あらすじ
福島第一原発事故後の2011年12月、政府は冷温停止状態に入ったとの発表を行いましたが、地元の住民の方々の帰宅問題やホットスポット、食べ物の汚染など問題は山積しており、私たちの不安はまだまだ解消されていません。
「内部被ばくは、外部被ばくの600倍危険だ」
「福島の野菜を食べてはいけない」
「西へ逃げろ」……。
原発事故以来、さまざまな「専門家」たちの意見が飛び交い、かえって不安と混乱は増すばかりです。今最も必要とされるのは、正確な情報ではないでしょうか。
本書の著者は、長年にわたって放射線医としてがん患者の治療に携わってきました。被ばくと発がんリスクの問題について語るに最も相応しい人物といえます。さらに事故後、福島で行った調査や、広島・長崎、そしてチェルノブイリ原発事故のデータ分析も踏まえて導いた結論は、大きな説得力をもちます。
2011年、ロシア政府はチェルノブイリ原発事故25年目にあたり、総括報告書を発表しました。そこには住民の避難と健康被害の実態の分析がなされており、今の日本にとって示唆に富む内容です。本書に、その一部を翻訳掲載しています。
原発事故以来、私たちは日常生活においてさまざまな「選択」を迫られてきました。本書が、選択を迫られるようなときに、一人でも多くの方にとって判断材料のひとつとなることを願います。
●主な内容
はじめに
第1章 放射線の真実
第2章 発がんリスクの真実
第3章 広島・長崎の真実
第4章 チェルノブイリの真実
資料:2011年ロシア政府発表『チェルノブイリ・25年目の総括報告』の最終章の訳文を掲載
第5章 放射線の「国際基準」とは
第6章 福島のいま、そしてこれから
第7章 非常時における被ばく対策
第8章 「被ばくと発がん」の疑問・不安に答える
おわりに ――福島を日本一の長寿県に
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Posted by ブクログ
チェック項目12箇所。放射性物質は水銀のような重金属とは異なり、体内に取り込んでも代謝や排泄によって体の外に排出されます、これは重金属との決定的な違いです。カリウム40によって、年間0.2ミリシーベルト程度の内部被ばくが起こります、100年生きると、20ミリシーベルトにも達します、野菜を食べるほど、内部被ばくが増えるわけですが、野菜はがんのリスクを大きく減らすことが知られています。チェルノブイリでは、食品の摂取制限が行われていませんでしたから、セシウムによる内部被ばくも起きてしかりです、しかし、何らかの病変があったかというと、セシウムが原因と考えられる発がんは確認されていません、ヨウ素による小児甲状腺がんがわかったのみで、セシウムによる影響は認められていないのです。そもそも、がんの原因はなんでしょうか、おおざっぱにいいますと、3分の1がタバコ、3分の1がお酒や食事といった「タバコ以外の生活習慣」です、残りの3分の1は「運」といってもいいでしょう、どんなに理想的な生活を送っても、がんを完全に防ぐことはできません、いまの福島での放射線量は、健康に影響のない低いレベルに落ち着いています、今の放射線量のもとで暮らしても、がんは増えないと申しあげます。アルコールそのものに発がん性はありません、しかし、アルコールが分解されてできるアセトアルデヒドに発がん性があります。原爆で100ミリ~200ミリシーベルトの放射線を浴びた集団は、浴びていない集団に比べてがんになるリスクが1.08倍でした、生活習慣によるリスクと比較すると、1日1箱タバコを吸うご主人を持つ奥さんの受動喫煙による発がんリスクや野菜嫌いな人の発がんリスク(野菜を食べる人と比較して1.06倍)より、わずかに高いレベルです(喫煙は1.6倍、毎日3合以上の飲酒も1.6倍)。科学的には100ミリシーベルトより低い被ばくで発がんの増加は確認されていません、たとえリスクがあったとしても、検出できないくらいわずかなものだということです。広島の女性の平均寿命はなぜ日本一か(平成17年)……無料で医療を受けられる効果は絶大です、特に、被ばく量の少ない”入市被爆者”(原爆投下の後に市内に入った被爆者)の場合、充実した医療が効果を生んだ結果、円国平均より長生きになりました。当時、放射線に関する知識は一部の専門家以外は持っていませんでしたから、原爆投下後も、広島・長崎の人たちは放射線が「危ない」「怖い」ものとは考えていませんでした、放射線に怯えながら、不自由な避難先で暮らす、ということがなかったのです。細胞分裂の盛んな子どもでは、遺伝子が放射線の影響を受けやすく、がんができやすいこともあり、小児の甲状腺がんがふえてしまったわけです。セシウムは、カリウムに近い「アルカリ金属」で、体内に取り込まれると、カリウムと同様、全身の細胞にほぼ均等に分布します、外部被ばくとほぼ同様の「全身均等被ばく」になります、1ミリシーベルトの被ばくといったら、人体への影響は一緒です。
Posted by ブクログ
これを読んで納得できなかったら、西日本でも国外でも逃げられた方がよいと思います。
基本的には中川教授が言い続けていることをまとめた本であり、これはというのはないのですが、ICRPの基準値の考え方だったり、どのようなことが問題なのかということであったり、実際どうすべきかということが丁寧に書いてあります。
放射線の被害については不明なところも多く、ICRPの基準があくまで「ほぼ大丈夫だろうという合意の基準」であるというのは留意すべき点だと思います。
また、放射線による発がんリスクの上昇が他の要因と比べてどうなのかという説明もあり、非常に丁寧です。
ICRPやロシアのチェルノブイリに関する報告をうのみにし過ぎという話もありますが、ICRPに関しては前述の通りですし、チェルノブイリに関しては、信じられないなら反論を出してほしいという感じです(本や映画の題名しか引っかからないチェルノブイリハートは信用できません)。
こういう本はきちんと放射線の恐怖を煽る本と並べて置いてほしいです。
3つの書店に行ってようやく見つけたぐらいですから。