【感想・ネタバレ】その問題、経済学で解決できます。のレビュー

あらすじ

ノーベル経済学賞最右翼!
行動経済学ここに極まる!

「この50年で最大のイノベーションだ!」(『ヤバい経済学』著者レヴィット教授)

対象は教育・ビジネスから途上国支援まで

子どもの成績を上げるには?
ワインをたくさん売るには?
保育園のお迎えの遅刻をなくすには?
娘の競争力を高めるには?
お得に買い物をするには?
恵まれない子に寄付してもらうには?
社員の生産性を上げるには?

「人はインセンティヴで動く」は当たり前! 大事なのは、誰にいつどのように仕向けるか。
子どもの成績を上げたいとき、あなたならどうするだろうか? 実は、ご褒美をあげるだけでは不十分。ご褒美を渡すタイミングや種類によって、結果は全然違ってくる。
本書では、『フォーブス』誌で「世界で最も影響力のある経済学者」に選ばれた最先端の行動経済学者が、実地実験という最強の武器で、人をやる気にさせるものは何か、人はインセンティヴにどう反応するかを解き明かす。意思決定の奥深くをあぶり出し、ビジネスの現場にも差別や格差という大問題にも解決策を出す画期的な一冊!

【主な内容】
はじめに 思い込みの向こうへ
[人がやってることって、どうしてそんなこと人はやってるんだろう?]

第1章 人にやってほしいことをやらせるには?
[インセンティヴが働く(働かない)のはどんなときか、そしてそれはなぜか]

第2章 女が男ほど稼げないのはなぜか、クレイグズリスト、迷路、それにボールとバケツでわかること
[キリマンジャロのふもとの平原にて]

第3章 母系社会は女性と競争について何を教えてくれるだろう?
[カーシ族を訪ねる]

第4章 惜しくも銀のメダリストと大健闘で銅のメダリストが成績格差を埋めてくれる、とは?
[公的教育:6270億ドルの問題]

第5章 貧しい子がお金持ちの子にほんの数ヵ月でどうすれば追いつける?
[保育園への旅]

第6章 いまどきの差別を終わらせるカンタンな一言とは?
[君が嫌いってわけじゃないんだ、ただお金が愛しいってだけさ]

第7章 なにか選ぶときにはご用心。選んだものがあだになるかも
[差別の隠れた動機]

第8章 ぼくたちをぼくたち自身から守るには?
[実地実験を使って生きるか死ぬかの状況を学ぶ]

第9章 人に寄付をさせるのは本当はなんだろう?
[心に訴えてもだめ、見栄に訴えろ]

第10章 割れた唇と「これっきり」のチェック欄から、人が寄付をする理由についてわかること
[おたがいさまというすばらしい現象]

第11章 管理職は絶滅の危機?
[職場に実験の文化を作るには]

おわりに 世界を変えるには……まあ、少なくとも得をするには
[この世は実験室]

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Posted by ブクログ

経済学のことを勉強しようと思ったが、実際には実用的に実験を行う事の大切さを教わった。
例えば、会社で物を売る値段を決定する時でも、試験的に値段に幅を利かせて売ってみて、どの値段の時が最も利益が上がるが試してみるなど、実験が必要な場面は往々として存在する。
面倒と思わず、実験を行うことが利益をあげることがわかった。

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2020年12月20日

Posted by ブクログ

ネタバレ

良い本。くだけた感じの翻訳で読みやすい。好き嫌いはあるかもしれないけど。
行動経済学の本だけど、どちらかというと実地実験をすることが大事!ということを伝えている本。ナッジとかは少し触れられる程度。
著者の行ってきた実地実験をなぞるように進んでいく、ちょっとドキュメンタリーな部分もあって面白い。
全般的に行動を起こす、または改める前には実験をやってからの方がいいし、実地実験をやっていけば世界も変えられるかもよ!っていうノリ。
その見方は楽観的過ぎるかもしれないけど、それでも感化されて自分もやってみたくなる。

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2020年11月21日

Posted by ブクログ

子供に勉強のやる気を起こさせるためにはどうしたらよいだろう。
寄付金をより多く集めるにはどうしたらよいだろう。
新車を安く買うためにはどうしたらいいだろうか。
訪問販売でより多く売るためにはどのようにしたらよいだろうか。
社員のパフォーマンスを上げるためにはどうしたらよいだろうか。

こんな疑問は日常生活でもよく考えると思う。
これらに対する回答は、昔ながらの迷信や習慣ではなく、科学ー特に実験に基づく行動経済学ーによって与えることができるし、そうあるべきである。

最近はビッグデータという手法が流行っているが、こちらは非常に大きい(ビッグ!)データ群から相関関係を主とした分析を行う。ここで注目してほしいのは、因果関係ではなく、相関関係であるということだ。
悲しいかな、人間は相関関係と因果関係を混同しやすいらしい。
たとえば、ある広告代理店のCEOが、広告をTVで流した量とその売上げの正の相関を証拠として、「どうだ!広告を流せば流すだけ売り上げが伸びているぞ!」ということができるだろうか。
一方で、夏時期にアイスクリームの売り上げと溺れる子供の量のグラフ(こちらも正の相関だ!)をみて、アイスの売り上げが多い年に、子供にプールに行かせることを禁止する親がいるだろうか?
実は、両者とも本質は全く同じだ。つまり、相関はあるけれども因果関係は必ずしもイコールではない、ということである。
(ネタバレだが前者は、たまたま広告を流した時期がクリスマス的な売り上げが伸びる時期であるため広告と売り上げの因果関係があると錯覚した例で、後者は暑くなるとアイスを買う人とプールや海に行く人が増えるので相関がある、というだけの話だ)

ということもあり、真に因果関係を調べたい場合は、従来のよく整備された実験環境を構築して、対照群と比較して検討する必要があるのだ。
一昔前は、大規模に実験する環境、資金、アイデアがなかったので困難であったが、ここ最近の実証経済学の流行をうけて大規模な社会実験も可能となってきたらしい。

本書に記載されている例として、子供成績を上げたいと思うのはほとんどすべての親御さんの願いであろう。
この場合、どのようにしてやる気を出させるのがもっとも有効であろうか。
物でつる場合と、お金そのものズバリを上げる方法がまず考えられるが、物を上げる場合も本質的にはお金を上げることと等価なので、お金という尺度で実験をしてみる(小さい子供は、お金よりもおもちゃの方が喜ぶだろう!というご指摘はもっともである。これについても本書では研究成果を披露しているので本書参照)

1)何もしない(これがベースとなるので比較対照群)
2)事前に1000円あげておいて、前の成績よりも下がったら1000円を没収する
3)事後に、成績が上がった場合に1000円をすぐにあげる
4)事後に、成績が上がった場合に1000円を少し時間を空けて(1か月等)あげる

この4つのケースで成績があがったのはどのケースでしょうか?
1つだけ劇的に上がったケースがあります。
詳しくは本書で。


また社員のパフォーマンスを上げる問題についても同様に実験した結果が披露されている。
こちらは個人でインセンティブを与える場合と、チームとしてインセンティブを与える場合とで結果が異なるという興味深い結果が得られたそうだ。
詳しくは本書で。


というように、このようなテーマは普遍性があり、知っていると意外と役に立つことがあるかもしれない。
お勧めできる一冊である。

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2016年02月19日

Posted by ブクログ

UC San DiegoのRady School of Management教授のUri Gneezy師の著作。学術的にも実務的にも面白い。この本もっと日本でブレークしても面白いと思う。ベンチャーが事業開発にとって必要な「実験」の組み立て、この分野、サンディエゴと日本のビジネス連携でも、色々と仕掛けていける可能性があるのではないかと思います。

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2015年05月04日

Posted by ブクログ

いわゆる「ビッグデータ」から求められた結果がただの相関関係であるのか、因果関係であるのかは判断するのが難しい。多くの場合ビッグデータを元に解析された結果というのは相関関係であることが多く、且つもっともらしいので因果関係があるとたやすく誤解されやすい。
著者達は、この誤解を行わず正しい結果から正しい答えを出すために、実社会、実経済の中で実験を行い実際の因果関係を解き明かしていく。

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2014年11月24日

Posted by ブクログ

「子どもの成績を上げるには?」「保育園のお迎えの遅刻をなくすには?」「恵まれない子に寄付してもらうには?」といった課題に対して、どのような仕組みを講じれば成果が最大化するのかについて検証、解説したもの。結局インセンティブをどう設計するかなのだが、誰に、いつ、どのように仕向けるかという工夫を、世の中の人々はあまり考えていないようである。地域活性や社会問題の解決等、この点を考慮することで成果があがるだろうということがたくさんあり、一読に値する。

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2014年10月26日

Posted by ブクログ

経済学というより、行動学かなと感じた。実験、検証を行い(これ大事)どの様な状況なら人はどの様に動きやすいを見極め、改善活動につなげるというもの。
・検証の大切さの再認識
・この行動原理がつかめれば改善活動はやりやすい
と感じる。

問題がある学生に多くの投資をして
・その人がさらに多くの問題を起こさないようにする
・世界で活躍できる存在になってもらう
考え方は共感、教育の大切さを再認識。

■学
人は見た目左右される
同性愛者、身体障害者はモノを買うときに値引き交渉時に有利になりにくい
生まれ等自身で同仕様もないことに対しては人は寛大になりやすいが、外見、態度等その人自身で変えられる事ができていないと他の人は不快に感じやすい

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2024年12月03日

Posted by ブクログ

 誰かにやる気を出させるために何かしようと思うときは、まず、その誰かがインセンティヴがなくてももともと持っている、いい結果を出そうというやる気(空き缶をリサイクルに出して環境を守ろうとか、ガンの研究を後押ししようとか)をインセンティヴが押しのけてしまわないかを考えないといけない。インセンティヴが元のやる気を押しのけてしまうのは、自分がやっていることをなんだと思うかが変わってしまったり、あるいはインセンティヴを提供された人が侮辱されたと感じたりやる気を失ってしまったりするからだ。インセンティヴという手段を使う気なら、十分に大きなインセンティヴを提供して、やれば報いられると相手に感じさせないといけない。インセンティヴは価格だと考えよう。大きな額のインセンティヴを与えれば(たとえばアメリカの一部で実際に行われているように、レベッカが遅れてきた親御さんに1分あたり5ドルの罰金を科していたら)、たぶんみんな、あなたの望みどおりに振る舞うだろう。だから、この話のキモは、お金はたっぷり支払うか、あるいはまったく支払わないかのどちらかでないといけない、ということだ。
 結局、いつなんどきでもお金は王様なわけじゃないのである。る。人が本当は何をありがたがるか「自分の時間とか善良な市民という自分のイメージとか、ひょっとしてキャンディとか――に基づいて報酬の内容を決めることが、単純にお札を何枚か叩きつけたり、あるいはふんだくったりすることより、ずっと人をやる気にさせるのだ。まとめると、すべてのインセンティヴは生まれながらにして平等ではないのである。


 公的教育の世界を探索してみてわかったのは、実地実験と経済学の論理を組み合わせれば、とても大きな力になるということだった。子どもたちは即座に貰えるご褒美には強く反応する。それから、一度上げたご褒美を取り上げられるかもしれないという脅しは、後でご褒美を上げるよという約束よりも、ずっと強力であるのもわかった。親御さんたちが子どもの教育に参加してくれればとても助けになる。それは読んだり計算したりという認知的技能の学習に限ったことではなく、慎重さやなんかの非認知的技能の学習についてもいえるし、加えて、今行う投資がどうやって将来より大きな報いにつながるかを学ばせることについても同じことがいえる。
 悪いニュースとしては、一部の子どもの行動、とくに中高生の行動はなかなか変えられないものだということもわかった。たとえばケヴィン・マンチーがそうだ。ブルームトレイル中学に入るころ、ケヴィンはすでに手遅れになっていた。結局彼は、どの授業も全部落第した。一方、ユーレイル・キングの成績はずっとよくなった。ユーレイルみたいながけっぷちの生徒は、お金とくじ引きでずっと容易にやる気を出させることができた。中学校で成績の改善が見られたことに、ぼくたちは希望を持った。中退していたかもしれない子どもたちをそれなりにたくさん卒業させることができた。でも、そういう子が劇的に増えたわけではなかった。中学生の子どもたちは、ぼくたちが願ったほど、簡単にやる気になってはくれないようだ。


 人に行動を変えさせるための手段として、大きく強力なものに「社会的規範」がある。「隣のジョーンズんちには負けない」みたいな漠然としたきっかけで、人は他の人の後を追うようになる。
 社会的規範はありとあらゆるところで人を動かすきっかけになる。他の親御さんがみんな、時間どおりに保育園へ子どもを迎えに来るようになれば、それが社会的規範になり、きっかけになる。テレビのコマーシャルで「10人中7人のお客様が」特定のシリアルだか歯磨き粉だか車だか、それこそ何でもいいが、これはいいと同意した、なんてやっているのを見ると、それがきっかけになる。そしてホテルのトイレに入って「このお部屋をご利用くださったお客様の73%はタオルを再利用しておられます」なんてサインを見ると、それもきっかけになる。
 人を説得して新しいことを試させるものといえばもう1つ、昔ながらの、そう、お金だ。お金と周りからの圧力をどう組み合わせればみんなに電球を変えさせられるか調べるために、ぼくたちはデイヴィッド・ハーバリックおよびマイケル・プライスと一緒に大規模な実地実験を行った。学生を勧誘員――というか、秘密工作員――としてシカゴ郊外に送り込み、9000軒近いご家庭を訪FLのパッケージを2パックまでお買い上げいただけますと訪ね歩かせた。
 訪問に応えてドアに出た人に、CFLのパッケージを2パックまでお買い上げいただけますと売り込む。電球の仕入れ値は3・75ドルから7・15ドルまでだったが、標準価格は1パック5.00ドルに設定した。また、1パック1・00ドルでも売り込んでみた。昔ながらの電球とだいたい同じ値段だ。加えて、あちこちのお家で学生に、世間からの圧力を加えさせた。たとえばこんなことを言わせるのだ。ご存知ですか、アメリカのご家庭の70%は少なくとも1つCFLをお持ちなんですよー」。あるいは、拷問よろしく締め上げるがごとく世間の圧力を加えたいときはこんなふうに言わせる。「ご存知ですか、私たちが調査したこのあたりのご家庭の70%は少なくとも1つCFLをお持ちなんですよ!」
 こうして、人びとにCFLを買わせる方法が2つあるのがわかった。1つは値段を安くすることだ。だいたいの人は、政府がCFLに補助金を出して、昔ながらの電球と同じ値段で買えるようにするべきだと思っている。残念ながら、政府が財布の紐を締めにかかっているとき、は行われない。ぼくたちが得た結果によると、まあ当然だろうが、そういうやり方をするとうまくいくかもしれない。人にCFLを買わせる方法の2つ目は、ご近所さんも使ってますよと言うことだ。ご近所の人たちがどうしているか教えてあげるのは、標準価格5・00ドルのパッケージを100%値下げするのと同じぐらいの効果が上げられる。大事なのは、また訪問して安い値段でCFLを売り込むと、人びとはやっぱり買ってくれたことだ。
 さて、これでわかった大事なことはこうだ。人に振る舞いを改めてほしければ、一番いい作戦は社会的規範と値段のワンツー・パンチだ。この2つは互いに補い合い、互いに効果を高め合う。世間の圧力から見てみよう。人は、他の人たちに本当に遅れたくないと思っているわけだから、他の人たちが何をしているか教えてあげよう。そうすれば教えられた人は市場に入ってきてCFLの最初の1パックを買ってくれる。で、その人自身もめでたくCFLを手に入れたら、世間の圧力はもうそんなに効果を持たなくなる。そうなったら今度は安い値段で製品を提供しないといけない。そうすることでCFLをたくさん買ってくれるようになる。
 こういうふうに、社会的規範と価格を組み合わせれば、みんなに環境に優しい製品を買わせることができる。もっと一般的にいうと、環境を守る新技術があるなら、政府(でも企業でも)は、まず社会的規範で市場に切り込むべきだ。世間の圧力を使い切ったら、もうそれ以上は世間の圧力は力を持たない。そこからは価格が重要になる。


 いろいろな実地実験で得た何十万件にも及ぶ観察結果を分析して、ぼくたちはこんな結論を出した。主導権を慈善団体から寄付者に移せば流れが変わる。寄付を募る相手にリストから抜ける機会を与えることで、スマイル・トレインは寄付をする人たちに贈り物をしたのだ。寄付をする人たちはそれで、今後の募金の呼びかけを断らなくても済むようになる。スマイル・トレインは、募金を呼びかけるだけではなくて、「こっちの頼みを聞いてくれたらそっちの頼みも聞くよ」と言ったのだ。
 経済学の標準理論は、人は自分にとって一番いいように行動するから、大体の人はダイレクトメールを受けとったらにっこり笑って捨てるだけだと考える。でも、誰もがそんなふうに自分のことだけしか考えてないわけじゃない。ぼくたちの中にも、それこそ経済学者の中にさえ、いい人はいて、優しくされたら優しくし返すって人がいるのである。それをわかったうえで、人のおたがいさまの心に訴える作戦をやればうまくいくのだ。とくに非営利組織は、宛先シールだの世界地図だのカレンダーだの、そういうのを送って寄付が返ってくればなんて期待していることがよくある。もっと一般的にいうなら、ぼくたちの実験結果は、経済学の標準モデルが見過ごしていたインセンティヴに伴う隠れた利得に光を当てている。たとえば、ぼくたちの解釈によるとインセンティヴが伝える心理的なメッセージは――それが優しい心であっても悪意のこもったものでも――人の行動に重要な影響を及ぼす。意図が大事だ。お客に気を配る企業なら、お客は意見を聞いてもらうのをとても喜ぶのを知っているべきだ。そして彼らは、もうやめにしたいですかと尋ねられるととてもうれしいのである。
 慈善活動の世界を探求してみて、ぼくたちはとても大きなものを得た。政策の世界にいる人たちは、こんな疑問の答えを知りたがっている。慈善活動への寄付に対する税控除をやめたら、ぼくたちの社会をいつにしてくれているあのいろんな慈善団体にどんなことが起きるだろう?政府の補助には何が起きるだろう?政策をそんなふうに変えたらどんな影響があるか詳しく検討する前に、そもそも人はどうして寄付をするのかわからないといけない。


 別の言い方をするとこうなる。会社がおたがいさまの精神に訴える策を弄したうえで、アンケートに答えてくれませんかと人びとにお金を同封して手紙を送ったら、応じる人は増える――そして調査はコストの面で効率が上がる――だろうか?あるいは、昔ながらのやり方をしたほうが賢明なんだろうか?つまり、世間の人を従業員みたいに扱って、仕事をしてくれた人にだけ報いたほうがいいんだろうか?それともインセンティヴがどうのなんて忘れて、報酬なんて出さずにアンケート用紙だけを送ったほうがいいんだろうか?策の1つでは、会社はクラブ・メンバーの半分に、1ドルから30ドルまでさまざまな額の現金を同封して手紙を送った(ぼくたちはこれを「人付き合い」作戦と名づけた。おたがいさまの精神は人付き合いに伴う現象だからだ)。もう1つの策では、会社はアンケートに答えてくれた人の中か53500人に小切手(送る額は1つ目の策と同じードルから30ドルまでだ)を送ると約束した(こっちは「条件付き」作戦と名づけた)。対照実験のほうは、250人にアンケートを送り、答えてくださいと頼んだ。次のページのグラフは返ってきた反応を示している。
 グラフによると、「損益分岐点」は15ドル近辺だ。15ドルまでは、お金を先に送ったほうが人におたがいさまだと思わせることができて、だからアンケートの答えが返ってくる割合は高い。1ドルみたいな取るに足らない額でさえそうなのだ。実際、こう書くと反応が返ってくる割合はずっと高かった。「アンケートに答えてくだされば1ドルは差し上げます」。でも額が155ドルを超えると、条件付き、つまりアンケートに答えてくださればお金をお送りします、というやり方のほうが答えが返ってくる割合は高かった。
 大事なのは、条件付きでお金を払うほうが先に払うより安くつく点だ。当たり前でしょう?アンケートに答えて送り返してくれた人にだけ報酬を送るほうが、答えてくれようがくれまいがお金を送るよりも、送るお金は少ない。人付き合い作戦でかかる費用は返信1件あたり平均で45・40ドルで、これは条件付き作戦の費用(平均で20・97ドル)の倍以上だ。その結果、人付き合いにかかる費用の総額は条件付き作戦の3倍近い(3万8820ドル対1万3212ドル)。ダイレクトメールを送る会社にとって、この試みから学べることはなんだろう?予算が限られ
ていてアンケートの返信1件あたり1ドルしか使えないなら、その1ドルを封筒に入れてアンケートと一緒に送ってしまったほうがいい。1ドルを受け取った人は(少なくともいい人なら)おたがいさまの精神を発揮して喜んでアンケートを送り返してくれるだろう。でも、1人あたりで使えるお金がけっこうあるなら、アンケートを送り返してくれた人にだけお金を払ったほうがいい。もちろん、相手を見てどちらにするか決めたっていい。経済学者みたいに考える人たちには条件付きで支払うほう、経済学者とは違う種類の人たちには無条件で支払うほうを使う、なんてやり方もアリだろう。

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2024年06月03日

Posted by ブクログ

人が何で動くか(=インセンティブ)を理解できれば、狙った結果につなげられると実地実験を通して示している。根拠が薄いと感じる箇所もあるが、観点として面白かった。
ただ、せっかくエッセイ的な砕けた文なのに直訳感があり、誤植もあったのが残念だった。

勉強しない子やその親に、適切なインセンティブ(お金やモノ)を渡せば子の成績が上がる。いいインセンティブがあれば集まる寄付金の額も上がる。
気持ちをお金で動かすことに不満の声が上がるだろうと想像できるが、お金を使えば学校中退も逮捕もされず過ごせる子が増え、寄付で助かる人も増えるということでもある。

「慈善組織は販売ってことばが嫌いなんだ」とブライアン。「でもぼくは大好きだな」
という言葉に共感した。

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2024年04月02日

購入済み

経済学というよりは文化人類学

経済学というよりは文化人類学や社会学を思わせような内容の本。
理論ではなく興味深い実例を多用して分かり易く解説している。
ただし当たり前のことではあるが明確で理論的な結論は出ない。

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2019年11月23日

Posted by ブクログ

人の行動がインセンティブ設計でどのように変化するか多様な実地実験から解き明かす本。
行動経済学や消費者心理については別の本を読んだほうが良い。
だけど、社会科学実験の実施について、これだけ多様なバリエーションを、しかもわかりやすく説明してくれる本は他にあまり無いと思う。
実験の背景には、高度な理論があるはずなのだけど、それはさておいても興味を引く実験結果が並んでいる。
面白すぎて結果だけが先歩きさせないように統計学的と実験のリミテーションにも注意したいところ。

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2019年08月07日

Posted by ブクログ

行動経済学に基づくインセンティブについて書かれた本。実地の実験から得られた知見を豊富に盛り込んである。寄付の秘訣とか、学校を改革する話とか、面白いエピソードが満載。読み物としても面白いと思う。

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2018年11月12日

Posted by ブクログ

翻訳者の望月衛さんが訳した他の本が面白かったので、こちらも読んでみました。

「経済学」というよりも、「何かわからないことがあったら、とにかく実験してみよう」というのが、この本の主旨だと思います。
もちろん、実験したからといって、思い通りの結果が得られるわけではありませんが、実験をすることで、何が有効で、何が無効かは見えてくるわけで、見えてきた有効なものを、実際に展開していけばいい、ということが、繰り返し語られています。

こういう感覚って、わかる人にはわかると思うのですが、わからない人にわかってもらうのは相当難しいような気がします。
単純な話だと思うんですけどね。

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2018年07月28日

Posted by ブクログ

行動経済学という学問をご存じだろうか?

これまでの「経済学」は定性的で曖昧なことが多かった。でも、最近は「統計学」も駆使して、定量的に経済を分析することが当たり前になってきた。

そんな基礎を作ったのが2002年にノーベル経済学賞を受賞した、ダニエル・カーネマン。これまでに著書も何冊か読みましたが、小難しい。。。笑

でも、この本は「ネットフリックス」など身近な事例から「行動経済学」を語っているので面白い。その中でも一番「なるほど!」と思ったのは、「子供の教育に対するインセンティブ」。

「子供に勉強をさせるのに、インセンティブとしてお金を渡すのはダメ」と思われているけど、それはあくまでも感覚的な意見でしかない。それをちゃんと定量的に実証したらどうなったか?

気になった方は是非ご一読ください。笑

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2018年04月04日

Posted by ブクログ

最近の経済学で大流行している比較対象実験(Randomized Control Trial)を用いた研究結果について詳細に記述している良書。

以下に、興味深かった点を挙げておきます。
①子どもの成績を伸ばすためには?
子どもの成績を改善しようと思うのであれば、ご褒美をあげることが何よりも大切である。ご褒美とは、何もお金だけで無い。トロフィーやチョコレートでも良い。努力に対して報酬を与えることで、子どもが勉強をするインセンティブを引き上げることができる。

②女性は男性よりも劣っているのか?
日本においても、管理職に占める女性の割合は男性のそれよりも圧倒的に低い。これは、女性が生まれながらにして、マネジメント能力や経営管理が出来ないからなのだろうか、それとも、会社の雰囲気などの文化的な要因によって影響されているのか。この問題に対して、筆者は、母性社会が強い村と父性社会が強い村を比較して、女性がどのように振る舞うのかについて検証をします。その結果、女性が先天的に経営管理能力が劣っているのではなく、適切な競争条件が整備されているのであれば、女性も自身のキャリアを伸ばすことができることが明らかとなった。

③差別はどのように生じるのか?
筆者は、差別の中でも経済的差別に関して言及している。経済的差別とは、統計的に平均値が低いもしくは高い集団に対して、差別的な感情を抱くことである。例えば、黒人と白人を比較すれば、前者の方が明らかに犯罪率が高い。それゆえに、黒人は暴力的であるという差別意識を抱きがちである。

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2017年04月15日

Posted by ブクログ

人がどのようにしてインセンティブにより動かされていくのか、どうすれば自分たちの思ったとおりに人々に動いてもらえるのか。様々な課題をランダム化比較試験で、実証しながら答えを出していく筆者達のアイデアや行動力に脱帽。
これを読んだから、他人に対するインセンティブの与え方が劇的に向上するわけではないけれども、少なくとも子供には短期的なインセンティブの方が良いのである。更に面白いことにインセンティブが消失してからも良い行動が続く傾向があるというのも大変興味深い結果である。

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2015年06月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

行動経済学者により、保育園から大企業まで様々な分野で行った実験踏まえて人間がどういうことにモチベーションを感じるか、経済学でどのように問題を解決できるかについて、豊富なネタと合わせて紹介されている。実ビジネスでも間違えなく使えるのだ!という主張はごもっともだが、残念ながら自分の仕事でどう活かせるかはすぐに良い考えが浮かばない…

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2015年04月30日

Posted by ブクログ

教育、寄付、ビジネス、途上国支援など、人々を行動に駆り立てるインセンティブを数多くの実地実験によって解き明かします。分からないことは小さく試すがビジネスの鉄則、意外とえぐい方法が人を動かすことに思わず苦笑です。

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2015年01月18日

Posted by ブクログ

 この経済学の本は、なかなか面白い。「実地実験」を通して語られる様々な問題への解決策が。同様の本として「ヤバい経済学」という本が浮かんでくる。

 今はやりの「ビッグデータ」に関する話題が載っている。ビッグデータにも問題点があると指摘している。それは因果関係ではなく相関関係に依存していて、しかも、大きすぎてどうやって進んでいったらよいのか途方に暮れると言う点だ。数字やデータをこねくり回していて知らぬ間に難しい理論だけが独り歩きして実態とかけ離れることになりかねない。

 インセンティブに注目している。どうすれば人が良いことをするのだろうか、インセンティブが「どう働くかを理解しないといけない」と指摘している。読んでいくとインセンティブとハサミは使いようだと分かる。

 教育問題、差別問題などを取り上げている。一貫しているのは、「経済学の武器は大事な問題を実行可能なやり方で解決することなんてことにまで、ちゃんと役に立つと僕たちは確信している」というように、少しでも良くなる方法を考えて実践することが必要だと説いている。ウーン、どこかの利権経済学の専門家とは大違いだ。その方は、どこかの大学教授である人材派遣会社の会長で、政府の諮問機関の議員という矛盾した人の事を指す。自らの「フィールドワーク」に基づく「利権経済学」の本を書かないかなとふと思った。

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2015年01月09日

Posted by ブクログ

本書では、人の行動の背後にある動機まで解き明かします。

机上の空論ではない実際に使える形で、解決策を示しています。

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2014年10月02日

Posted by ブクログ

訳書は読みづらい。
インセンティブが大切だというのが分かったが、インセンティブが逆効果になることもある。考えてインセンティブを設定することが肝要!

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2025年03月26日

Posted by ブクログ

人はインセンティヴで動くが、単に与えるだけでなく、どれだけ与えるか、どのような形で与えるかによって、反応の仕方はまるっきり変わってくる。

著者の研究グループでの事例を織り交ぜながら、インセンティヴの掘り下げを行っている。

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2016年01月03日

Posted by ブクログ

まあ,お話しとして面白い,かな.本書は最初から最後まで,どの場面でどんなインセンティブが最も効くか,という実験の紹介なのであるが,言い換えると,如何に人をコントロールするか,というお話しなので,感覚的にちょっと合わない.アメリカの荒廃校を改善するインセンティブの実験は面白いのだが,人を教育する立場にある身からすると,やっぱりちょっと....

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2015年03月21日

Posted by ブクログ

対照付きの実地実験で人間の行動を解き明かす。男女の稼ぎの差は社会的なもの。損失回避の方が強力。幼少期からの学習支援が効果的。差別の理由は、悪意より経済的評価の方が大きい。

結果やストーリーは既に別の本で読んだことがあるものが多いのだけれど、この本が最初だったのか?

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2015年08月29日

Posted by ブクログ

実験を用いて経済学の理論やモデルを実証するという新しい研究手法について書かれた良書。しかし、帯の宣伝に比べて内容は冗長的で、ノーベル経済学賞候補に該当するのか疑問を感じた。印象的な章としては、人が寄付を行うことの分析の章が非常に面白く、現実のNPO経営でも応用できるのではないかと感じられた。インセンティブという概念も、これまで私が認識していたプラスのお金などの正のインセンティブだけでなく、人種差別、性差別などによる負のインセンティブがあるのだということが非常に印象深かった。

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2014年09月24日

Posted by ブクログ

ネタバレ

行動経済学の本は、読むたびに発見があるので面白い。

今回、特に気になったのは
ご褒美は先にあげて、できなかったら取り上げる方が
インセンティブとしての効果が高い
ということ。

これ、会社の制度に使ってみたいと思うけど
反発が強そう。
でも、きっと導入する。実験的に。

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2014年09月10日

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