あらすじ
誰にでも、失いたくない楽園がある。息苦しいほどに幸せな安住の地。しかしだからこそ、それを失う痛みは耐え難いほどに切ない。 誰にでも優しいお人好しのエカ、漫画のキャラや俳優をダーリンと呼ぶマル、男装が似合いそうなオズ、毒舌家でどこか大人びているシバ。花園に生きる女子高生4人が過ごす青春のリアルな一瞬を、四季の移り変わりとともに鮮やかに切り取っていく。壊れやすく繊細な少女たちが、楽園に見るものは――。 『ミミズクと夜の王』 の紅玉いづきが挑む、初の現代小説
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Posted by ブクログ
いつものことだけれども、いづきさんのお話は心が揺り動かされる。
エカちの物語から始まり、シバの物語で終わる彼女たちのお話は、きっといつまでだって苦しく辛く、そしてあたたかく続いていくのだと思う。
エカちの夢を見ていたい気持ちは身が切られるほどに心に染みた。優しくしたいんじゃなくて、自分が優しく在りたい、誰かを許す自分を守りたいだけ。
恋人が欲しいわけじゃない、だけれども誰かを好きになってみたい。簡単に人のことを信じて好きになれる友だちが羨ましくてたまらないエカち。
自分を犠牲にしてまでも愛されている感覚が欲しいくせに、誰にも頼らなくても生きていける友だちがずるくてたまらないマル。
小さなころのトラウマで女になりきることが出来ないくせに、男でいたいわけでもない。まっすぐにやるべきことがある友だちみたいになりたいのに、なれるわけないと諦めているオズ。
自分の好きなことがなくてずっと誰かの言いなりで、そんなふうでありたくは無いのにそれをとったら何も残らないと知っているからそれをやめることすら出来なくて、周りの優しさも愛情もすべてがうとましいシバ。
アイデンティティが確立するかしないかの、あの揺らぎのような時代がたしかに思い出されて、息が詰まった。
やっぱりわたしはいづきさんの描写がとても好きです。
Posted by ブクログ
4人だけの放送部。部室にいる時だけ訪れる感情や想い。居心地がいいだけじゃない。仲がいいだけじゃない。それでも部室の扉を開けてしまう。そこにいつもの顔がいることに安心し嫌悪する。
昨年紅玉いづきと出逢い、紅玉いづきの本を少しずつ読んでいます。その度に心が剥き出しにされ、鋭い爪で引っ掻かれます。ズタズタに引き裂かれ痛みに耐えながら読み進めると、不意に心が温かいもので包まれるのです。
その度に、紅玉いづきの魅力に打ちのめされるのです。なので少しずつ少しずつ読むのです。
偽善的なまでに誰にも優しく接する。寂しさから誰かと繋がっていることを求める。自分じゃない自分になりたい。母親の過干渉に従う自分を嫌悪する。嘘を嘘と知りつつ気付いていないことにする。好きになりたくないのに惹かれる。どうしようもなく嫌な自分と向き合ってくれる友達。
傷つき傷つけられ傷つけてしまう心。救い寄り添い癒し咎めてくれる心。高校3年生の4人の心が、容赦なく切り込んでくる言葉で表わされる。友情なんて言葉じゃ括れない4人の関係。
これぞYA文学の真髄。10代の心を刺激し寄り添ってくれるものなのだろうと、思い知らされるのです。だから大好きなのです。読んで自分の中の奥底にある、10代の心が刺激されるのです。
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女の子によくある、仲良くてもそれぞれが嫉妬や羨望などの歪んだ感情で覆われた人間関係に共感すると共に、そこまで相手に対して感情を抱けるような人間関係を育めた四人に嫉妬してしまう。
四人ともどこか危ない感じの部分があるのに助け合っているような部分が好き。
それぞれが間違えながらも、自分の嫌いな部分と何となく折り合いをつけられるようになる過程が読んでて辛いのに癖になってしまう。
それが成長と言われれば仕方ないが、何となくバッドエンドのようにも思ってしまう。
それにしても、登場人物一人一人に対して全く違う文体を書ける紅玉さんの技術はすごいと思う。
Posted by ブクログ
あとがきにある言葉を借りるなら、「彼女達」の存在は自分にとって、色々な感情や想いが入り交じった結果最も愛して止まない存在なわけで。未熟じゃないけど大人でもない、そんな思春期ならではの魅力に心奪われっぱなしの人間として、こういう作品に巡り会えたことがまず幸せ。
4人の「彼女達」の物語がそれぞれの視点で四季に沿って綴られていくんだけど、一人一人の個性が文体で表現されているところが素敵。1人目の章を読みにくいと感じたのは彼女との人間的な相性が悪かったんだろうし、読み進めながら異性として一番好みだと思ってた子の最終章が一番読みやすかったのもそういう事なんだろう。
メディアワークス文庫から出てはいるけど、これはもう角川文庫の方が似合うんじゃないかな。ラノベでもキャラ文芸でもなく、小説です。
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紅玉さんの作品初読。
面白かった。
もう少しもやっとした表現をされててもおかしくない感情を、こんなにも的確に書いている。
校舎の、制服の、気だるい空気が伝わってくる。
エカもマルも、オズもシバも、どこかで見たことのあるおんなのこたち。もっと近いところにいた。
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もう、かえれない、そのことがすごく心に刺さった。もうもどれない。もう会えない。残酷だ。否応なしに、未来に行かないといけない。それってすごい悲しいしつらい。
けれど、みんな成長して、すこしずつ変わっていって。できるだけ、大丈夫なようになっていく。こんな4人組だったらいいね。
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生々しくも、切ない4人の少女の物語。
そのどれもに、どこか共感を覚え、涙を誘われます。
永遠のように長い時を一緒に過ごしても、それにはいつか終わりが来る。そんな、ガーデン・ロストを経験するのは、誰しもあるからです。
かつて、彼女らのように高校生だった人、そして今高校生である人、それぞれにお勧めしたい、汚さを隠さず書いた綺麗なお話です。
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登場人物とほとんど年齢が同じで、今の自分のなかなか言葉にしにくい気持ちが本当に綺麗に表現されているなって思った。今まで読んだ本の中で、結構上位に入るほどのお気に入りの一冊となって、この本と出会えてよかったっと思っている。
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高校時代、部活を拠り所にしていた私にとってこの楽園には覚えがある。
そしてこの4人の少女たちの中にもそれぞれ私と似た部分があった。
エカのように優しく騙されようとしたし、実行こそしなかったが、マルのように「誰でもいい誰か」を特別な誰かの代わりに求め、オズのように格好良くあろうとし、シバのように閉塞を感じて鬱々とした。
4人の少女たちの物語の中で最後のシバの物語だけが少し浮いているように思える。他の3つは他者との交流の中で話が進んでいく中、シバの物語だけが彼女の内面を中心に進むからだ。しかし、それがまたシバというひとりの少女らしくある。
少女とは痛々しいものだ。
病気とまではいかない、思春期の病的な内面。
この作品はそれを余すことなく切りとっている。
Posted by ブクログ
いつもはぬるま湯で時々冷水や熱水の弾けるような学生時代。子供ではいられず、大人には届かず、小さな世界で笑い悶え苦しむ。話す側から忘れてしまうような会話のなんと愛おしいことか。
あぁ、懐かしい。
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四人の女子高生の春夏秋冬のお話。
女の子の友情大好きです。
痛々しかったあの頃を思い出して胸が苦しくなった。
特にエカとシバはまだ私の中にいる。
マルとは趣味が一緒。
オズが一番共感しづらかったかな。
話の中で皆少しずつ成長していったように、変わらないものなんてない。から、失われたものはもう戻って来ない。
花園に同じ花はもう咲かない。
けどまた別の花が綺麗に咲くのだと思う。
Posted by ブクログ
この作者初読。お互いに憧れや苛立ち、劣等感や優越感を抱きながらそれぞれの距離感で友達してる女子高生四人目線の連作短編集。若い頃は世界が狭くて絶望しがちで、それも半分は絶望のふりって分かってるけど狭いだけに深刻で真剣。そんな青春の特権的な痛さやひたむきさが鋭く書かれていて、眩しかった。作者あとがきで、暗い話、とあった気がするが、個人的には、彼女たちのこれからを感じさせる爽やかな読後感だった。良かった。
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4人の女子高生の物語。
4人の気持ちがどれもこれも共感できる、ちょっと心が痛くなるお話し。
紅玉さんは人のもやっとした気持ちを言葉にするのが上手な方だなと再確認。
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誰にでもそのような時期はあるもんで。
内側にある柔らかいものを刺をびっしり生やして守っている時期。
実際に何を守りたいのかは分からない、けど何かをしなくてはならない。
そのような時期の話。
痛い。
Posted by ブクログ
最初は読むのが少し苦痛だった。よくある女子高生モノでひねりがないという印象だった。エカに共感するのが難しかったからかもしれない。
二章のマルの話が自分に重なりすぎて読み進めるのが辛かった。オズもそう。そこからは物語に読み入ってしまった。
シバも私の友達にいた。一見女子高校生というフィルターがかった非現実世界のように見えて、かなりリアルな物語だった。
やはり紅玉さんの作品にはハズレがないのかもしれない。
そして高良はイケメン。
好きな人に借りたのがこの本でよかったと思った。
Posted by ブクログ
道化師のようになったって、心は凍ったまま。
周りの良い子に合わせても、愛想笑いばかり。
言いたいことを言えずに機嫌を伺っていても、楽しくない。
だから誰もが自分だけの「居場所」を探しているのかもしれない。
心が安らぐ花園を。自分が自分でいられる花園を。
もし花園がなくなったらどうする?って友人に聞いたら…
「だったら探し求めて、作り上げるよ。単純だけど…。でも、なくなってほしくないよね。やっぱり、大切なものだし。」
この答えが返ってきて良かった。
失ったら、探す。作る。
でも願わくは「居場所」が永遠に変わらずに、仲間と居られると信じて。
Posted by ブクログ
高校生のときはどうして高校という舞台が特別なものとして扱われるのかわからなかった。
どこか閉じていて、息を潜めて他人を伺って、何に反抗したいのかわからないまま反抗して、自分を特別に思いたくて、そんな高校という場所が物語の舞台になるほどいい所だと思えなかった。
この本を読んで、高校生じゃない今、やっと高校・高校生の魅力がわかった気がする。
苦しいんだけど、その苦しみが愛しいなと思った。ああ青春だなあという感じ。
なんだかじんわり染み込んでくる物語でした。時間をおいてまた読み返したい。
Posted by ブクログ
好きでも嫌いでも、それを超えた“花園”がそこにはあった。どんな時でも。
想像と全く違いました。
こんなに苦い気持ちの詰まった物語だとは…!
受験が終わってから読み始めて良かった…
もし受験前&卒業前に読んでたら…と思うとかなりゾッとします。
なんだろう。
同姓だからこその感情なのかなぁ。
出てくる4人全員の気持ちとシンクロしました。
なんだか自分を突きつけられてばかりでした。
胸の中がゴロゴロする感じ。
高良って男の人があんなにも絡んでくるとは…
シバの章が一番真っ黒で赤黒くて、重ったるくてしんどかったです。
読み終えた後も自分の中がドロドロしています。
これが友達、なのでしょうか。
これが仲間、なのでしょうか。
“嫌”って感情と“好き”って感情は表裏一体なのでしょうか。
Posted by ブクログ
この作品を初めて読んだのは高校生のとき。
登場人物たちがそれぞれ複雑な感情を抱えていて、どうすればいいかわからなくてもがいてくるしんでいる様子が、高校生の私にはあまりにもリアルに迫ってきすぎて、途中で読むのがつらくなった覚えがある。
今回読み返してみて、登場人物を自分と重ねてみたり、やっぱり理解できないところがあったり。でも目を背けずに読めたところは、自分も少しは大人になったのかなあという感じ。
第4章がいちばん共感できた。ラストの文章がお気に入り。
登場人物みんな、どこか危うさを持っていて、綱渡りしているイメージが浮かんだ。みんな必死にバランスをとって生きていて、ふとした拍子に足を滑らせたりだれかに突き落とされたり、だけどそれだけで終わらなくって、だれかに手を引っ張られ、もういちど這い上がって、また始まる。
危ういけど、人と人とのつながりによって強くなれるのかなーと思った。
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わたしたちはそこにいた。
お人好しのエカ、かわいいマル、演劇部の王子様なオズ、大人びているシバの4人は時に傷つけあい、許しあい、日々を過ごしている。高校3年生の1年を視点を交代しながら描く。
高校生というのはすべてを許された花園にいるようなものだ。この物語の時代では携帯電話が普及していないのも、花園の閉鎖性に輪をかけている。世間の価値観は知っていても、それより自分が生き延びることを優先してよい場所。その人のためにならないと知りながら誰かを甘やかすことも許される。友情の中でももっと濃密な愛情。しかし厳しく断罪することもまた大切な存在への愛情である。4人は自分の犯した罪に向き合い、自分を傷つけながらも、誰かに許される。それを馴れ合いだというなら、その人は花園にいたことがなかったのだろう。花園は最後の子ども時代だ。
意外と内面や悩みは共有していない、でも手を繋いで慰めあえる。そういうところが女子高生をしたことある者としてリアルに感じた。
Posted by ブクログ
女子高生仲良し4人組。
同じ「放送部」に所属してるが、実質稼働2名。
4章から成る。
誰にでも優しくいたい、エカ。
彼氏に理想像を当てはめようとする、マル。
男装が似合うであろう、オズ。
大人びて見える、シバ。
春夏秋冬を巡りながら、二度と戻らない女子高生時代。
その永遠の一時。
未完成な自分をどう受け入れていくか。
閉塞感を持ちながら、自分を保つ。
傷が付かないように、なんとか綱渡り状態の精神状態。
夢見てた自分、壊れていく自分。
その先で、友達として「このまま最後にしたくない」と説に望む彼女達。
切なく揺らぐ物語。
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4人だけの部活で、それぞれの恋愛の形と進路、生き方とか。恋愛の話は文通相手、同級生、年上の幼馴染、同い年幼馴染とかね。
見事に性格の違う子同士で、よく一緒につるめたな〜と思うけど、まあ、高校生同士であればそういう縁もアリでしょう。
Posted by ブクログ
自尊心が高く、優しく、寂しがり屋で不器用な4人の女子高生たちの成長。道徳の教科書に載るような、きれいなおためごかしではない。ぐちゃぐちゃした不安定さが顔を出す。この物語が、必要とする子の手に渡るといい。
Posted by ブクログ
初めの印象として文章の書き方というか、表現方法がうーんって感じでした。何が私に引っかかるのか分かりませんけど。途中休みながら読んだののも事実。
それでも最後まで読めたのは何か気になる、引っかかる事があったからだと思います。
青春物語だからですかね笑
Posted by ブクログ
四人の高校生の物語 切なく苦い青春物語
放送部の部室 逃避のように集まる 何か痛みを抱えた登場人物 壊れやすく繊細な少女たち 危うさと脆さの中にも変わっていく可能性を秘めている 弱さをしって少しだけ強くなっていく……のかもしれない
読み取るのが難しかったけどシバの話が一番好き
《春の繭》誰にでも優しいエカ 優しさの中の偽善 幻想の文通 誰かに嫌われる事が怖い
《チョコレートブラッド》可愛らしいマル 色んな男をとっかえひっかえ 人を好きになるとは?
《echo》男装の似合うナオ 隣人のお兄さん 女ににりきれない自分 変わってしまう事が怖い?
《ガーデン・ロスト》毒舌家のシバ 受験生の苦悩 周りにあたり散らす 嫌われるのが怖い 嫌われる前に自分から嫌ってしまう
Posted by ブクログ
高校生の頃に読みたかったなあ。
もう過ぎてしまったことだから言えるけど、あの頃の悩みってすごく尊いものだったなあ、と。
全力で生きてたな。青春って多分そういうことだ。