あらすじ
筆下し、水揚げ、若衆入り、夜這い……。ムラであれマチであれ、伝統的日本社会は性に対し実におおらかで、筒抜けで、公明正大であった。日本民俗学の父・柳田国男は“常民の民俗学”を樹ち立てたが、赤松は、「性とやくざと天皇」を対象としない柳田を批判し、“非常民の民俗学”を構築し、柳田が切り捨ててきた性民俗や性生活の実像を庶民のあいだに分け入り生き生きとした語り口調で記録した。『夜這いの民俗学』『夜這いの性愛論』の二冊を合本した本書は、性民俗の偉大なフィールド・ワーカー赤松啓介のかけがえのない足跡を伝える。【解説:上野千鶴子】
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Posted by ブクログ
民俗学の父とされる柳田国男は「性と差別と犯罪」を排除してきたといい、
明治維新以来の教育勅語的政策、その処世法の大衆化・普及に手を貸し手先となってきたのが柳田民俗学だ、と痛罵し、
或いは「性とやくざと天皇」を対象としない「常民の民俗学」柳田国男に対し、「非常民の民俗学」を標榜した赤松啓介は、9;90年代、時ならぬ注目の人となった。
すでに80歳代の高齢にして、その著書は矢継ぎ早に出版され、また文庫化され、広く読まれることとなるのだが、本書巻末の解説において上田千鶴子は、この現象を「赤松ルネサンス」と賞揚する。
私は以前に「差別の民俗学」を読んでいるのだが、本書は「夜這いの民俗学」と「夜這いの性愛論」の合本となっており、その所為であろう、内容は屡々重複するものとなっているのが難だが、自身の経験に即した語り口は、大正末期から昭和初期そして終戦に至る、底辺大衆の相を生々しく伝え、興味尽きることはない。
Posted by ブクログ
昔の日本人は性に対してとても開放的であったのだなと思う。夜這い然り。混浴も然り。でも、田舎ではどこでもそんなに頻繁に夜這いが行われていたのかと驚いてしまう。赤松氏は民俗学の泰斗である柳田國男は夜這いを知っていながら、いっさい触れることのなかったことを「農政官僚だった柳田が夜這いをはじめとする性習俗を無視したのも、彼の倫理観、政治思想がその実在を欲しなかったからであろう」非難している。また、赤松氏は夜這いを肯定的に捉えているが、この風習の悪影響は多々あったと思われる。世の変化とともに消滅して良いのだと思う。