【感想・ネタバレ】織田信長のレビュー

あらすじ

時代に先駆けた思想をもち、伝統的権威や因習に囚われずに「天下統一」を目指した「革命児」信長。だが、この広く行きわたったイメージは、はたして歴史的な事実といえるのだろうか? 将軍足利義昭を擁しての上洛、対毛利戦や対武田戦による支配領土拡大、比叡山の焼討など史実を再検討していくと、実は伝統的権威と協調もし、諸大名との共存をも視野に入れ、世間の評判や常識にも敏感だった、時の武将の一面が見えてくる。中世的な価値観が近世へと向けて大きく変化する戦国時代を生きた、信長の真の姿を描く。

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

趣味のラノベ書きです。
転生もので織田信長を登場させようと思い、キャラ作りのために読み始めました。

元々、通説のフワッとした信長像しか持っていなかったので、簡単に本書の「新説(信長は天下狙っていなかった)」に納得してしまいました。

唯一疑問が解けなかったのは、p121「本能寺の変の直前には四国の長宗我部氏にまで軍勢を送ろうとしたのは一体なぜなのか」と疑問の提起だけはれていて、(見落としているだけかも知れないが)武田攻めや毛利攻めはともかく、四国の長宗我部を攻める意味は本書の説明ではあまり納得できず、それこそ天下統一の野望的な理由以外にないのでは?と思えてしまったこと。

明智光秀の裏切りの理由は分かっていないそうですが、たくさんある説の中に「四国の長宗我部を攻めることに反発」というものがあるそうです。

神田氏とはまた別の学者さん(金子拓氏)が「信長にはそもそも天下統一の野望がなかったが、四国攻めの時点で初めてその野望を抱き、その『ご乱心』に光秀が奮起した」という説を書かれていて(今手元になくてうろ覚えですが)私にはそれが有力な説に思えています。今のところ。

こんな風に「当たり前」とみんなが思っていた信長像が、実は違ったのかもという話を読めるのは、知的好奇心が刺激されるし、とても面白いです。
相変わらず野心的で独創的な信長が描かれている漫画などを見るたびに「本当は違うかも知れないのにみんな通説に『洗脳』されてる」と複雑な気持ちにもなりますが。
子供向けの絵本の信長は、宣教師から地球儀を貰って、それを触りながら「いつか世界征服」とまで描写してるのですから、「こうやって野心的な信長像を我々は思い込まされていたのだな。全くのデタラメだとしたら、本当に罪作りだな」と思います。。

本書発売から10年近く経ちますが、なかなか覆らないものですね。

ちなみに、そもそも読み始めた動機である、小説に登場させようとしていた信長は、こちらの「新説」を採用することにしました。

「信長が天下狙ってなかったわけないじゃん。宗教も天皇も将軍も、全部自分より下のものとして見ていたに決まってるじゃん」みたいな感じの信長像は、簡単に覆らなさそうですが、私はあくまで創作しているに過ぎないので、信長像の論争には巻き込まず、見逃して欲しいなと都合の良いことを思っています(苦笑)。

0
2023年12月28日

Posted by ブクログ

天才でも革命的政治家でもない信長像を掘り下げる。天皇や将軍や世評に気を遣いまくったからこそ支持者も多かったと思えば不思議な話でもないがメディアでの信長像を植え付けられているので違和感を感じる。
畿内を天下と見る考えも当時からしてみれば妥当だが今川義元を倒して東に向かわず京都を目指したところは戦略家として卓越してたのではなかろうか。

0
2015年11月11日

Posted by ブクログ

2012年池上信長論を受けて、信長の行動原理を再検証。ゼミでの研究成果と明記してあるだけあって、最新研究のレビューともなっている。
 そして、信長の行動がいかに「普通であるか」を説明するという流れはもはや研究者のスタンダードな潮流なのだという事も良くわかる本。
 とはいえ、だからこそ信長の「アリの一穴」と秀吉以降の中世-近世の断絶が見えやすくなっているとも言える。

0
2015年01月26日

Posted by ブクログ

信長は従来語られてきたような(自らが天皇に取って代わる野望を抱いた)稀代の異端児ではなく、天皇、室町将軍家を重視した、当時における常識をわきまえた武将であった。
その旗印である「天下布武」の天下とは京都を含む近畿5国のことで、天下布武とは武力をもって近畿5国を平定した信長の治世の下、天皇家、将軍家に祭祀、政を執り行って頂くことであり、決して武力を以って全国制覇することを意味しない。
毛利攻めも武田勝頼との長篠の戦も、国境の勢力争いに過ぎなかった。
比叡山焼討ち、キリスト教庇護、本願寺との対立等あるが、信長は宗教に対して特段の思い入れがあるわけではなかった。

マルクス・唯物弁証法的史観を背景として、アウトへ―ベンの象徴としての信長が語られてきたということか。
本書と流れを同じくする書籍も複数出版されているとのことで、今後は歴史の解釈が修正されるかも知れない。

0
2014年12月12日

Posted by ブクログ

 織田信長は、革命家とか天才とかのイメージが世間にはあるが、実際はそうではないことを古文書から解読し説明した本である。
 大学教授で専門家の筆者は、豊富な文書類をいつどのような状況で書かれたかを示しながら、織田信長は足利将軍や天皇を敬い、庶民の世評を気にする常識的で有能な政治家であると世評とは逆さとも言える評価をする。
 とくに天下布武が野心の表れとの世評に対し、天下は日本全国ではなく畿内を示しているとの指摘や、分国拡大は国境紛争の結果に過ぎないとか、いろいろと目新しく感じた。
 ただ、前にも述べたとか後で記すようになどと、行ったり来たりするところが、ややくどいというかもう少し整理して書いてほしかったところだ。
 しかし、古文書が新たに発掘されたわけでもなさそうなのに、なぜ解釈がこうも違ってくるのか、いつまでも研究されているのかが不思議に思える。すべての関連資料を総合した決定版は、無理な願いなのだろうか。
 

0
2014年11月24日

「学術・語学」ランキング