【感想・ネタバレ】海の翼 エルトゥールル号の奇蹟のレビュー

あらすじ

「エルトゥールル号の恩返しですよ」――イラン・イラク戦争の最中の昭和六十年、フセイン大統領が、四十八時間以後のイラン領空の航空機無差別攻撃を宣告。日本政府が救援機を出せない中、イランに取り残された二百人以上の日本人救出に動いた国があった……。そのトルコ政府の英断の裏に秘められた、明治二十三年の「エルトゥールル号遭難事件」とは。百年の時空を超えた日本とトルコの友情を描く感動の歴史長編。

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Posted by ブクログ

こちらの本もまた2023年の「啓文堂書店の記憶に残るpart2 愛の本」に掲載された稲田堤店さん推薦の本だった。
この話はフィクションだとしたら出来過ぎの「史実」に基づく内容だと知り、大いに驚き大いに心を動かされた。
全編にわたるエピソードのほとんどが奇跡の物語に思えるほどだった。
海難事故当時の日本人もイライラ戦争時のトルコの人々も、何の躊躇もなく互いの人々を助けたのだが、命がけの行動であり自分にマネできるのか正直自信はない。
が、このような勇気ある行動を実践できる民族の一人であることを忘れずに生きたいものだ。
啓文堂書店さんのチョイスは毎回素晴らしい。全く知らない新たな世界へ誘っていただきありがたい。

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2025年03月24日

Posted by ブクログ

「トルコは親日国」

それは昔から漠然と知っていた。

でもなぜ?

考えたこともなかった。

「読んでよかった」

「知れてよかった」

多くの人に読んでほしいと思える一冊。

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2024年10月30日

Posted by ブクログ

涙腺崩壊!
通勤電車で読んではいけない。
電車内で嗚咽あげてしまった...
この手の物語には弱いのよ。

・エルトゥールル号遭難事件
・日露戦争
・イラン・イラク戦争時のトルコ航空機での日本人救済
が描かれています。

トルコの日本人救済やその背景にあったエルトゥールル号遭難事件はテレビでも何度も紹介されていることもあり、知っている事柄です。
特に、エルトゥールル号遭難事件は映画にもなりましたしね。

しかし、本書のポイントは、その恩返しとして語られる、トルコの日本人救済。
自国民を置いてまで、日本人を救う決断をしたトルコ政府。
涙出ます。

本書を読むことで、その当時の混乱、困難、想い、意志がひしひしと伝わってきます。
特に100年近く前から伝えられてきたトルコの日本への想い。
その想いが引き継がれてきていることがすごい。

翻って、日本はどうなのか?
自らの危険を顧みず、救うことができるのか?
今後100年、想いを引き継いでいくことができるのか?
決して忘れてはいけません。

ただ、小説としては、とてもいい話だったんだけど、余計な演出が多かったのが残念(笑)
ちょっと過剰演出です(笑)

それを差し引いても、良いお話でした。
とってもお勧め、絶対に読んでほしい。子供たちにも読んでもらいたい。
でも電車ではやめたほうが良い(笑)

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2024年10月05日

Posted by ブクログ

なんでこの本を手に取ったのか今でも不思議。
タイトルを見てもピンと来ないし、もちろんエルトゥールル号なんてその時は知りませんでした。
でも何故か手に取って表紙や帯に書いてあるコメントを読むと、どうやら実話でしかも感動的な…しかも問題の時代は1985年。世界情勢なんて気にも止めずに遊び回っていました。イランとイラクが戦争をしていたのは知っていましたが、まさかこんなドラマチックで感動的な実話が有った事は本書を読んで初めて知りました。
ラストは震える位感動しました。
老若男女問わず日本人なら是非読んで欲しい本です。

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2021年01月24日

Posted by ブクログ

"電車で涙が・・・最近涙腺が弱い。
エルトゥールル号、イラン・イラク戦争、トルコの大地震と脈々とはぐくんできた日本とトルコの友好関係。
トルコの人たちの人情にただただ、感動する。
人情だけではなく、勇気と行動力に感動する。

今、海難1890という映画も公開されている。ぜひ見に行きたい。"

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2018年11月20日

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熱い。熱い。涙が一気に溢れるシーンが多い。
トルコって聞くと、そこらへんでシシケバブを売っている人たちくらいしか思いつか
なかった自分が恥ずかしい。現代日本人大反省ですよ。
昔の日本人は熱い。それを代々伝え聞いただけの血族でもないトルコ人達がそれ以上
に熱い。
この逸話は少なくとも100年先まで当たり前のように伝えないといけないし自分達と
子孫が『トルコに何かあった時は』の気持ちを自然に持てる日本人であり続けなきゃ
いけないと思った。

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2018年11月11日

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1980年に勃発したイランイラク戦争。
1985年当時のイラクの大統領フセインが出した、これから48時間以降に領空内に侵入した航空機は無差別に攻撃する、という声明で起こった出国パニック。
どの国も自国民救出を優先するため、脱出チケットが手に入らない。法律の壁に阻まれて自衛隊も出動できず、国からの救助は絶望的に。
中東に空路を持つ日本航空会社はなく、このままでは戦禍の中に多くの日本人が取り残されてしまうという絶望の中、唯一日本人救出のために動いた国、トルコ。
彼らトルコ人は100年前に受けたエルトゥールル号の恩返しと皆口を揃えて言う。

中間に、エルトゥールル号事件(1890年)とは何か、その時日本人は何をしたか、が細かく書かれている。(ただ物語性を出すためだろうが、りつとウシュカの話はちょっとドラマチック過ぎな気もする)

トルコが親日国と言うことは知っていたけど、その理由までは具体的に知らなかったので、トルコ親日の背景がわかってすごく面白かった。
というか、当時の串田町の人々がとても素敵。武士でもないのに、義勇にあふれている。

苦境の時に受けた親切は、相手に感謝と友愛をもたらす。
国境を越えてお互いに苦境に立ったときに助け合う関係があるのはとても嬉しい。
聖書の弁ではないけど、利己的ではなく与える側に立つことって、人生において大切だなと感じる。
最近のトルコ情勢を見ると
テロや難民で色々と心配。一刻も早く情勢が落ち着くといいな。

久しぶりに一気読みした。
そして電車の中で泣いた。

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2017年09月17日

Posted by ブクログ

耳にしただけで涙腺が緩む単語が私にはいくつかある。最近は歳のせいか、昔より涙もろくなっているような気もするが、この本に登場する『エルトゥールル号』もそうした単語のひとつだ。

といっても私の感涙ポイントはエルトゥールル号そのものではなく、イラン・イラク戦争の折、自分が直接助けられた訳でもないトルコ人が日本人に対して示してくれた態度のほう。
危険を承知で飛行機を飛ばしてくれたトルコ航空のクルーはもちろん、イランとトルコは地続きだから、と自国の飛行機を日本人に譲り、車で避難したトルコ人達には本当に頭が下がる。
私がその立場であったら、自国民を優先して当然!と自分の権利を主張してしまいそうだ。(今後、もしそういう場面に遭遇したら、この話を思い出してみようと思った。)
車でトルコを目指したトルコ人たちについて、その後は書かれていなかったと思うが、全員、無事に帰国出来たのだろうか。

難破したエルトゥールル号の乗組員を救助した串本町の人びとについて、なけなしの食料を供出したり、自ら荒れた海に入って救助にあたったことはこの本で初めて知った。彼等もまた尊敬に値する人びとだと思った。

さしあたって、イラン・イラク戦争のときの恩に報いるため、テロや金融不安で揺れているトルコに対して、日本人ができることは何か考えてみたい。

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2017年01月20日

Posted by ブクログ

こんなにも美しい物語があるだろうか。
語り継がれる恩。自己犠牲という話ではない、ただ行動してしまう心。

自分を顧みて、
感謝の念を常に忘れず、さらにそういったことに敏感にいたいと思う。

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2016年01月27日

Posted by ブクログ

久々に面白い本に当たった。日本とトルコの深い繋がりの話。教科書には載ってなかったけどね。こういう大事な話はもっと教えた方が良い。知らない日本人は恥だっていうぐらい皆が知るべきお話です。

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2016年01月25日

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明治時代に助けられた記憶を1世紀の間語り継ぎ、その恩に報いたトルコの人々。
当時の日本人は何も見返りを求めずにエルトゥールル号の船員を助けた。
今の日本人は「世界のどこに出ても後ろ指をさされない」のか、いささか疑問だ。

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2016年01月07日

購入済み

目頭が熱くなった

日本とトルコの友情物語が判りやすく、ドラマチックに書かれていておもしろかったです。特に後半は目頭が熱くなりました。

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2014年09月26日

Posted by ブクログ

イラン・イラク戦争時、イランの首都テヘランに取り残された二百人以上の日本人を、イラン軍の攻撃が迫る中、トルコは日本人の為に特別機を出し救出してくれた。エルトゥールル号の恩返しだと。
そういう出来事は知っていたが、本書を読むことで、紀伊大島での救出の過酷さや、テヘランでのミサイルが撃ち込まれる中での脱出までの切羽詰まった状況をより知ることができた。
台湾有事が現実味を帯びてきている今、政治家の多くが自分の政治家生命しか考えていないような気がして不安を感じる。
またこういう日本を誇れる出来事を、より多くの国民は知るべきだと思う。

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2025年04月20日

Posted by ブクログ

エルトゥールル号の事故、日露戦争、そしてイランイラク戦争時の日本人救出機の派遣。世紀を越えて恩に報いるトルコ人の姿勢に感服。

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2024年10月19日

Posted by ブクログ

面白かったと思う
序章のイランイラク戦争から
明治時代の話になり
それが本編と思いきや
元の話に戻り、ちゃんとしたあらすじで
物語りを締めくくっている
双方、よい話であった

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2023年11月14日

Posted by ブクログ

日本とトルコの絆をドラマチックに書いたエンタメ本だが、かなりリアルに実際の事実に沿って書かれていてあっという間に読めた。自身もインドやボスニアなどの国で感じた、異国の人間への感謝と嫌悪感を改めて消化できるように思った。どこの国の人間も、美しい心で接しなければいけないことを思い出した。嫌な側面もあれば、良い側面もあり、どっちを見出してどっちに自分を染めるかは自分次第だと。

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2023年06月25日

Posted by ブクログ

泣ける。
いい話しすぎる。
トルコにこんなに好かれているとは知らなんだ。

重厚濃厚なストーリーかと思っていたら、
余分な部分を削ぎ落とした、ややこぢんまりとした話になっている。
そのせいか、重くならない分読みやすくで、スルスルと読める。
暗くならずに娯楽性の高い一冊。

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2021年06月01日

Posted by ブクログ

今となっては少し有名になった歴史かもしれない。他にも色んな歴史が埋もれてるんだろうな。本や映画を通して知っていきたい。

それにしても、このような事実をもっと歴史の時間に習いたかった。

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2021年03月06日

Posted by ブクログ

日本とトルコの絆を描いた、史実を基にした小説。
明治時代のエルトゥールル号事件(紀伊半島付近でトルコの軍艦が遭難し、地元住民が懸命に救助した)と、1985年のイラン・イラク戦争時に日本人のイランからの退避にあたってトルコ航空が臨時便を出した史実を絡めて描いたもの。

題材選びの時点で、もう120%泣ける小説なんだよなぁ。。
(そういう意味では、よくある病気モノの小説に近い)
案の定メッチャ泣いたし、読後感も悪くなく、もし今度長めの休暇が取れたりしたらトルコ行ってみたい!とも思わせてくれました。

では、史実自体を差っ引いて、小説としての本著はどうか。
まず登場人物。実在・実名の人物と、名前が別名に変えられてる人物、存在から作られた人物が入り混じってます。読んでる間はあまり気にならないと言えばそうなのですが、安藤晋一(安倍さんっすね)の後に秋山真之が出てくると少しばかり混乱します。あと、読後にわかったんですが、現代もトルコ大使やトルコ航空関係者だけ実名なんですね。(日本の大使は別名)
次に、史実なのかどうかわからないコトが注釈なしに書かれている。実名で出ているトルコ大使は本当に小説の通りに行動されて、あのセリフをおっしゃったのか。JAL(小説内では太平洋航空)は本当に安全保障がどうこうなんてコトを言って事実上拒否したのか。どこまで著者は取材で掴んでいたのか、ちょっとモヤモヤします。
最後にストーリーテリング。何だか登場人物全部が目標に向かって真っ直ぐな感じがあって、そこ一捻り入らなかったのかなぁとか。せっかくフィクションなら、日本のことが嫌いなトルコ人や、トルコのことが嫌いな日本人を登場人物に入れて改心に至るシーンなんかあっても良かったのに。

と、細かいコトを言い出すとキリは無いのですが、読んでおくべき一冊です。終章で平成になってからのエピソードを1つ入れているのも◎。

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2019年08月09日

Posted by ブクログ

トルコと日本の友好の絆を描いた実話。
イラン・イラク戦争でイランのテヘランに住む日本人が国外退去の緊急避難の際にトルコが自国民より優先して日本人に救援機を手配した。その理由は明治時代にエルトゥルール号の紀伊半島沖での遭難救援に貢献した日本への恩返しであった。
その当時の事件を臨場感をもたせて描かれている。

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2018年02月25日

Posted by ブクログ

泣けました。イラン国民が100年前の恩に報いるため、戦火の真っただ中、日本人救出の為にイランへ飛行機を飛ばすことを決断する、感動物語である。だとすると一方、戦後70年経ても恨みを忘れない隣国にも多少共感できる。

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2017年06月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

トルコが親日国というのは以前から聞いていたのですが、その所以がなんなのかは全く知りませんでした。なので、本作を読んでその理由に納得。由来を知ることができたのは良かったと思います。

加えて湾岸戦争時に日本人がイラクから出国する際、はるか昔に同国の人が日本人に助けられたことを恩義に感じていたトルコ人が、その手助けをしてくれたということに驚嘆。

国が違っても、育った環境が違っても「恩を返す」(あるいは「恩を送る」)ことを知っている人たちの姿に感動させられました。

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2017年01月01日

Posted by ブクログ

エルトゥールル号の話は知っていたけど、当時の状況が丁寧に描写されていて、良かった。トルコと日本の友好関係をどれだけの日本人が知っているんだろうか。語り継いでいかなければならない物語だと思った。

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2016年05月12日

Posted by ブクログ

エルトゥールル号の奇蹟、トルコの恩返しの物語。

明治の難破船の乗組員を救った村民の救命活動と日本政府の支援の手厚さ。まさか、日露戦争の黒海艦隊の話まで繋がるとは、知らなかっただけに、驚きでした。

その100年後、戦争突入直前のイランに日本人を助ける為の飛行機を飛ばしてくれていた史実。

あの危機的状況の中、200名以上の邦人を救う決断を下してくれたことに、トルコ政府とトルコ人に、心から感謝したい気持ちでいっぱいになりました。正直、涙腺が刺激されました。

当時の日本への恩を語り継いできたトルコ人々。

もちろん、トルコの大震災時に、仮設住宅の提供などで、さらなる支援をした日本ですが、両国の関係について、語り継いでいないことに、大きな差を感じました。

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2016年03月24日

Posted by ブクログ

史実に基づく物語。
エルトゥールル号事件とトルコ航空による邦人救出について、初めて知った時には衝撃を受けた。
もし自分がその場に居合わせたとして、彼らと同じように見ず知らずの他人を助けることができるだろうか?
自分が受けたわけでもない、先人が受けた恩を、自分の命が危険に曝されるかもしれない状況下で、恩返ししようだなんて考えられるだろうか?
人と人との繋がりが希薄になってしまった現代にこそ、多くの人に知ってもらいたい出来事。
トルコと日本が、これからも良い関係を築いていけることを切に願う。

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2015年12月16日

Posted by ブクログ

新興国として紹介される機会が増えてきたトルコ。その時に「エルトゥールル号遭難事件」のことが必ずと言っていいほど取り上げられる。
その詳細を知るのにいい本であった。

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2015年09月14日

Posted by ブクログ

久しぶりに電車の中で本を読んで涙を流してしまいました。トルコと日本の友好がより深まるきっかけとなった「エルトゥールル号遭難事件」。私たち日本人はほとんどの人は知らないが、トルコの人たちの間では長い間語り継がれていた。いつか日本に恩返しを、と。イランイラク戦争の時、テヘランから退去する日本人にはイラン退去する飛行機がなかった。トルコ政府は今こそ日本に恩返しをするとき、と危険を顧みず、飛行機を手配してくれた。しかも日本人と同じく帰国せねばならないトルコ人達も、「飛行機は日本人のために」と自分たちは車で国境へ向かった。トルコの人たちは100年も前の事に恩義を感じていたのだ。しかもほとんどのトルコの人たちが同じ意思を持っていた。明治時代の日本の人たちの純粋な人助けの心が今もトルコの人たちに響いていたのだ。そんな事実を私は知らなかった。朝日新聞の記事でさえ、トルコが救援機の飛ばしたのは,日本がODA等トルコに資金援助しているからだろう、と的外れな事を書いていた。そのようなことのないよう日本でもこのようなことは広く教育の現場でも語り継がれるべき事なのでではないだろうか?
安保法制が論議される昨今、国と国の友好を築く術は本来このような形であるべきなのではないかと思う。

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2015年06月07日

Posted by ブクログ

話には聞いたことあるけど、詳しくは知らなかった事件。
100年を超えた恩返しの物語に何度もじわっときた。
こういう事って、今の世の中だからこそ、伝えていかなくちゃいけないね。

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2015年05月14日

Posted by ブクログ

友人から借りた本シリーズ

前半は集中して読めなかったので、いまいちだっただけれど、

後半はガッと読んだせいか、おもしろかった

知らなかったトルコと日本のつながりが(現実でも)勉強になった

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2025年03月18日

Posted by ブクログ

僕は串本の人たちのように見ず知らずの外国人を救う事が出来るだろうか。逆にトルコの人たちのように受けた恩を100年も忘れずにいられるだろうか。忘れるどころか命がけで恩を返す真似なんか出来るだろうか。

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2015年12月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ

残念ながら、わが国はあまりに虚構の上に成り立つ平和に慣れ過ぎてしまっており、有事がないという根拠のない神話を前提に、政治、マスコミ、国民が有事法制を実効性のないものにしたり、形骸化させることに成功している。

そのひとつの表れが、1985年に発生したイラン・イラク戦争中に発生した、邦人退去時の混乱。
フセイン大統領が48時間以内の航空機無差別攻撃を宣告、日本政府が様々な制約や権利の乱用により救援機を出せない中、イランに取り残された200名以上の日本人救出に動いた国があった。
自国航空機の乗員を危険に晒し、かつ、同じくイランからの救出を願う自国民に優先させ、特別機を出し、日本国民を出国させた。
その国こそ、かつてはオスマントルコとして、ヨーロッパを席巻した国、トルコ共和国。

オスマン帝国は、明治23年日本への使節団として軍艦エルトゥール号をを派遣した。大任を果たしたエ号は帰路に就いたが、和歌山県紀伊大島で台風に遇い遭難。
大時化の中繰り広げられた島民の決死の救援活動の結果、多くの乗組員の命を救い、また明治天皇はじめ多くの援助のもと、日本の軍艦を持ってその生存者を母国に送り届けた。
その記憶は、トルコ国民の中で語り継がれ、あるべき国の外交の姿として繰り返し教育され、そして忘れられなかった。
だからこそ、わが国政府が、懸命にではあるが結果手をこまねいているしかできなかった邦人の緊急脱出の場面において、最大限の援助を差し向けてくれたのであった。

本書は、それらあまり日本では記憶されていない二つの事件を時空を超えて結びつけており、緊迫した状況が続く展開は小説としても充分に面白いが、さらにその事件が事実に忠実に描かれていると思うと、これらの記憶は風化させてはいけないと思う。

有事はある。
原発政策に反発するときにそう考える人が、外交政策において有事が無いという根拠のない砂上の楼閣の上に築かれた平和幻想の上に、自らの持っている力の手足を縛る意見を声高に言い募るのは、滑稽であり哀れだ。しかも、危険だ。

現実世界では、今日もペルシャ湾に多くの船舶が入り、日本への石油、ガス輸送等原料輸送に尽力している。常に他国の顔色をうかがいながら。海賊が横行する海域でも、日本船ができることは、丸腰でドアを閉ざして突っ走るのみ。
そもそも、なぜ日本国が在留邦人を見捨てなければならなかったのか、そんなことも考えた。

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2015年11月10日

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