あらすじ
役所の受付で書類の不備を指摘され突然怒鳴り始める。コンビニで立ち読みを注意されて逆ギレし、チェーンソーで脅しをかける――。わずかなことで極端な怒りを爆発させる老人たちの姿から、その背後にある社会や生活意識の激変を探り、人間関係の問題を指摘して、「暴走老人」の新語を世に定着させた話題の書。
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Posted by ブクログ
この言葉、池上彰が石原慎太郎に対して使ってました。いきなりキレる老人、犯罪に走る老人、ゴミ屋敷等の問題を、時間・空間・感情という3つのキーワードで分析しています。
確かにテレビのニュースでも、この年齢で?と首をかしげたくなる犯罪が多いのは事実。決して老人は枯れていないという事でしょうが、徒党を組んだ物はほとんどなく、孤独な犯罪が多いのが哀れを誘います。
Posted by ブクログ
近年、若者の凶悪犯罪の減少とは反対に、65歳以上の高齢者の刑法犯が増えている。(1989→2005で高齢者人口が約2倍のところ約5倍)分別があってしかるべきとされる老人が不可解の行動で周囲と摩擦をおこし、暴力的な行動に走ることがある。筆者は、こうした高齢者のことを「新老人」とよび、時間・空間・感情の観点からその背後にある社会の変化を読み解く。
*時間
情報化社会の進展で、待つ時間を極力排除するようになり「待つことは待たされることになった」。待つことに対する許容の範囲が狭くなり、特に体が時間に追いつかないという焦燥感を抱えた高齢者にとって待たされることは耐え難い。
*空間
川の字文化から個室文化へ。単独世帯では家自体が個室空間となり、家の壁がテリトリーの堺として意識され、敏感になる。個を守る家族という緩衝剤を失って隣家との諍いが直接ぶつかり合う。
*感情
丁寧化していく社会。社会学者アーリー・ラッセル・ホックシールド『管理される心』で述べられた「感情労働」に関する話が興味深い。「体は売っても心は売らない」「笑顔はただ」「またのお越しを心よりお待ち申し上げます」「患者さま」「生徒さま」・・・いかなる状態においても笑顔を絶やさない演技力が評価され、人間の表情があらかじめ「心」とは分離されたテクニックとして捉えられているのだと指摘する。