あらすじ
場所は江戸本所、寿司屋ばかりが軒をつらねる「寿司屋横丁」。その中でひときわ輝きを放ち、連日客がひきもきらずに押し寄せるのが主人公・鯛介が腕をふるう「菜の花寿司」だ。
第3巻は、いよいよ鯛介のライバルが登場!
江戸三鮨にも数えられ、寿司屋横丁の総元締でもある「與兵衛寿司」は、寿司屋横丁に厳しい“掟”を課していた。
抜き打ちの味改め(味審査)に、毎月の高い上納金……。
“掟”のあまりの厳しさに、有望な店さえも、寿司屋横丁から消えてしまうことを心配した鯛介は、“掟”の緩和を求め「與兵衛寿司」へ直談判に行く。
そこで現れたのは、店主・小泉與兵衛の跡継ぎ候補にして、鯛介の永遠のライバル・小泉龍児。
その圧倒的な技術と知識は、横丁の中でも群を抜く。
鯛介の直談判に対して全く譲る気配を見せない龍児。
“掟”によって洗練されてこそ、横丁は発展するという。
それに対し、淘汰されていった店の中にこそ、光るものが隠されていると主張する鯛介。
自らの主張を証明するべく鯛介は、寿司屋横丁の盟主に対して、
寿司勝負を挑むことになるのであった――――…。
鯛介のライバルが初登場する注目の「マグロの行き先」ほか、弟子・蛤吉の苦悩を描いた「コハダの逃避行」を含む、全5編収録!!!
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
やはり、この寿司漫画、一味も二味も違う。『中華一番!』シリーズで、中華料理の魅力を多くの読み手に伝えられた実力がある、小川悦司先生だからこそ、寿司を題材にした、この『すしいち!』も面白く出来るんだろう
鯛介の寿司そのものが美味しそうってのも、この作品の魅力だが、やはり、私は寿司を握る過程、鯛介の手の動きに目が惹かれてしまうな
リアリティがあるって言うのは、少し違うかも知れないが、基礎・基本がしっかりしているからこそ、シンプルな動きに華が出るんだろう
客の悩みを吹っ飛ばす、オリジナル寿司を鯛介が握れるのも、破れる型がしっかりあるからだ。独自性を発揮するには、まず、皆と同じコト、誰でも出来るコトを身に付けねばならないって事か。『食戟のソーマ』(附田祐斗・佐伯俊)を読んでも感じるが、創意工夫ってのは、誰もが思いつかない事を思いつき、なおかつ、それを失敗を恐れずに実行する、正しい勇気があってこそだ
また、舞台を江戸の街にしているからこそ、鯛介の寿司に救われる「客」らの悩みに、読み手も共感でき、自分の問題、気持ちと向き合う事が出来る、と思う
1巻と2巻の感想でも書いたが、やはり、客のリアクションも、『すしいち!』の武器だ。しかし、そのリアクションを活かしているのは、ストーリーだ。魅せ場は、それまでの流れで読み手の心を掴み続けてこそ、威力を発揮できる。料理系の代表作が多く、それだけ、経験を積んできている小川先生だからこそ得られた技術だろう
加えて、『中華一番!』シリーズの人気を支えた、胸が熱くなり、ハラハラする味勝負(バトル)だけでなく、人の情を親身に描いてるからこそ、読み手の心はますます、しっかりと握られる
どの話も食べ応え満載だが、やはり、別格と感じたのは、第十五話「孤高のヒラメ」だ。やはり、“九頭龍”の伝七さん、共感覚持ちなんだろうか? そんな彼と、娘・お絹さんの似た者同士父娘の絆の修復を描いた、この話、小川イズムが全開だ
食べたい、と思ったのは、第十一話「マグロの行く先」で、鯛介が、超絶的な知識と技量があってこそ、個々の好みに合わせてマグロを握る事が出来る龍児を納得させた、「菜の花寿司」のマグロ握りだ
この台詞を引用に選んだのは、道理だ、と感じたので。余分なモノを冷徹に切り捨てていき、美しさを生み出すのも確かな強さだが、人が無駄だと見捨てるモノの中から、最高を見つけ出すのも、それに劣らない強さだ。どちらにしても貫き通すのが大事だ