あらすじ
昭和20年9月17日。敗戦直後に日本を襲った枕崎台風は、死者不明者3000人超の被害をもたらしたが、そのうち2000人強は広島県だった――。なぜ、広島で被害が膨らんだのか。原爆によって通信も組織も壊滅した状況下、自らも放射線障害に苦しみながら、観測と調査を続けた広島気象台台員たちの闘いを描いた傑作ノンフィクション。「(自分の著作の中で)自分自身で一番好きな作品はどれかと尋ねられれば、迷うことなく『空白の天気図』を挙げるだろう」(柳田邦男)
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Posted by ブクログ
爆心地から離れていたため全壊は免れたものの、台員たちはほとんどが被爆。悲惨な環境の中でも、「欠測」を出さないために、必死で観測を続ける姿勢が凄まじいプロ根性を感じさせる。巻末の後書きで、実に淡々と、一部では惰性と呼べる部分もあったようなことも記されていて、では、人間が死ぬまで食べることと排泄をすることをやめられないのと同じくらい、観測が生きることとなっていた人たちなのだろうなと感じた。
そんな必死の観測にもかかわらず、災害によって情報の伝達が遮断され、原爆被災のあとを襲った巨大台風の警報を市民に呼びかけることができず、多くの死傷者を出してしまう。
データの収集と、何よりもその情報を「活かす」ことができなければ、災害は繰り返すばかりであることを教えられる。
戦後の混乱の中で、原爆被害と枕崎台風の被害についてのレポートをまとめ、また、『黒い雨』に関しては広い地域にわたって、足で聞き取りをしていった労も大変なものだったと思う。
この本は、東日本大震災のあとに、再発行されたもの。
こと「核」に関しては情報が隠匿され、被害が少なく発表される様は記憶に新しい。
最近は新たな報道も聞かれないけれど、早速風化してしまったのでしょうか?