あらすじ
日本の文化史において「呪い」とは何だったのか。それは現代に生きる私たちの心性にいかに継承され、どのように投影されているのか――。呪いを生み出す人間の「心性」に迫る、もう一つの日本精神史。
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Posted by ブクログ
日本の宗教はシャーマニズムに分類される、という言説をみて、なんだろう?と思い購入。どうも日本の呪い信仰はあまり知られていないようだ。日本の三大宗教は、儒教・仏教・神道。しかし本書を読んでみると、呪い信仰が古代日本から近代まで信じられていたことが分かる。古代に伝来した仏教は、ほとんど呪術の文脈で受け止められていた。邪悪なものが存在する「外部」(=ケガレ)を、より強い呪力で攻撃する「調伏法」や逆にたたえることで鎮める「祀り上げ」によって祓っていた。これらは国家レベルだけでなく民衆にも浸透しており、これらは現代にまで影響していると著者は語る。「ケガレ」を祓う儀礼の特徴は、いかにして目に見えない「ケガレ」を人びとの目に見える(かのように思わせる)か、にある。現代では「呪い」そのものは消失したが、人間を互いに規制する倫理コードとして残っている、と述べる。
軍の命令によって日本のほとんどの寺院や大社で「鬼畜米英」に対する調伏が行われていたそうだ。そう考えると、戦後のアメリカ万歳は一種の「祀り上げ」に対応するのではないか、と思える。もっと突っ込むと面白い事実が浮かび上がりそう。