あらすじ
「エルトゥールル号の恩返しですよ」――イラン・イラク戦争の最中の昭和六十年、フセイン大統領が、四十八時間以後のイラン領空の航空機無差別攻撃を宣告。日本政府が救援機を出せない中、イランに取り残された二百人以上の日本人救出に動いた国があった……。そのトルコ政府の英断の裏に秘められた、明治二十三年の「エルトゥールル号遭難事件」とは。百年の時空を超えた日本とトルコの友情を描く感動の歴史長編。
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Posted by ブクログ
トルコが親日国というのは以前から聞いていたのですが、その所以がなんなのかは全く知りませんでした。なので、本作を読んでその理由に納得。由来を知ることができたのは良かったと思います。
加えて湾岸戦争時に日本人がイラクから出国する際、はるか昔に同国の人が日本人に助けられたことを恩義に感じていたトルコ人が、その手助けをしてくれたということに驚嘆。
国が違っても、育った環境が違っても「恩を返す」(あるいは「恩を送る」)ことを知っている人たちの姿に感動させられました。
Posted by ブクログ
残念ながら、わが国はあまりに虚構の上に成り立つ平和に慣れ過ぎてしまっており、有事がないという根拠のない神話を前提に、政治、マスコミ、国民が有事法制を実効性のないものにしたり、形骸化させることに成功している。
そのひとつの表れが、1985年に発生したイラン・イラク戦争中に発生した、邦人退去時の混乱。
フセイン大統領が48時間以内の航空機無差別攻撃を宣告、日本政府が様々な制約や権利の乱用により救援機を出せない中、イランに取り残された200名以上の日本人救出に動いた国があった。
自国航空機の乗員を危険に晒し、かつ、同じくイランからの救出を願う自国民に優先させ、特別機を出し、日本国民を出国させた。
その国こそ、かつてはオスマントルコとして、ヨーロッパを席巻した国、トルコ共和国。
オスマン帝国は、明治23年日本への使節団として軍艦エルトゥール号をを派遣した。大任を果たしたエ号は帰路に就いたが、和歌山県紀伊大島で台風に遇い遭難。
大時化の中繰り広げられた島民の決死の救援活動の結果、多くの乗組員の命を救い、また明治天皇はじめ多くの援助のもと、日本の軍艦を持ってその生存者を母国に送り届けた。
その記憶は、トルコ国民の中で語り継がれ、あるべき国の外交の姿として繰り返し教育され、そして忘れられなかった。
だからこそ、わが国政府が、懸命にではあるが結果手をこまねいているしかできなかった邦人の緊急脱出の場面において、最大限の援助を差し向けてくれたのであった。
本書は、それらあまり日本では記憶されていない二つの事件を時空を超えて結びつけており、緊迫した状況が続く展開は小説としても充分に面白いが、さらにその事件が事実に忠実に描かれていると思うと、これらの記憶は風化させてはいけないと思う。
有事はある。
原発政策に反発するときにそう考える人が、外交政策において有事が無いという根拠のない砂上の楼閣の上に築かれた平和幻想の上に、自らの持っている力の手足を縛る意見を声高に言い募るのは、滑稽であり哀れだ。しかも、危険だ。
現実世界では、今日もペルシャ湾に多くの船舶が入り、日本への石油、ガス輸送等原料輸送に尽力している。常に他国の顔色をうかがいながら。海賊が横行する海域でも、日本船ができることは、丸腰でドアを閉ざして突っ走るのみ。
そもそも、なぜ日本国が在留邦人を見捨てなければならなかったのか、そんなことも考えた。