あらすじ
実に、日本国憲法とは、一瞬の奇蹟であった。それは無邪気なまでに理想社会の具現を目指したアメリカ人と、敗戦からようやく立ち上がり二度と戦争を起こすまいと固く決意した日本人との、奇蹟の合作というべきものだったのだ。しかし今、日本国憲法、特に九条は次第にその輝きを奪われつつあるように見える。この奇蹟をいかにして遺すべきか、いかにして次世代に伝えていくべきか。お笑い芸人の意地にかけて、芸の中でそれを表現しようとする太田と、その方法論を歴史から引き出そうとする中沢の、稀に見る熱い対論。宮沢賢治を手がかりに交わされた二人の議論の行き着く先は……。【目次】対談のまえに 中沢新一/第一章 宮沢賢治と日本国憲法―その矛盾をはらんだ平和思想/第二章 奇跡の日本国憲法―日米合作の背景に息づく平和思想/幕間 桜の冒険 太田 光/第三章 戦争を発動させないための文化―お笑いは世界を救えるか/第四章 憲法九条を世界遺産に―九条は平和学の最高のパラノイアだ/濃密な時間のあとで 中沢新一
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Posted by ブクログ
朝日新聞で紹介されていたのと、爆笑問題の太田光と「アースダイバー」を書いた中沢新一の対談というのが面白そうで読んでみました。
私は珍しい組み合わせだな~とおもったけど、この二人はもともとメル友だったと書いてありました。
内容は、対談に初めと終わりに中沢新一の文章、中程に太田光の文章が入っていました。
九条を中心に憲法改正問題が出てきていますが、タイトルどおり九条についてあれこれを話しています。非常にいろいろな方面の話がひきあいに出されています。対談のためか、引き合いに出されても「○○の××という部分が△△だよね」といったくらいにしか触れられていないので、その○○を知らないと何を言っているか分からない部分もあるようです。幸いにして、私の場合は8~9割は分かったので議論についていけたのですが、母には、分からないものばかりだったようで、「何を言っているのかさっぱり」という感想でした。
その上で、この本で語られているのは、九条(と日本国憲法)の実務的な成り立ちや方法論ではなく、もっと根元にあるだろう思想の部分だと感じました。根元をつきつめないと、表層だけの議論になってしまうということなのですが。では、実際どうなの?ということを考える人には、理想論もしくは精神論だけ語っているように見えてしまうかもしれません。
でも、やっぱり精神論も必要だと思います。…というか、私の場合、憲法って実務的な法律というよりも(いや、法律なんですけど)、法律の上にあるスローガンというかモットーみたいなものなのじゃないかと思っているので…。そういうのを憲法と言っていいのか?と言われると、一般的な世界(国)では違うでしょうねと答えるしかないです。この本でもそのように話されています。そして、その一般的でないところが日本国憲法の大切な部分だと。
この本を読んで、「何を言っているんだ」と感じる人もいるだろうし、「そういう考え方もあるのか」と感じる人もいると思います。私は、とりあえず、話に引き合いに出されたもので、まだ読んでいなかったりするもの…とくに、『ゲド戦記』の作者、アーシュラ・K・ル=グゥインの両親が関わった最後の野生のアメリカ原住民についての本「イシ 北米最後の野生インディアン」を読んでみたいと思いました。