あらすじ
ひとりの人間の犠牲において成立した宗助とお米の愛の勝利は、やがて罪の苦しみにおそわれる。「人間の心の奥底には結核性の恐ろしいものがひそんでいる」という。ついに宗助は禅寺の山門をたたくが、安心と悟りは容易に得られない。そこに真の意味の求道者としての人間漱石の面目があった。明治43年の作品。(C)KAMAWANU CO.,LTD.All Rights Reserved
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Posted by ブクログ
三四郎→それから→門につれて主人公の表現や環境が陰鬱で諦念をまとったものに変わって行くその変化が印象深かった。どの作品も明治時代の東京を舞台にしていて個人の自由、自立が重要視され始める時代になった結果、登場人物がある行動を選択する葛藤が描かれていてよかった。『門』ではその葛藤した選択の後が描写されていて「ようやく春が来た」となっ
ても「じき冬がまたくる」と返してしまうほどに罪の意識に苛まれ、今後もずっとその重荷を背負って生きて行く主人公が痛ましかった。
Posted by ブクログ
難しい。格別面白かったわけではないんですが、面白くないと断定できるほどこのストーリーの全てを味わい尽くしたかの自信がもてません。読み返そうとは今思えないのですが、何か認識しづらくて小さいヒントみたいものが散りばめられていそうな文章のように感じてしまって、読んだ実感はあっても理解できた実感が0です。
読み終えて真っ先に思ったのは、「安井の元から宗介とお米がいかにして離れたか見当がつかないので、宗介の苦しみに共感できない」ということでした。夫婦で社会からのつまはじきものとして生きることにしたこと、この結論だけしか分かりません。なんかこういうよく分からんけど結果そうなったみたいなのが全編多いです。
多分、私には早すぎた小説な気がしました。
Posted by ブクログ
前期三部作、三作目…
三四郎、それからと大きく違うのは、最初から夫婦である、と言う点である。
ただ、略奪愛という面では、それからの流れを汲んでいる。
弟の進学問題など色々ありながらも、二人で慎ましくと暮らす夫婦。彼らには"罪"があり、あることがきっかけで夫は禅に救いを求めるが、結局上手くいかずに戻ってくる。そして…という。
夫婦の日常生活の描写がとても綺麗だなと思った。
ただ単に、仕事に行ったり食事をしたりとか、その辺をぶらぶらしたりとか、ありがちな生活を送っているだけなのだが…。
多分だけど、夫は元々、禅とかそういうのは興味がなかったんだと思う。
だけど、自分が親友の妻を略奪して結婚し、その親友の行方は知れず。でも、隣人から久しぶりに、かつての友人の名前を聞き、怖くなったんだろうね。
だけど、友人の名前を聞いたことを妻にも誰にも言えず、何かに縋りたかった。それが禅だったんだろう。
こういうのって、誰にでもあると思う…。私にもある。だから、この点は夫にちょっと親近感を覚えた。
最後の方で「鶯が鳴いているのを聞いたと誰かが言っていたよ」と弟と妻が話していて、妻が「もう春の兆しが来ているのね」と喜んでいたが、友人の件もあり、でもすぐに冬が来る…なんて言う。不穏な終わり方。
彼は、この先も不安から逃れることが出来ないんだろうな。