あらすじ
日本国存亡の危機に真の英雄現わる! かつてなき国難に立ち向かった実在の貴族の闘い! ――時は平安中期、朝廷きっての貴公子でありながら、「さがな者」(荒くれ者)と呼ばれた藤原隆家は、花山法皇や藤原道長らとの「闘乱」(喧嘩)に明け暮れる日々を送っていた。その頃、陰陽師・安倍晴明は彼にこう告げた。「あなた様が勝たねば、この国は亡びます」。道長との政争に破れ、自ら望んで任官した九州・大宰府の地で、隆家は、海を越えて壱岐・対馬を蹂躙し、博多への上陸を目論む異民族「刀伊」の襲来を迎え撃つ! 清少納言、紫式部らとも交流し、京の雅の世界にも通じつつ、かつてなき未曾有の国難に立ち向かった実在の貴族の奮闘を、豊かな想像力をからめ織り上げた、雄渾にして絢爛たる平安戦記エンターテインメント!
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Posted by ブクログ
この雅な平安文学サロンの時代を舞台にして、戦の物語が書けるとはやはり葉室麟さんは素晴らしい作家ですね。
中宮定子から始まったともいえる煌びやかな王朝文化。彼女の弟であった伊周と隆家はそれに奢り、没落へ。
そして道長が政の頂点に立ったと思われたのだが、密かに日本は契丹国の民に狙われていた。
ひたすら己の地位を考えて動く道長と、安倍晴明にあなたが動かなくては国が亡ぶと言われ生きてきた隆家。
日本は島国で海外からの侵略は第二次世界大戦の時だけ。ですが、この前の白村江の戦いや元寇との戦いも経験しています。
侵略されなかったのは運がよかっただけ、そう考えると、狭い国の中の事だけを考えるのはなんて愚かなんだろうと思わせてくれる一冊でした。
特にグローバルな現代では自国民もそうですが、難民や移民ということも考えなくてはならない。だって子供生まれない国だから。
その辺りを政治家にこの本を読ませて、ちっぽけな権力よりも大きな国益を考えてほしいと思ったことは秘密です(笑)
Posted by ブクログ
今年の大河ドラマ『光る君』で、刀伊入寇が描かれると知って読んだ。
前半は花山院との因縁や、中関白家の様子が描かれていた。「なぜ花山院は藤原家に恨みを抱いているのか」「あれほど栄華を極めていた中関白家はなぜ衰退したのか」の原因をふまえながら話が展開したので、分かりやすいと同時に読んでて面白かった。
それを踏まえた上での刀伊との戦いは、外敵からの侵略を防ぐ戦いであるのと同時に、隆家が背負った因果に決着をつけるものであったので、伏線が次々と回収されていく展開に「おおっ」と感嘆した。
Posted by ブクログ
かなり戦シーンの激しい作だが、一方で主人公の一途な想い、何のために戦うのか、が作中に溢れていて、好きな人は好きだろうなぁと思わせる作品。
楽しめました。
自分の子と、刃を交えるってのは、男のロマンなんだろうか?
Posted by ブクログ
大陸の人が日本に攻め込んだという話では元寇が有名。が、それより200年ほど前の平安時代に壱岐・対馬・博多湾に攻め込んだ刀伊という集団がいる。大陸北方にいる女真族がルーツといわれる。その集団を撃退したのが貴族の藤原隆家。名門貴族の出ながら相当暴れ者だったようだ。刀伊というのは昔うっすら聞いたことがあったが、こういう事件だったのかとあらましがわかる。
Posted by ブクログ
出版時の帯が「戦う光源氏」だったんだとか。ヒドい煽り文句だなぁと、これは余談。
安部晴明が出てきて、正体不明の武器を使う集団が出てきて、「俺はもっと強い敵と戦いたい」という主人公が出てきたら・・・夢枕獏の小説と勘違いしてしまうやん。まぁ濡れ場は昭和のジュブナイルなみにサラっとしてるけど。
実は俺、平安貴族文化、特に道長・頼通時代の円熟したあたりが肌に合わない。藤原道長、紫式部が狂言回しってのも嬉しいなぁ。「この世をばわが世とぞ思ふ望月の・・・」って歌が大嫌いで、源氏物語もなんだかピロートークの寄せ集めみたいで好きになれない俺には、この2つをネタにしてくれたものオモロかった。
前半は葉室麟の伝奇小説、後半は葉室麟の水軍合戦小説。どっちも異色で魅力的だけど、2部に分けてしまったことで少々ボリューム不足で食い足りなさを覚えたのも事実。それぞれで1冊ずつでも良かったんじゃないかなぁ。