あらすじ
海岸沿いのバス停に降り立ったのは、老夫婦だった。日本画の大家・藤三と長年連れそう妻ハルは死に行く旅に出た。灰谷健次郎が描ききった明るくさわやかな「老いの文学」の最先端。
※本書は、2001年12月に理論社から刊行された単行本『風の耳朶』を改題し、文庫化したものが底本です。
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灰谷健次郎のことばは、これ以上ないというほどに噛み砕かれていながら、傷ひとつない珠のようにつるんとしていて、体の隙間という隙間に染み込んでくるようだ。そしてこの作品は、あまりに凄まじい。凄まじく鋭くあってなお、ぬくい。こんな小説があったものか、と、読み終えてまだ、思いにやり場がない。惑う。出会えてよかったと思える一冊が、また増えた。
Posted by ブクログ
老いと死の優しい物語。
妻を「ハルちゃん」なんて呼ぶ老齢の画家。
80年来の友人とその孫。
そうした人々が登場して、
物語をつくる。
終わりがあるから輝くものがあるのだと私は思う。
終わりが人を追い詰めることもあれば、
終わりが大きなエネルギーをくれることもある。
最後数ページがとてもよかった。
そしてそして、
巻末の対談(灰谷健次郎×樹木希林)!
これもとてもよかった!!
『兎の目』や『太陽の子』とはなんだか違うな、
と思っていた違和感がスッキリした!
この小説で使われている言葉は、標準語なんです。
いつもは関西訛りのある言葉なのに。
やっぱり言葉のちがいでずいぶん印象が変わるもの。
私は東京生まれの東京育ちだから、
デフォルトではあまり他人とぐっと近寄らないような
東京の言葉、いわゆる標準語には違和感ない。
でも、確かにそれぞれの味があるんだろうね。
灰谷さんが
「関西の言葉のいいところは、情感をスーッと伝えるところ」
と書いていて、とても納得した。
Posted by ブクログ
〜「むずかしいものですね」「むずかしい。人は試行錯誤してこなければわからぬという厄介さを抱えておる。だから人生派といういい方も出てくる」〜
ほんとうに…ほんとうに…