あらすじ
タイムカプセルに託した未来と、水没した村が封印した過去。時計の針を動かす、彼女の「嘘」。平凡な毎日を憂う逸夫は文化祭をきっかけに同級生の敦子と言葉を交わすようになる。タイムカプセルの手紙を取り替えたいという彼女の頼みには秘めた真意があった。同じ頃、逸夫は祖母が五十年前にダムの底に沈めた「罪」の真実を知ってしまう。それぞれの「嘘」が、祖母と敦子の過去と未来を繋いでいく。
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Posted by ブクログ
笑子さんの「とにかく全部忘れて、今日が一日目って気持ちでやり直すの」という言葉が印象に残りました。
私情ですが、最近仕事で嫌なことが続いたので、もし次にそのようなことがあっても、この言葉を思い出してリセットしていきたいです。
また、絹田さんの「十を三で割ったあと、三をかけても元に戻らない。機械がやる計算なんて信用できない」というお話も興味深かったです。
もし次に機械は信用できないって、人に諭すことがあれば参考にしたいです(あるかなぁ…)。
ストーリー自体は面白かったです。敦子が自殺していなくて本当によかった…!
個人的にどんでん返しを期待してしまっていたけれど、それが無いまま終わったため、☆5ではなく☆4になりました。
Posted by ブクログ
終章で、物語はずっと未来に向かって進んでいたんだな、ということがわかった。
読んでいて思い出したのは、私は学生の頃、加害者の立場だったな、ということ。ここまで酷い行為ではなかったし、陰口程度のものだったけど。
忘れていた。
いくは謝ることで、過去と決別できた。
敦子は赦すことで、前に進むことができた。
逸夫が人形に何を託してダムに落としたのかは語られないけれど、たぶん「普通がつまらない」と思っていた過去の自分なのではないかと思う。
自分の日常が「普通」で平凡だと思うとき、考えは自分に向かっていて、他者には思いが至らない。
ほんとうは、蓑虫の蓑みたいに、自分が見ているのは蓑だけで、その中身がどんなであるかに目を向けない。
逸夫は、いつも気づくのは後になってからだと、あのとき気づいていたらと、後悔をして思いを巡らせる。
それは誰にでもあることだと思う。
長年一緒にいてよく知っていると思っている身近な人でも、本当のところはわからないし、自分の周りで何が起こっているのかを、俯瞰的に把握することは難しい。
思い込みで決めつけることはできない。
物語の最後が希望に溢れていて良かった。
Posted by ブクログ
道尾秀介先生の作品といえばどんでん返しミステリーという認識が自分の中であったがこの作品はミステリーとかではない。
読み終わって初めてタイトルの意味が理解できた。
ダムに自分と模した人形をを埋葬することで過去の自分と決別することができた。
旅館の跡取り息子の"普通の"少年 逸夫
旅館のおばあちゃん いく
いじられてる少女 敦子
Posted by ブクログ
ラストの情景が美しい。天泣降り頻り、それぞれの過去を弔う。
思春期の少年の心情描写に強い作家だな、と改めて思う。少しずつ変わりゆく周囲との関係性の中で、無邪気だったあの頃に戻りたくても戻れない葛藤、または戸惑い。
『月と蟹』とはまた別のアプローチって感じ。
Posted by ブクログ
級友のいじめによる自殺志願やいくの過去など、目をそらしたくなるような状況の中で、周りの言葉などもあり新しい1日目を始める。
途中はずっともどかしさなど感じつつも、最後はスッキリと終われて良かった