【感想・ネタバレ】獣たちの庭園のレビュー

あらすじ

現代最高のミステリー作家が初めて歴史サスペンスに挑んだ!
1936年、オリンピック開催に沸き立つベルリン。アメリカ選手団にまぎれてニューヨークの殺し屋が潜入する。米国海軍情報部からナチス・ドイツ高官暗殺の使命を帯びたその男は、現地工作員との接触の際に誤って人を殺してしまい、刑事警察(クリポ)から追われる身となる……。リンカーン・ライムシリーズで人気の著者が初めて挑む歴史サスペンスは、懐旧的雰囲気のなか、タフな主人公(ヒーロー)が活躍するという新機軸。もちろんどんでん返しも盛りだくさんの上級エンタテインメントです。CWAイアン・フレミング・スティール・ダガー受賞作。 2005年週刊文春ミステリーベスト10第5位、このミステリーがすごい!第5位。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

いよいよ夏本番。食欲が無くなり、そうめんのような口当たりのよいものばかり食べがちになる。でも、それじゃあよけい夏バテしそう。栄養バランスのとれた食事と、適度な運動、睡眠、それが必要。

読書もそう。このところ、軽くてさっぱりした作品ばかり読んでいる。重厚でエネルギッシュで、心躍る話を読まないと。
近、そんな時には迷わず、ジェフリー・ディーヴァー作品を選ぶ。残念ながら、人気シリーズは全部読んでしまったが、本書『獣たちの庭園』が大切にとってあった。

本書はディーヴァーが初めて挑んだ歴史サスペンス小説だ。下準備に2年の歳月を費やしたそうだ。
1936年夏、アドルフ・ヒトラーがドイツ帝国の国威発揚に利用した、第11回オリンピック開催直前のベルリンが舞台。主人公は、ドイツ語に堪能な、ニューヨークの殺し屋・ポール・シューマン。彼は米国海軍情報部の罠にはまり、これまでの罪に服して刑務所に入るか、それとも国家的任務を果たして罪を帳消しにしてもらうか、という選択を迫られる。やむを得ず任務を引き受けるが、その任務とは、ヒトラーの意を受け再軍備を主導するラインハルト・エルンスト大佐の暗殺だった。シューマンは、五輪に参加するアメリカ選手団とともに大西洋を渡り、ドイツに潜入する。

面白い。やはりディーヴァーは裏切らないと、嬉しくなりながら読み始めた。正統派のサスペンス小説の趣き。ディーヴァー得意の"Twisted"は本書では抑制が効いていて自然だ。いつしか、虚実の境を忘れて小説世界を彷徨っていた。まるで映画のように、次々に脳裏に浮かび上がる映像が、わくわく感を煽ってくれた。

出だしの、二者択一の強迫シーンは映画「ニキータ」のよう。要人暗殺ということでは『ジャッカルの日』が浮かんだ。そして、抑圧された国民生活の様子は、先日読んだばかりの『チャイルド44』が思い出された。この作品は、たくさんの上質な小説や映画のおいしいところだけをギュッと詰め込んだような、手に汗握るエンターテインメントに仕上げられていた。

暗殺は成功するのか? 友情や愛情、そして生きることの意味に目を向けはじめた主人公・シューマンが、最後にとった行動とは……。

皮肉にも、ガツンとくるディーヴァー渾身の1冊に、貴重な睡眠時間を奪われた。

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2011年11月21日

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