あらすじ
「中華一番! 極」の作者が、江戸時代に華開いた「握り寿司文化」を描く!
時は江戸時代、ファーストフードとして急成長を遂げていた「握り寿司」。その後、醤油漬け、煮きり、酢〆、昆布〆など数々の技法が確立され、江戸時代末期には、ほぼ現在の物に近い形となり、江戸の庶民の間で空前の大ブームを巻き起こしていました。そんな華やかで活気に満ちた江戸前握り寿司の原点を、「中華一番!」の作者・小川悦司がダイナミックに描く時代グルメコミック、感動、大団円の最終巻!!
信じる想いが人とグルメを育てる!
様々な寿司屋がしのぎを削る江戸「寿司屋横丁」。その中でもひと際高い技術と人気を誇るのが「菜の花寿司」の職人、鯛介。蛤吉におりんに精一郎に……。「菜の花寿司」に関わる皆が、それぞれに成長を始める。鯛介も、今まで目をそらし続けてきたおりんとの関係に決着をつけねばならない。自由気ままに寿司を握り続けたい鯛介は、束縛されてしまうことを何よりも恐れているのだが……、おりんが姿を消してしまったことで、自分がいかにおりんを必要としているのか気づくのであった。
江戸の名店「與兵衛寿司」の放蕩息子に再起の道はあるのか――? 天才師匠の陰に隠れ続けた努力の弟子に未来は開けるのか――? そして、鯛介とおりんの関係は――?
信じる想いが人とグルメを育てる胸熱くなる最終第8巻!!
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
小川先生、ごちそうさまでした!!
今まで読んで来た、寿司がメインの漫画の中でも、一番に心と腹が満たされました
日本食の代表格と言ってもいいほど、歴史があり、それでいて、まだまだ、改善の余地が大いにある寿司に懸ける職人たちの情熱や信念には、毎度、胸を打たれ、同時に強烈な空腹感、寿司が食べたいって衝動に襲われました
私ごときから、“殿堂入り”の称号を与えられても嬉しくはないかもしれませんが、受け取っていただければ、ありがたいです
単に、寿司の美味しさを伝えるだけでも、地力の高さが必要だってのに、そこへ重厚で極太な人間ドラマも展開させるんですから、本当に、小川先生の実力は高いんだな、そう、この最終巻を読んで感じました
有体に言いますと、迷いました、感想を書くか
感想を書くとなると、この名作が最終回を迎えてしまった事に向き合わなきゃいけなくなります
散々に悩みましたが、小川先生に対し、漫画読みとしての筋を通すには、その辛さを呑み込んで、真摯に感想を書くべきだ、と結論を出しました
打ち切りではなく、円満に終幕を迎えている(と思いたいです)点も、感想を書く気力になってくれました
どこから目線だ、と言われるかもしれませんが、言わせてください、見事でした、と
料理もまた、人から人への継承、つまり、師匠から弟子への伝授
伝え授けるのは、技術だけでなく、真心
その人間らしさが、この『すしいち!』にも凝縮されている、と私には思えました
小川先生は、この『すしいち!』を鯛介と蛤吉、二人の成長ドラマとして描きたかったのでしょうか?
師匠が弟子を育てるだけでなく、師匠もまた、弟子に指導する事で、自らの限界、殻を破る事もあるのですね
もしかすると、小川先生も近しい経験があるのかもしれません、弟子としても、師匠としても
この『すしいち!』で得た「何か」は、きっと、最新作である『中華一番!極』でも、しっかりと活かされているに違いありません
小川先生の成長を単行本で感じ取るのが、今から楽しみでしょうがないのは、私だけじゃないですね、きっと
この最終巻は、小川先生が集大成を意識しているからなのか、どの回も、今までより質がグッと高まっているように感じました
鯛介と蛤吉、師弟の絆だけでなく、鯛介の永遠のライバルたる龍児の、兄との再会、その絆の復活や、鯛介が自分でも気づかぬ内に抱えていた初恋の痛みから立ち直る様も描かれており、読み応えも食べ応えも凄かったです、はい
その中でも、めでたい席で、超一流の寿司職人らが、寿司の未来を明るく語り合い、研鑽を誓う第四十二話「二人の祝言」はグッと来ました
よし、回転ずしに行こう!!
この台詞を引用に選んだのは、鯛介の魅力、そんな彼のおりんへの真剣な気持ちが、しっかりと感じられたからです。人間っつーか、男はバカなもんで、手元から遠ざかって、初めて、それが自分にとって、特別に大事な存在だって気付くんです。気付けたのならば、つまんないプライドなんぞ投げ捨てて、カッコ悪かろうが、見苦しかろうが、全力で獲り戻したいものですね。完全に失ってしまってから後悔したって、どうにもならないんですから