【感想・ネタバレ】中国化する日本 増補版 日中「文明の衝突」一千年史のレビュー

あらすじ

若手日本史学者が軽やかなタッチでものした、まったく新しいライヴ感あふれる日本通史が登場! 高校生レベルの知識だけを前提にしながらも、次々と日本史の常識がくつがえされ、「真説」が提示されます。全体を貫くキーワードは「西洋化」でも「近代化」でもなく、「中国化」と「再江戸時代化」。教科書の常識とアカデミズムの行儀よさを突き抜け、いまの社会にも役に立つ「日本史」を再構築する著者の才気が本書には横溢しています。これぞ、右も左も驚愕の「本当に新しい歴史教科書」なのです。宇野常寛氏との特別対談も収録。

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

このページにはネタバレを含むレビューが表示されています

Posted by ブクログ

ネタバレ

 通読一回ではまだよくわからないところも多いが、まず一番にお伝えしたいのは、その視点の新しさ。

 内容は歴史の話です。日本が中国化してゆくというとても議論を呼びそうなタイトルですが、読み進めると筆者の述べることが分かります。加えてこの本の良いところは、この日本を何とかしたいという筆者の思いが感じられるところです。その熱意のようなものと筆者の論の新しさに感動すら覚えました(ただ本文中では非常にシニカルな文体です)。

 まず、日本史の新たな見方について大いに驚嘆。戦国時代とは決してかっこいい時代ではなく飢餓をしのぐために殺し合って食べ物を奪い合っていたという見方。また江戸時代の安定はお上とイエとの相互共存の関係である封建制によって支えられ、さらにこれは相当度に社会主義的であった点。加えてこの江戸時代的な安定は、農家の次男三男などを犠牲にして成り立っており、こうした不満分子が明治維新を起こしたという推測。
このような方は高校ではおよそ教わらない話であり、かといっていわゆるトンデモ話ではなく、論拠もあり納得して読める。

 次に面白かったのは中国化の話。
中国の特徴を宋の時代の政策を引き合いに出し、頂点の支配者の下での厳しい競争社会としており、これが現在進んでいるグローバリズムや新自由主義が出てくる遥かに古くから中国で実行されていると主張する点。ここから中国化と述べているのはいわば市場万能主義、厳しい競争社会を意味しており、政治体制が共産主義になるというわけではありません。

 更にこうした江戸時代的なるもの(封建制・社会主義的)と中国化(苛烈な競争社会)とが明治維新以降の日本近現代史で揺り動いていた点を現代の西暦2000年代の政治状況まで辿って説明していいます。

 右翼とか左翼とか知識人とか、どうにも面倒くさくて胡散臭くて、一般の人のほとんどがシニカルに斜に構え距離を置くものが政治だと私は思います。でも筆者はそうした現状も踏まえて我々が今住む日本をどうにかしたいという思いを持っており、歴史という武器を使って本当にこのままでいいの?或いは、大声をあげている両ウイング(右翼左翼)に、君たちほんとは矛盾してね?と問いかけているように思えます。

 巻末に文庫本用のあとがきと宇野常寛氏との特別対談が掲載されており、より彼の考えていることがわかると思います。また参考文献も詳細に記されており、今後の読書の参考になります。政治好き・歴史好き・小難しいのが好き・日本の将来が心配な人等々には是非お勧めしたい本です。

0
2021年03月29日

Posted by ブクログ

ネタバレ

宗の時代に理想の世界が出来上がっていた。

しかし今の中国には、共産化により儒教を捨て、共産主義も経済の開放によって捨てた。

これで中国化の正当性が理解できる。

0
2016年05月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

タイトルに惹かれて買った人は、あれっ てなる内容。
著者は狙ってつけたタイトルだと認めている。
しかし、副題も全然違うぞ。

本書は日中文明衝突を書いたものではない。
本書の言う「中国化」とはグローバル社会・自由競争・実力主義・格差社会化のことで、これは中国ではすでに宋代に実現されていた。(ヨーロッパは20世紀になっても王制の残る遅れた地域であった)

対する日本は江戸時代の封建的な社会を維持し、1990年頃までその伝で来た。その後ようやくグローバル化すなわち中国化の時代がやってきたのだが、日本人はやっぱり江戸時代回帰志向が強い。終身雇用や家族制度の崩壊した状態でもはや江戸時代方式は無理なのだが……。
日本は議会制民主主義や人権があるからいいと思っている人がほとんどだが、実はみんなその本質を理解しているとは言い難く、ポピュリズムに踊らされてそれらを簡単に手放し、北朝鮮化する危険が大である。

右でも左でもこの本を買いそうな、政治談義好きな人々の怒りを喚起することがいっぱい書いてある。
著者の書きようは、もちろんそういった人々を冷やかし、無知ベースで政治的主張をやめ、もう少し勉強して考えようねという事である。

個人的には
冷やかし口調が大変不快であった。右を揶揄し返す刀で左も斬る というまあ公平な話ではあるけれど、あれは無知これは浅はかという扇情的なところが気になった。
著者は研究者であって、書いてある内容はなるほど嘘はなさそうで、日本の来し方のおさらいと為になる新知識もいくらかあったのだけど、全体に浅い……人の著書を基に構成してあって、深い研究ではありません。歴史や政治が専門ではなく、評論家的な言説である。ジャーナリズム的というのかな。私でも、それは言いすぎだろう……という箇所が多々見受けられました。

しかし、一面的な理解で盛んにせこい政治談義をしてる人にはやっぱり読んでもらいたい本だし、何も知らない若い人が日本の現状(とその歴史の流れ)を手早くつかむためには良い本だと思う。

日本人の自由主義の法治国家の構成員として民度が低すぎる、江戸時代回顧というあたり、人の損が自分の得になるという百姓根性、その他諸々うなずけるところも、情けないながら大変多かった。

0
2021年04月15日

「学術・語学」ランキング