あらすじ
洋楽専門誌にビートルズの評論を書くことだけが、社会との繋がりだった鈴木誠。女性など無縁だった男が、美しいモデルに心を奪われた。偶然の積み重なりは、鈴木の車の助手席に、美縞絵里(みしまえり)を座らせる。大胆不敵、超細密。ビートルズの名曲とともに紡がれる、切なく衝撃の物語。空前の純愛小説が、幕を開ける――。高頭佐和子氏の解説も収録。
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これは「究極」の純愛小説!
幼い頃の病気のせいで両親からも誰からも疎んじられて生きてきた鈴木誠。洋楽専門誌に寄稿するビートルズ評論だけが唯一の社会との接点だった。ある日、ヒロイン美縞絵里と出会いそこから物語か始まる。。。
前半は執拗かつ残酷なまでにヒロインへのストーカー行為が描かれ、鈴木誠のサイコパスっぷりに不快感を感じるかも知れません。ところがラストは、まるでレコードのA面B面のように世界が反転します。なぜ各章の題名にビートルズの名曲が使用されているのか?歌詞の意味は本文と関係があるのか?ぜひ読んで確かめていただきたい!
「せつない」の一言では表現できない!今まで感じたことのない新しい感動に包まれて、しばらく呆然とすること必至です。
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Posted by ブクログ
分厚いページ数に、最初は戸惑う。ストーリーもくどく感じ、戸惑う。しかし読み進めていくうち、この世界観に引き込まれました。気づいたら徹夜までしてしまいました!
悲しすぎるよ。こんな結末…。でも、良い意味で読者を裏切ってくれてありがとうございます。
Posted by ブクログ
ストーカーを続ける主人公の物語だったが、単純に「気持ち悪い」と切り捨てることはできなかった。もちろん行為そのものは常軌を逸しているが、その執着の裏にある感情や、ふとした瞬間に見せる人間らしさに、どこか共感してしまう部分があった。相手の一挙手一投足に一喜一憂し、勝手に意味を見出しては振り回される姿には、誰もが一度は経験したような「好き」という気持ちの極端なかたちを見た気がする。だからこそ、どこか羨ましさのようなものすら感じながら読んでしまった。
最後の展開は想定外だった。
Posted by ブクログ
ビートルズという偉大なる存在をここまで物語に昇華させた手腕に脱帽。
ビートルズ好きには見事という構成と各章を含めたタイトルに込められた意味。
主人公・鈴木誠は、容姿に強いコンプレックスを抱え
36年間女性とほとんど関わりのない孤独な人生を送ってきた。
唯一の社会との接点は、洋楽専門誌に寄稿するビートルズの音楽評論。
ある日、雑誌の撮影現場を見学した鈴木は、
美しいモデル・美縞絵里に出会い、
その際起こった不幸な事故をきっかけに彼女に強く惹かれていく。
物語は、警察の事情聴取形式で進行していく。
事件の当事者たちが、次々に当時を供述していく。
そしてその複数の当事者たちの供述によって、
読み手の頭の中で形成されていく鈴木誠の人物像。
狂っているとしか言いようがない鈴木誠という人間に抱く感情、
そして鈴木の対象となった美縞絵里という女性に抱く感情。
その全てがここまでひっくり返されるなんて。
それが読み終わった後の率直な感想であった。
確かに腑に落ちない箇所はいくつかあり、
どことなく消化不良なまま幕を閉じたという印象は拭えないが、
ビートルズ好きには突き刺さる一作ではないだろうか。
Posted by ブクログ
これでは内容はわからないとは思いますが一応ネタバレ扱いで投稿します。
事前情報なく読んで欲しい!途中は不快かもしれない、でも最後まで読んで欲しい!
ただし、ストーカーなどの経験がある人は無理をしないでほしい。結末がどうであれ、記憶に触れるのしんどいと思います。
プラスティックを読んで、次に見かけたのがこちらでした。
構成が似ているのかなーと思いながら、プラスティックが面白かったので楽しみに進めていきました。
読後、印象の振り幅が大きくて驚いています。
読みながらしていた想像よりも、予想よりも、物語の収束云々より感情のギャップが強かったです。
主人公が「わかりすぎてしまっている」が仇になり、それゆえに惹かれる相手との質の差が悲しかったり、哀しみと温もりが残る、不思議な作品でした。
Posted by ブクログ
容姿にハンディキャップを持つ鈴木誠がある日モデルの美縞絵里と接点を持ち、彼女をストーカーしていく、という物語。途中で彼女に近づく男を殺害していく描写は「狂気だ。」とドン引きだったが、それすらもミスリードで「殺人を犯した美縞絵里を助けようとしていた。」ということが真実だったということに驚いた。最初「やけに分厚いなぁ。」と思ったが「鈴木誠だったら彼女のためにここまでするだろう。」という掘り下げをしっかりやるためだったら納得。鈴木誠が最後の辺りで言った「絵里さんがぼくに与えてくれたのは、生きる、ということ、そのものなんです。」という台詞に「容疑者xの献身」の石神を思い出した。
Posted by ブクログ
偶然出会ってしまった、鈴木誠と、美縞絵里。
ビートルズに異様に詳しいフリーライターであった鈴木誠は、いかにして美縞絵里のストーカーとなっていったのか。
ビートルズのアルバム、『ラバーソウル』の曲名とともに進む物語は、まるで心地のよい音楽のように、しかし不協和音を伴いながら、響いていく。
600ページを超える、大作であるのにも関わらず、途中で読み飽きたりしないのは、何故だろう、全く説明することができない。
この物語がいかにして終わるのか、それが気になって仕方がなかったからかもしれない。
この物語は、異形のラブストーリーなのか、それともミステリーなのか。
その答えは、最終章のボーナストラックで明らかになる。
手に取ったら止まることなく最後まで読んで欲しい一冊。
長すぎるからと諦めたら、きっと人生損している。
そう思わされる読後感でした。
Posted by ブクログ
ずっしりとくる。
読んでいる間の長い長い苦しさが最後にもっと苦しくなる。違う意味で。
幸福とは何かを考えさせられた。
本人が望むならばそれはどれだけ周りが反対しようが、犯罪であろうが幸福なのかもしれないと。
それほどに重い幸福感を鈴木誠が感じているのが伝わってきた。
鈴木誠が幼い頃に病を患っておらず不自由がなにもない、満足のいく人生を送ってきたとしたら鈴木誠の最期は違ったのか?
絶対にそうだとは言い切れない。
違う人生を送ってきていたとしても三縞絵里と出会ってしまう限りは変わらない運命を辿っていたような気もする。
他人を全て理解することだけが正解ではないと金山を見て思った。
理解できずとも受け入れること。味方でいることが正解ではないかもしれないが、愛なのかもしれないと。
エゴかもしれないし偽善者と思われるかもしれないが、金山からはもっと重い鈴木誠への愛を感じる。
こんなにも他人に愛を向けれる鈴木誠が羨ましくも思える。
この世の中には悪を作り上げる人間が多すぎる。
自分もそのうちの1人。
愛と愛のぶつかり合い。
バイト中に暇すぎて何か面白い本ないかとパソコンで調べて出てきたから読んでみたが、あの時、バイトをサボって調べた自分をとにかく褒めたい。
もっと本が読みたくなる本だ。
読みながら出てくるビートルズの曲を各々聴いたが、普通に読むより入り込めて良かったのではないかと思う。
英語の歌詞は全くわからないが。
雰囲気でいい。それほどに文章が強烈である。
ビートルズへも尊敬の念が生まれた。
Posted by ブクログ
やたら分厚い本で読むのが億劫だと思ったが、読み終わってみると、いい映画を見た後のような爽快感があった。
いい意味で読者を裏切る感があり、もう一度読んでみたいと思ってしまう。
Posted by ブクログ
さすが、井上夢人作品という感じ。
ネタバレ厳禁作品なのであらすじは、本の裏でも見てください。
「プラスティック」と同様に手記のような形で、進んでいく。
結末は予想できるかもしれないが、私たち読者の読後感は、絶対に予想のつかないところに着地させてくれる。
騙された。と思いたくてミステリを読んでる側面もあるが、形容し難い、こんな気持ちにさせてくれるのかという感想。
今度は、ビートルズを予習してから読みます。
Posted by ブクログ
エスカレートしていくストーカー行為や複数人の聴取から同じ出来事を多重的に描く構成が中盤あたりから冗長に感じたけれど、読後はページの量が鈴木の懊悩を表していたのかなと演出の一部に思えた。作品自体への印象が180度変わる体験はなかなか出来るものではないので、面白かった。
Posted by ブクログ
最後まで読んで、すごく切なくて胸が締め付けられた。
容姿が醜いというだけで、ここまでみんなから避けられ罵倒され、暗い人生を送るなんて。
その中で唯一恋をした女性に利用され最後は死んでしまう。
でも最期の瞬間、愛する女性のために死んでいけることに笑顔になっていた鈴木誠に涙が出そうだった。
人を容姿で判断してはいけないなと改めて思う。
ただひとつひっかかったのが、絵里が富永を殺したときだまして付けてたアイキャッチ?で覗き見してたのに、それにはノータッチで鈴木誠が始末に協力してくれることを絵里が受け入れていることには違和感を感じた。
Posted by ブクログ
分厚い本を若干の苦痛を感じながら読み続けて、途中読むのをやめてしまおうかと思うぐらいだったけど最後まで読んで良かった。
苦痛や嫌悪感を感じながら読むのが正解なんだと思う
Posted by ブクログ
読後に切ない気持ちになりました。
登場人物それぞれの証言で構成されているのが特徴的でした。
鈴木さんと金山さんの絆が鈴木さんにとって、かけがえのないものである事が判るにつれ、最初に抱く鈴木さんの印象が変わっていきました。
Posted by ブクログ
絵里にイライラしてしまいました。電話の相手が恐らく犯人だと思っていたなら、なぜ早く警察に行かなかったのか。そしてなぜ自宅のカーテンも閉めないのか(これはこの事件に関わらず、防犯対策の基本でしょう)。
まあ、とっとと警察に駆け込んでいたら、物語は始まらなかったんだけど。
でも、富永さんが殺されてしまったことが悔しくて。
岡嶋二人さんのファンだったので、最近井上さんの本を読むようになりました。井上さんの本はこの作品が2作目です。
いつもは通勤時間と職場の昼休みに読んでいるのですが、止まらなくて家でも読みふけっています。さすが井上さんです。本の分厚さに初めは怯みましたが、ミステリーホラー好きの人にはお勧めです。
Posted by ブクログ
醜い風貌の鈴木がモデルの絵里に心を奪われストーカーと化す話。ホウライエソ似の鈴木の言動が怖いし気持ち悪い、どうなるんやろ、と思ってた矢先の衝撃!とりあえず最終章は2回読み返したし、即再読した。もうめちゃくちゃ面白い、びっくりした!
Posted by ブクログ
井上夢人さんは岡嶋二人の「クラインの壺」から2作目。
読む前に「どんでん返しがあるよー」と言われていたので、いろんな可能性を疑いつつも最後まで見抜けなかった。
途中なんども読むのをやめたくなり、ここからどう面白くなってくるん?この単調な流れでは流石に大仕掛けは無理では?と自分を励ましながら読み進めた。
最後まで読んで良かったです。
ただただ。哀しい。
井上さんの文章がすごいのか、ふとした違和感に気付けない自分が鈍いのか、最後のボーナス・トラックがこんなに贅沢なアルバムは早々ないと思う。
久しぶりにビートルズ、聴いてみようかな。
Posted by ブクログ
幼い頃から友だちがいたことはなかった。両親からも顔をそむけられていた。36年間女性にも無縁だった。何度も自殺を試みたーそんな鈴木誠と社会の唯一の繋がりは、洋楽専門誌でのマニアをも唸らせるビートルズ評論だった。その撮影で、鈴木は美しきモデル、美縞絵里と出会う。心が震える、衝撃のサスペンス。
究極の恋愛小説
ずっとストーカーの話しだと思いながら読んでいました。お金に不自由なく何でも手に入れられる主人公はあらゆる手段を使って彼女を見張り自宅にまでカメラや盗聴を仕掛ける最悪の人物。でもラストにこんな結末があるなんて!驚きと切なさで胸がいっぱいになりました。この本おすすめします。
Posted by ブクログ
なんてこった。
『リカ』のようなストーカー物だと思っていた。「被害者や関係者の供述」と「主人公·鈴木誠の目線」が交互に語られる形で物語は進んで行くが、「結末はどうなるんだろう」と、期待と不安が芽生えた矢先の○○。
なんてこった。
完璧に○かれていた!
何度も読み返したくなる作品がある。
また、例えば、クリスティの『アクロイド殺し』のように、2度目の方が面白い作品もある。
『ラバーソウル』は2回読むことを強くお勧めします。
2回目は、まったく別の作品に生まれ変わってしまうだろう。
なんてこった。
初読みだった井上夢人氏。
たったの1作品でワタクシのフェイバリット入り。
なんてこった。
Posted by ブクログ
異常なストーカーに狙われる気持ち悪いお話なんだけど、最後まで読むと捉え方変わってくる。
そこで生きる希望を見つけてしまったんだもんなぁ…切ないなぁ。
Posted by ブクログ
読みながら、これは「オペラ座の怪人」+「ファントム」+「エレファントマン」だな、と思っていたら、なんと「容疑者Xの献身」でもあった。
Posted by ブクログ
主人公鈴木誠による一人称の部分は地の文ではなく、虚偽が多く含まれた手記だったという叙述トリック。挿入される関係者へのインタビューでも、真犯人の絵里や主人公の理解者金山は真相を隠しているため、小説全体のうちほとんど全てが作り話だったということになる。
あえて鈴木誠のストーカー描写を多くし、終盤でのどんでん返しの衝撃を高めようという意図は分かるものの、700ページという分量は長すぎる。また、最後のどんでん返し自体には驚いたが、どうしても『容疑者Xの献身』との類似を考えてしまう。
Posted by ブクログ
病気のために、周りを不快にさせる容姿の主人公。恋人はおろか、友人も今まで1人も持った事がなく孤独に生きてきた。その彼がモデルの女の子に恋をした。その彼の恐るべき行動。でも、途中である人物がとてつもなく嫌な人に思えた所で、なんとなくラストが想像できてしまった。それでも解決編では驚きがたくさんあり、ミステリ、サスペンス、純愛と、様々な楽しみ方ができた。表紙イラストとともに、とても深い余韻が残る。人物造形も良く、特に掴みどころのない金山さんが好き。
Posted by ブクログ
ページ数が多く敬遠してましたが、長期休暇を気に手に取りました。
ボーナストラックの衝撃と読後の切なさが半端ない作品で、東野圭吾さんの「容疑者Xの献身」がよぎりました。
Posted by ブクログ
読み終えて、ラバー・ソウルを聴いている。なぜ曲順に章立てしているのか、最後の展開まで気づかなかった。作者にしてやられた感じ。気持ち悪いなぁと思いながらも、口述証言と心理描写に引き込まれながら読んだ。最後の展開は少し強引だと思ったが、いくつかの謎を残しながらも後味はすっきりしている。
Posted by ブクログ
なんとも言えない読後感。ただただ切ない。
本作は、浅倉秋成さんの『六人の嘘つきな大学生』のインタビュー形式のように、『ノワール・レヴナント』ほどのデブっちょ長編ですが、本の作風や構成を例えているだけですので、感想ではありません。あしからず。
さて概要ですが、本作は、モデル達が集う撮影現場に同行した男性が、ある『事故』によって一人のモデル(女性)との出会いに運命や奇跡を感じる所から始まります。
その後、『事故』から『事件』を誘発し、事件の関係者が事情聴取を受けているような描写で一つ一つが追想されるのですが、私は中盤辺りで妙な違和感を抱きました。
(なぜ、この人はこんなに喋れるのだ?)
そんな違和感は最後の章で明かされるのですが、分かった所でスッキリしなかった。なんとも言えない読後感。ただ、どんな些細なことでも、受け取る人にとって『幸せ』を感じることはあるんですよね。
Posted by ブクログ
読後感がなんとも表現したがい作品でした。
主人公である鈴木誠の心情に寄り添えば寄り添うほど、考えがまとまらなくなり、そんな状態に読み手を陥れるこの作品のレベルの高さに敬服してしまいます。
ミステリーとしての面白さ、問題提起するテーマ、何より読み手を引き込む構成レベルの高さは文句のつけようがなく、途中なかだるみしている感を覚えながらも続きが気になって読み進めたのはこの作品の最たる魅力。
一方で、一部のキャラクターについてはもう少し詰めて作り上げてほしかった思いがあるので、評価は星3つ。
2022年12冊目
Posted by ブクログ
600ページ超の長編で読みやすい作品だったが、先が読めてしまう。ラストはどんでん返しといっても、ちょっと無理があるように思い、あまり共感しなかった。8年前に購入して長い間積ん読状態だった。手放さなかったのは、期待感があったから。もっと早く読んでいたら、もっと楽しめたかもしれない。
ストーカーの描写のみ評価
「おススメの本」と検索した際に、この本があがっていたため読んでみた。おススメする人のコメントに「とにかく愛が深すぎりる」と書かれていたこともあり期待したが、ハズレだった。
異常なストーカー行為の描写だけは評価。ただしストーカー心理はもはや誰もが知っているため、正直「ストーカーするヤツって大概こんな脳内でしょうね」と言う既定路線からの裏切りはなし。
東野圭吾の「容疑者X」と比較するような感想を書いている人を他所で見かけたが、申し訳ないが比較してほしくない。
無償の愛が比較にならないほどこの本は浅い。また最終章で主人公の使用人が供述するシーンは、お涙頂戴を狙っている感が透けて見る上、「絶対に知られてはならない犯罪」がアッサリ語られてしまうのが致命的。
「容疑者X」のような「愛ゆえの犯罪」の真実を語られることによる、「知ることの苦悩」が何もない。よって涙は1ミリも出なかった。