あらすじ
【第8回柴田錬三郎賞受賞作】「筑紫の女王」と呼ばれた美しき歌人・柳原白蓮が、年下の恋人、宮崎龍介と駆け落ちした、世に名高い「白蓮事件」。華族と平民という階級を超え、愛を貫いたふたりの、いのちを懸けた恋――。門外不出とされてきた七百余通の恋文を史料に得て、愛に翻弄され、時代に抗いながら、真実に生きようとする、大正の女たちを描き出す伝記小説の傑作。
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Posted by ブクログ
昔見た朝ドラ『花子とアン』を見ていた頃に本当は読みたかったが、なかなか機会がなく読めていなかった。
燁子の記憶の中に東洋英和女学院時代の記憶が頻繁に出てきて、本当に楽しかったのだなと思う反面、愛のない結婚をした彼女の辛さがよく伝わった。
慣れない土地で、女校長になるはずだったのにそもそも学校もなく、知らぬ間に戸籍には沢山の妾の名前があり、親と子ほども歳が違う。そして伝右衛門の子供を授かることは一生ない。想像に過ぎないが本当に苦しかったと思う。自分よりも下に見ていたはずの同性が自分よりも幸せな様子を見た時の描写では、嫉妬の感情がとても上手く描かれていた。
作中では燁子と伝右衛門はすれ違ってばかりたが、お互いに心の底ではどこか相手を憎みきれない愛情があったように思う。そしてそれぞれの愛し方があり、不幸にも全く噛み合わなかった。燁子が駆け落ちした後も、気づいていたような描写があったり、伝右衛門ほどの権力があれば龍介と燁子の仲を引き裂くことも出来たはずなのにそれをしなかった。きっとそれが伝右衛門なりの最後の愛だったのだと思う。
伝記小説ではあるが、これが事実ということに衝撃。実際の燁子さんも写真で見たが、とても綺麗な方だった。
最後に少し燁子の逃避行に対して村岡花子は好意的な意見を寄稿した、との文字を見て嬉しかった。
Posted by ブクログ
前の夫が一番悪いだろこれ…不倫自体を肯定することは難しいが自由に恋ができなかった時代に自分の思うように生きることの大切さを知った。宮崎に出会う前はずっと不穏な空気が漂っていたがその後の数々の言葉が生き生きしだしたのが印象的だった。
Posted by ブクログ
小説家としての林真理子を確立させた一冊。
実物の往復書簡を読み解き、主人公の心の揺れを丁寧に描いていると思う。
姦通罪となれば女性だけが投獄される信じられない時代の話だが、「不倫」というだけで有名人が見ず知らずの人から攻撃される状況は、笑ってしまうほど現在も変わらず。
震災が起きたことで人々の関心が逸れていくというのは皮肉だけれど、現在起きているメディアでの誹謗中傷も、世の中の平和ならではのことなのかもしれない。
夫である龍介が新聞のインタビューに対し「うちにきてからは幸せな人生でした」ときっぱりと言ったとある。
龍介の強さと優しさ。幸せに人生を終えてくれて良かったなと思う。