【感想・ネタバレ】なぜ絵版師に頼まなかったのかのレビュー

あらすじ

葛城冬馬、13歳。明治元年生まれの髷頭の少年は、東京大學医学部教授・ベルツ宅の給仕として働くことになった。古式ゆかしき日本と日本酒をこよなく愛する教授は、比類無き名探偵でもあった。米国人水夫殺害事件、活き人形が歩き出す怪事……数々の難事件を、冬馬の調査をもとに鮮やかに解決してゆく。史実を絶妙に織り交ぜながら綴る、傑作ミステリー!

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Posted by ブクログ

ネタバレ

〇 概要
 明治政府に招かれた雇われ外国人の一人,エルウィン・フォン・ベルツのもとで給仕として働き始めた葛城冬馬の成長と,冬馬とベルツが遭遇した事件が描かれた短編ミステリ。

〇 総合評価 ★★★☆☆
 小説巧者の北森鴻らしく,5つの短編のそれぞれが,史実と虚構を織り交ぜ,読み応えのある作品になっている。ミステリとしては,それほど完成度が高くないが,ベルツを始めとしたお抱え外国人たちは個性的。各作品で名前を変える市川歌之丞も非常に魅力的なキャラクターとして描かれている。主人公の葛城冬馬も十分魅力的。なにより,史実がうまく虚構に織り交ぜられており,ある程度の日本史の知識があれば,聞いたことがある歴史的事実,偉人(ビゴー,フェノロサ,岩倉具視,井上馨など)が出ており,これも結構楽しい。最後の終わり方が唐突なのが残念。葛城冬馬が主人公の描かれていない話があるのかもしれない。全体を通じた趣向が用意されていたのかもしれない。傑作というほどの作品ではないが,北森鴻らしい安定した作品。

〇 なぜ絵版師に頼まなかったのか
 ベルツと冬馬の出会いとなる作品。ここで,シリーズを通じ,名前と職業を変えながら出てくる市川歌之丞とも出会うことになる。「なぜ絵版師に頼まなかったのか」という言葉を残して,殺人をし,自殺した水夫。その真相を探る。真相は,外国人に復讐をするために,水夫が一緒に写真を撮った人物が「コレラ」であるとウソをついて,そのウソが発端となって,恐怖を感じ,殺人と自殺をしたというもの。不平等条約の存在が背後にある。

〇 九杯目は多すぎる
 求婚広告に秘められた謎がテーマとなる作品。お雇い外国人のフェノロサが登場する。市川歌之丞は市川扇翁という名で,古美術商として登場している。真相は,海外に,日本の「地図」を運び出すために,求婚広告は利用されていた。しかし,その地図は偽の地図だった。フェノロサは,地図が運び出されているという事実だけを見て,日本が近いうちに外国に侵略されると考え,美術品を海外に運び出していたというオチ

〇 人形はなぜ生かされる
 市川扇翁は小山田奇妙斎という名前で登場。れおな堂多弁児という人形作家が作った人形が,町を徘徊するという謎が描かれる。真相は,人形のモデルとなった人間を,人形のように見せかけ徘徊させていたというもの。動機は,れおな堂が自分の子供に見せかけた人形を殺害し,徴兵逃れをしようとしていたというもの。背景には,日本の徴兵制度が変わったことがあった。

〇 紅葉夢
 小山田奇妙斎は鵬凛という住職として登場。お抱え外国人としては,ビゴーが登場する。小梅という芸妓が殺害される。真相は,おたかという芸妓。外務卿の井上馨の結核の薬を毒にすり替えておき,小梅に飲ませたという真相。井上馨の部屋に毒があったことが広まるのを恐れた紅葉館のマダムが死体の場所を変えたことにより,おたかにはアリバイができたというもの。ビゴーが犯行現場を見事な絵で再現したことで真相が分かった。

〇 執事たちの沈黙
 お抱え外国人としてはスクリバが登場。鵬凛は,仮名垣魯文という名で登場し,作中で葛城頓馬と名を変える。東京大学内で火災が発生し,謎の死体が見つかる。洋装に下駄をはいていたこの死体の正体は誰かという謎。真相は死体がどこかに忍び込もうとしていたと見せかけたかったというもの。東大に遺棄したのは正確に解剖してもらうため。謎の死体は,森有礼の家の執事であり,密偵だった男で,正体がバレ、殺害されていたのだ。物語の最後は,葛城頓馬が語る。その口調は,葛城冬馬が死んでしまったかのような口調であった。

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2016年11月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

明治時代を舞台にした、ちょっとギャグっぽい感じの話。外国の学者さんたちがたくさん出てきて、こういう人たちのおかげで日本の発展があったんだと思う。そして葛城冬馬のように優秀な人たちがたくさんいたんだろうなぁ。昔の人の方が今よりずっと賢く見えるのはなぜか。連作短編集。

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2011年12月17日

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