若き寵児(ちょうじ)が突然、不可解な焼身自殺を遂げた。その死に秘められた驚くべき秘密とは?(「仮面の遺書」)大阪府警に届いた殺人を告白する手紙。少女の死体を古墳の稜墓(りょうぼ)に埋めたというのだ。捜査は、専門家による発掘調査を終えてからと命じられた刑事は……(「踊る警官」)。大胆な着想と鮮やかな謎解き! デビュー作を含む初期短篇7作と、エッセイ7編を収録。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

〇 概要
 これまで文庫未収録だった作品を集め、巻末にエッセイを収録した短編集。作品の出来は全体的に突出して高いわけではないが、北森鴻の初期作品やシリーズの原型となる短編が読める資料的価値がある一冊。エッセイも面白く、北森鴻ファンなら十分楽しめる内容。逆に、北森作品を読んだことがない人は無理に読む必要はないだろう。北森鴻ファンとして、おまけ込みで★3。
〇 仮面の遺書
 暗号解読をテーマにした短編で、北森鴻の幻のデビュー作。主人公は暗号を解読するが、その結果、犯人自身の犯罪が露見してしまい、暗号を解いた人物まで殺害されるというオチ。暗号が「解けること」自体が犯人にとって致命傷になるという発想は意外性があり、本書では比較的印象に残った。
〇 踊る警官
 「Y塚山御陵に死体を埋めた」と嘘の供述をして警察に一度捜索させ、その後、本当の埋葬場所に妻の死体を埋めるというトリック。一度調べた場所はもう調べないという心理だけで一本の短編を成立させている。アイデアは面白く、北森鴻の構成力は感じるが、作品としては及第点程度。
〇 無残絵の男
 江戸から東京へ移り変わる時代を舞台にした作品。直助が元次を殺そうとし、市松を身代わりに立てた結果、元次は市松を殺害してしまう。ダイイングメッセージには月岡芳年の無残絵が使われ、最後に探偵助手が月岡芳年本人だったことが明かされる。歴史上の人物を取り入れた趣向が印象的
〇 ちあき電脳探てい社
 『小学三年生』掲載作品。幽霊騒ぎの真相は、逃げたペンギンを世話していた同級生だったというもの。宝の地図も登場するが、実は校長先生が子どもの頃に描いたものだった。児童向け作品なので資料的価値はあるが、大人向けとしては物足りない。
〇 鬼子母神の選択肢
 有馬次郎と折原けいが登場する、大悲閣千光寺を舞台にした作品で、「裏京都シリーズ」の原型とされる短編。N社の「爆弾」を盗み出して自殺した河北の事件を描く。真相は、「爆弾」と呼ばれていた情報が、ソノシート状のフロッピーとして電動茶筒の中に隠されていたというもの。シリーズ誕生前の雰囲気を味わえる。
〇 ランチタイムの小悪魔
 『女性自身』掲載作品。占いを気にし過ぎる男性と、その恋人を描いた恋愛ミステリ。女性は新聞の占いを読ませないように奔走するという、たわいない日常の出来事を膨らませた作品。軽い読み物という印象。
〇 幇間二人羽織
 久生十蘭『顎十郎捕物帳』シリーズのパスティーシュ。アリバイものの構成で、本当は双子が別々のトリックを使ったように見せかけ、その裏で本命の犯罪を実行していたという真相。趣向は悪くないが、この作風はあまり好みに合わず、北森鴻作品としても及第点以下という印象だった。

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2015年12月05日

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