あらすじ
むき出しの暴力、軍閥ボスのエゴ、戦争が日常の子どもたち……。泥沼の紛争地でいかに銃を捨てさせるか? 東チモールからアフガンまで現場を指揮した男が明かす真実。真の平和論はこの一冊から。(講談社現代新書)
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すごく読みやすく、論点が分かりやすい。ほかのレビューにもあったが、発売当時にぜひ読みたかった。時代は約10年進み、本に書いてあった指摘が少しでも改善されたことを望みたい。
現場の様子も良かったが、個人的に楽しく読ませていただいたのは、伊勢崎氏が紛争屋になるまでのいきさつだ。
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p.62
しかし、「だから目に見える国際人道支援の足がかりとして、まず後方支援の派遣を」という日本での議論は非常に軽率である。そもそも、後方支援部隊とは、地元社会への福祉が目的で派遣されるものではない。あくまで、戦闘部隊への支援が原則である。道路や橋の補修作業を実施しても、それらはあくまで戦闘部隊の戦略上必要なもの、つまり戦車や歩兵輸送車両等の通行に必要なものが主体で、それ以外のサービスはすべて”片手間”と見なすべきものなのである。医療部隊においても、しかりである。
(中略)
戦闘部隊への支援が原則だから、六百人規模の工兵隊員とあまりある建設重機を、常時使用するしないにかかわらず、常駐させておくことを正当化できるのである。援助だけが目的だったら、こんなに維持費のかかるオペレーションはまったくの非常識であり、援助事業として業者に発注したほうがはるかに安上がりである。であるから、”片手間”を目的として後方支援部隊を派兵することはまったくの論外であり、日本の自衛隊派遣の議論に置いて人道援助が言い訳として使われるのであれば、それは滑稽としかいいようがない。
p.215
本来、国際援助の世界では、金を出す者が一番偉いのだ。
それも、「お前の戦争に金だけは恵んでやるから、これだけはするな。それが守れない限り金はやらない」という姿勢を貫く時、金を出す者が一番強いのだ。
しかし、日本はこれをやらなかった。「血を流さない」ことの引け目を、ことさら国内だけで喧伝し、自衛隊を派遣する口実に使ってきた。
ここに、純粋な国際貢献とは別の政治的意図が見え隠れするのを感じるのだ。
右傾化。
つまり民族の自尊心を、国外に対する武力行使、もしくは武力誇示で満足させようという動きが日本にあるとしたら、そして、日本の軍備を紛争当事国の庶民の安善以外の目的に使用する可能性があるとしたら、僕は愛国者として体を張ってそれを阻止したいと思っている。
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伊勢崎氏に会ってみたい。中々興味深い話がたくさん盛り込まれていた。
特に世界最貧国シエラレオネでの出来事は、想像を絶している。人口500万人のこの国の内戦による犠牲者は50万人。しかし内戦終了後、世界は、犠牲者を手掛けた犯罪人に恩赦を与える。つまり戦争犯罪人と犠牲者遺族が混在しながら、新しい国がスタートする。これは”和解”ではなく、復讐の連鎖を恐れてのものでもない、こうしなければ”絶望”から逃れることができないことを全員が知っている。復讐する気も失せる”絶望”、すさまじいなと感じた。
こうした状態でも人は、明日の糧を思い、子供たちの明日を思い、たとえ慢性的な飢餓の状態であっても、、ギリギリの状態まで、来季植えるはずの種に口をつけるのをためらう。この営みを開発という。開発とは明日を想う人々の営みである。
DDR【武装解除(Disarmament)、動員解除(Demobilization)、そして、再統合(Reintegration)】一連のプロセスをつつがなく進行させるには、高度なマネージメント力と政治力、強い精神力が必要だ。実践的な紛争の処理に、このような人たちが関わっていることを初めて知る。
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[ 内容 ]
職業:「紛争屋」職務内容:多国籍の軍人・警官を部下に従え、軍閥の間に立ち、あらゆる手段を駆使して武器を取り上げる。
机上の空論はもういらない。
現場で考えた紛争屋の平和論。
[ 目次 ]
序章 常に思い通りにならない半生(歯車が狂いだしたのは大学卒業間近 アイデンティティはどこへ ほか)
第1章 暫定政府県知事になる―東チモール(紛争屋という危ない業界 国連PKOの世界へ ほか)
第2章 武装解除を指揮する―シエラレオネ(テロを封じ込める決定的解決法 シエラレオネ小史 ほか)
第3章 またまた武装解除を―アフガニスタン(無償援助と有償援助 闊歩する軍閥 ほか)
第4章 介入の正義(戦争利権としての人道援助 非民主的という理由で侵略される昨今 ほか)
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
Posted by ブクログ
テレビで見る自衛隊のイラク派兵なんかとは違って、戦争・紛争地域化での国際協力というものがいかなるものか、その現実を見せ付けてくれる。
一般人は戦争が終わってしまうと途端に無関心になってしまうが、その後の平和構築にどのような苦労とコストが必要となるのかがわかる良書。
Posted by ブクログ
既読。
紛争が起こっている地域に行き、そこの兵士たちの武装解除をしてきた著者の体験談、また、紛争や日本の国際協力のあり方に対する著者の考え。現場に行っているだけの重みがある。有事の際の日本のあり方について、日本国内でもさまざまな議論がされているが、当たり前ではあるが、実際に行ったことがない人、紛争の現実を知らない人、国民の支持率を考えなければならない政治家、外交の場面にいる人とは考え方が異なる。私が知らないだけかも知れないが、実際に行ったことがあるだけあって、現実的な
Posted by ブクログ
紛争の現場で国連機関の職員として、武装解除等の職務に従事した人が書いた本。
どこにいっても人が絡むと政治が始まるのだと思わされる、といったような、ある意味当たり前のことが書いてある。
日本ではこのような現場を知っている人間と言うのはそもそも少なく、そしてそのうちでもこうやって本にする人間と言うのはもっと少ないと思われる。それゆえ、多分に実体験的なので一概にこれが全てと言い切ることはできないにしても、このような内容の書物は貴重と言えるだろう。
後半では憲法の平和主義に関して著者なりの見解を示しているが、これも説得力があるもので、かなり賛同できた。特に、まともな議論すらされていない現状では九条改正に賛成できないという点も同感。税金の無駄遣いに終わる可能性が高い(そういった意味で防衛費についての機密というのは…)。
Posted by ブクログ
武装解除には主にDDRが行われる。武装解除・動員解除・社会復帰(Disarmament, Demobilization, Reintegration)東チモール・シエラレオネ・アフガニスタンでの筆者の経験と介入に関して述べられている。国連においても国の思惑が交錯し、戦後復興やPKOなどでも利害は衝突する。国が掲げるのはその国の救済以上に自国の誇示か、外交カードの強化など。所詮は国際協力といわれる分野も武装解除も、国にかかわる限り、その国の国益を反映するものであり、それ以上にはなりえない。逆に国益を反映させねばならないのだが、内政干渉と言えど外交カードとして多くを主張することもあながち間違いではないかもしれない。DDRがその国の情勢(政治状況や軍閥など)に左右され以下に難しいかが問われている。日本のかかわりあい方も筆者は述べている。平和を構築するという上で、武力は必要である。それらの抑止力なしにその国を再建することは難しい。気高く見える武力の不必要性も現場では何の意味もなさない。アフガニスタンにおいて、アメリカの空爆を現地住民は嫌う。誤爆もあり危険だからである。しかしそれを声高に叫ばない。なぜならその空爆が治安の安定化の一役を担っていることを知っているからである。まさに誤爆の死者と抑止力を天秤にかけているようだという。最後の章、正義の介入が印象的だった。人道援助ももはや戦争利権の一つであり、NGОだけでなく企業も加わり利権争いをしている。そしてアメリカがアフガンを攻めて時に掲げた人道主義とNGОが掲げる人道主義は同一の主張であるということ。この同一性はいままで定着してきた人道主義という価値観の信頼性を崩壊させ、もはや人道主義をかかげるだけでは信頼を得ることはできないということだ。平和構築に武力は必要であるという筆者の主張は悲しいながら的を得ているのだろう。
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今をときめく紛争屋の伊勢崎さん。その一言一言が、現実的で、現場的で、厳しくて、それでも全体をユーモラスがおおっている。最近トランペットに熱中されているようだが、もっと書籍を出してほしい。
Posted by ブクログ
痛快!一人称で語る国際貢献論。現場で実際に関わった者の言葉には説得力があり、皮肉も効いている。すっかりハマった。とりわけ自己紹介的序章は読書欲をそそる。「本来、国際協力の世界では、金を出す者が一番偉いのだ。
それも、『お前の戦争に金だけは恵んでやるから、これだけはするな。それが守れない限り金はやらない』という姿勢を貫く時、金を出す者が一番強いのだ。」(p.216) 脆弱な日本のジャーナリズムを嗤う意味でも改憲派・護憲派問わず必読。
Posted by ブクログ
「人間はなぜ戦争をやめられないか」と同じような興味を持って読んだ。
戦争の前線の視点で書かれているので、そんじょそこらの戦争論・理想論とは緊迫感が全然違う。
行動に出なければ、他人が着いてこないのは分かる。口先だけではダメ。しかし、譲れないしっかりした精神を持って接すればお互いに理解できるのではなかろうか。子供の教育は大事である。そのベースとして、やはり、日本は憲法9条を守るべき。
Posted by ブクログ
紛争、戦争等暴力が存在するということに関して、あまりに理想論に傾いた非暴力の論理を振りかざしがちな日本のマスコミ、教育(の一部)への違和感を、実体験に基づきすっきりと表現してくれる作品。
一方で、そのカウンターパートとしての政治のあり方、説明についても、あまりにその場しのぎの状況についても、苦言を呈している。
この状況にあっては「憲法を現実に近づける作業にどこまで意味があるのか」と筆者は考える。
「現在の政治状況、日本の外交能力、大本営化したジャーナリズムをはじめ日本全体としての『軍の平和利用能力』を観た場合、憲法特に第九条には、愚かな政治判断へのブレーキの機能を期待するしかないのではないか。
日本の浮遊世論が改憲に向いている時だから、敢えて言う。
現在の日本国憲法の前文と第九条は、一句一文たりとも変えてはならない。」
と結論付けている。
今の能力ではそう、としても、その能力を高めるための議論を深め、より適切な状況を作り出すことは、私は、根っこから暴力を締め出すために重要なことだとも思う。
Posted by ブクログ
学者、研究者の頭でっかちな話ではなく、
紛争の現場での経験を具体的に書いていて理解しやすい。
自衛隊派遣をめぐる国会、マスコミでの議論などというものがいかに
陳腐で無意味で無価値なものかがあらためて思い知らされる。
9条を変えるなという主張の根拠に少しでも共感できたのは初めてだった。
Posted by ブクログ
この本を読んで得たものとして一番最初に挙げられるのは、"必ずしも平和は正義によってもたらされるのではない"ということである。
僕が平和構築に興味を持った理由のひとつは、紛争によって苦しんでいる一般の人々を、自分とは関係のない遠い国の出来事として関わることを放棄しては、決していけないことなのではないかという考えを持っていることである。これが一種の"正義感"であることは否定しないし、自分自身もそう信じているのだが、将来このような活動を行うとして、一体そこに自分自身の確固たる意思があるのかどうかを、もう一度考えなければならないと感じた。
自分も単に垂れ流しのメディアを介して得た情報を受け入れ、受け流す行為だけを続けるのではなく、積極的なアクションを起こさなければならないと強く感じた。
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帯がどうみてもヤクザっぽいんですが
彼の人生自体もヤクザな人生送っております。
ただ、とても愛と仁義に溢れてます。
簡単に調停することのできない問題は様々。
彼はそういう時、他の人はこうすることもあるだろうと言いながら、
決してそれを自分の理由と秤にかけずあくまで原則を選ぶ。
その人生に対する態度が紛争調停、武装解除の
ギリギリの世界においてもいかんなく発揮されている。
Posted by ブクログ
武装解除
紛争を解決させる職業、『紛争屋』。その世界を垣間見ることのできる良書です。色々と考えさせる問題に対して紛争屋としての見解を訴えています。そこが日本の現戦略と乖離があり、一筋縄ではいかない「大人の事情」的な部分も山積していて、単純に面白みを味わうことができました。
ただ、専門用語(DDRとか)が多いので読むのは大変でした(笑)
Posted by ブクログ
東ティモール、シエラレオネ、そしてアフガニスタン。これらの国での武装解除の経験談をまとめられた本です。やはり経験が一番というか、説得力が違いますね。ただ、この「説得力」は、太陽の日差しによってコートを脱ぐような優しいものではなく、暴風で体ごと吹っ飛ばされるような感じではありますが。
Posted by ブクログ
何もしないでつべこべ云ってるもんじゃねえな!と身にしみて思う。
最後の一文は、いろんなところで聞くが、これほど重みと実感に満ちたのははじめて聞いた。
文章読みやすいし、おもしろい。おすすめです。ここ最近のベスト。
Posted by ブクログ
正義よりも和平。凶悪な犯罪者、反逆者を恩赦すること。これも一つの方法なんだな。だけどこの様子をみた少年兵たちが、人をあれだけ殺しても町をいくつも焼き討ちにしても、許されるんだと誤解しないようにしなくてはいけない。平和までの道は難しいけど、そこで戦う日本人がいたんだ。
Posted by ブクログ
紛争屋、といっても紛争を起こす方でなく紛争を収める方の仕事に従事していた著者による書。東チモールの暫定県知事を務めていた時の様子など、武装解除の現場の様子が生々しくレポートされている。地域紛争が止まない21世紀の戦場で「国際貢献」の実際はどのようなものかよくわかる良書。それだけに、結論には大いに疑問。憲法がいいように解釈されて自衛隊のイラク派兵につながったのであれば、護憲による現状維持は為政者による解釈改憲の余地を増やすだけなのでは?ゆるんみつつある平和憲法のネジを締め直すためにも、日本は国際貢献としてここまでやりますよ、と憲法で宣言した方が現実的な回答だと思うんですがねぇ。
Posted by ブクログ
停戦合意、というと美しく聞こえるが「和解を善行として受け入れるのではなく、復讐の連鎖を心配するのでもなく、絶望から和解するのだ」という最貧国の苛烈な現実を潜ってきた筆者の言葉は厳しい。
「国際貢献」論議を右左上下まとめてふっとばすハードボイルド。
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武装解除を生業とする作者の自伝。
ボランティアではないのでちゃんと報酬の交渉をして国連からお給料を貰うと言う。
それがプロ意識というものなのだろう。
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ひと言で言えば、理解が追いつかなかった。地政学的なリスクに対する武力の有用性と、平和主義的な非武装の理想という相反する考えがすっきり整理できないここ最近。おそらく本書ではそのあたりのことを問題提起している。
そもそも紛争も戦争も明らかな悪はなく、グレーの濃さであり、見る方向から濃さは異なる。紛争が悪、平和が善、その間には明確な境があるというのは間違いである。平和という言葉の定義の曖昧さもそれを示しているように思う。
だからこそ、紛争と平和が対立にあるのではなく、直線上にあると捉える。そして、ますます複雑化する国際情勢において、日本もNGOもどんな役割とボジションを担うか明らかにせねばならない。考えはまとまらないが、改めて別の機会に読み直そう。
Posted by ブクログ
この本で印象深いのは、武装解除の実際の経験による生々しさと、筆者の生い立ちとその生き方の力強さだ。
僕自身は政治には興味が無い。というか、どちらかというと苦手故に避けてきたとも言える。この本を手にしたのもたまたまである。しかし、感銘を受けた。平和ボケなどと言われるが、自分自身まさにそこに陥っている。今まで何度命をかけない上辺だけの命懸けの約束をしただろうか。本当に恥ずかしい。
筆者の生い立ちや、都度の決断、そしてその後のキャリアは自分には全く想像出来ないものだ。そういう生き方もあるのだと思った。語り口はとても整然としているが、穏やかではきっと無かったはずだ。しかし、何度も、何度も極限に置かれたことで、胆が座るのだろう。見習いたい。
平和のありがたみを思い知り、人生もっと冒険してもいいんだと考えを変えさせた一冊である。
Posted by ブクログ
オンタイム(2004年)で読むべきだった。
圧倒的な現実は説得力を持つが、やはり2010年時点で読むと、これで語りきれないものもあるのでは、と思う点も多々。
しかし、武装解除というもののプロセスを知るにはいい本と思う。
Posted by ブクログ
開発経済学ではなくて、正確には平和構築論の本。以前から存じ上げてはいたけども、伊勢崎先生の本を読んだのは初めて。
ちょうど、最近テレビに出られていたのを見たのをきっかけに読んでみた。
学者が書いた本というよりは、ジャーナリストが書いたような本。
内戦が起こった国で、現場では実際にどのように武装解除をしていくのかが詳細に書かれているので、とても勉強になった。