あらすじ
この世はすべて幻影? 震災後の生と死を鋭く問う、白石一文の問題作!
酒造メーカーに勤める熊沢武夫。彼が東京で買ったネーム入りのコートが、故郷・長崎で発見された。だが武夫の部屋のクローゼットには新品のコートがかかったまま――。なぜ、まったく同じコートがこの世に二つ存在するのか? 謎を追いかける武夫の前に、ある女性の存在が浮かび上がる。3・11後の世界を舞台に「生きること」の実相を描く。
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Posted by ブクログ
久しぶりの白石作品。
難しかったー。時間の概念というか、哲学的で考えながら読まないとついていけない。
でも、人はいずれ死んでいくとか、過去の光を見て音を聞いているわけだから自分の存在も過去であるとか、ああなるほど・・・とも思った。
所々に現れる、心に残る描写はやっぱり白石作品でさすがだな~と思った。
しかし、武夫のコートやるり子のケータイの謎がのちのち解けるのかしらと思っていたら、特に何もなかった・・・。謎というか、本人たちで処理されたという結末だった。そこを待っていただけに、ちょっとだけ物足りなかった。
Posted by ブクログ
・バーバリーのコートが故郷のバス停でなぜか発見されるところから始まる話。
・過去にも、どうも1回読んでいた記憶があるが、内容が曖昧だった。
・今回も歯痛があったので、しっかり集中して読めず、内容がイマイチ頭に入ってこなかった。
・2012年1月の発刊。主人公の内省がふんだんに作中に盛り込まれるタイプの作品。
・文庫解説の榎本正樹さんの文章がよかった。
・再読度:中。
Posted by ブクログ
(2013年5月に書いた感想です)
この頃の白石一文さんは、震災や原発事故、火山の噴火などに絡め、この世(いのち)の無常さを書くことが多いのかな?
この物語もそんな感じ。
あくせく生きても、結局100年後にはみんな死んでるし、大地震みたいな自分ではどうしようもないことで、あっさり死んでしまうことだってある。
生に執着してもむなしいものだ…。
この物語では特に、「時間」について特殊なとらえ方をしている。
時間(過去・現在・未来)なんて、人間が作り出した幻想みたいなもので、現在の自分以外のモノはしょせんイリュージョン。
そんなことを考える主人公は、あるとき存在するはずのないものを受け取る。
それは未来の自分からのメッセージ?SDカードのデータを分析してみると、どう考えても、未来の出来事を示唆している…。
同じとき、同じような体験をしている女性がいて、二人の過去と現在、未来が最後に交差する。
とってもよくできた、不思議な小説。
未来の自分からメッセージがとどく、というと、SF小説みたいだけど、あくまでいつもながらの白石一文ワールドは崩さず、不思議な出来事なんだけど現実として受け入れ、「そんなこともあるかも」と思わせられちゃうところがすごい。
けっこう「時間」のとらえ方が理屈っぽく、時系列的にも難しいので、あんまり真剣に読むと疲れるけど、深く考えずに「そんなものかも」と思いながら読んでいいかも。
表紙に白い犬がえがかれているけど、物語中にちょこっと出てくる犬が鍵です。