あらすじ
いま、なぜ江戸時代が大事なのか。養老氏・徳川氏いわく、われわれがこの時代の社会に学ぶべきは「人の力」であるという。「世間」に配慮して欲を抑える個人の忍耐や、目上や同僚が仲間を叱咤する習慣の積み重ねが、二百六十年ものあいだ平和と国力を築いた原動力だった。武士も町人も美学をもち、己を律することを知っていた。だからお上の威光は「そこそこ」でよく、行政の実務は町人や農村の顔役に任せた。お触れ(法律)の実施についても、杓子定規ではなく、「目に余る」ときに罰した。法より世間の目が社会秩序を守ることを知っていたからである。翻ってこの十数年、日本では条例・法律や規制の類がやたらと増えている。だが、それで世の中が良くなったかといえば、むしろ悪くなったと感じる方が圧倒的に多いのではないか。風通しの良い社会を築くために、いまこそ江戸の智恵が必要である。グローバル時代に生きるヒントと、日本人の美質を発見する一冊。
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Posted by ブクログ
日本人の誇りを感じさせてくれる本。
養老先生が大好きで、そのつながりで買った本だがとても満足した。
日本史はニガテでよくわからないが、教科書に出てくる武将はまさに偉人だったし、確実に国のことを考えて政策を打っていた。
現代に生きる、江戸時代の人々から見れば貧弱な我々にも確実に同じ血が流れている。
日本人は本当に尊い民族であるということを教えてくれる本だった。
Posted by ブクログ
■江戸時代に学ぶべきは「人の力」
書籍「江戸の智恵」(「三方良し」で日本は復活する)
(養老孟司・徳川恒孝著・PHP研究所刊・194頁)
養老氏・徳川氏が、思う存分、江戸時代を語っている。
注目は、やはり「人」に注目しているところだろうか。
「江戸」と言うと、当時の大都市が、循環型社会を形成し、
環境先進都市だった・・という話に落ちつくのかと思いきや、
「世間」に配慮して欲を抑える個人の忍耐や、
目上や同僚が仲間を叱咤する習慣の積み重ねが、
260年ものあいだ平和と国力を築いた原動力、とまとめている。
武士も町人も美学をもち、己を律することを知っていたからこそ、
行政の実務は町人や農村の顔役に任せたし、
お触れ(法律)の実施についても、杓子定規ではなく、
「目に余る」ときに罰した、と言う。
言い換えれば「法より世間の目が社会秩序を守ることを知っていた」
もう一度「人の力」について、江戸に学ぶ必要がありそうだ。
法律ばかり増えて、逆に、社会はどんどん悪化しているようだ。
だからこそ「人が人を教育していた時代に学ぼう」と言っている。
けっして「電気のない暮らしに戻れ」と言っているのではない。
やはり、事業仕分けに「教育」分野を入れたのは、失敗だな。
Posted by ブクログ
市場原理主義の対極として江戸時代を読み直す。そう思えば面白い本であるが、乗り越えなければならないハードルが高いかもしれない。
ただ理想を掲げなければ何も始まらないのだから、この本の著者は評価できる。
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養老孟司氏と徳川宗家第18代当主・徳川恒孝(つねなり)氏の対談集。
そろそろ養老氏の本はあらかた読んだかと思っていたが、対談相手に興味を惹かれた。
徳川恒孝氏、1940年生まれとのことで70歳ですか。徳川宗家の当主というのも、さぞ大変なことでありましょうぞ。
江戸時代を振り返り、リサイクル社会の手本として、かの時代を賞賛する向きがあった時期があり、少々眉唾ものとして聞いていたのだが。
基本的に時代劇が好きなワケでして(笑)。
江戸時代を封建社会、差別社会としてだけではなく捉えようという姿勢は健全でありましょう。
人口問題ひとつ取り上げたところで、現代を江戸時代にシフトできるはずもないのだが、新しい価値観、新しい共同体というものを考える上で何かのヒントにはなるのではないかと思っている。
なかなかに、興味深い話だった。
(自分の頭の悪さを棚に上げて言いますが。
養老氏の本は、ご自分で執筆されたものよりも対談の方がわかりやすね)