あらすじ
ここにロボットの残骸がある。『彼女』 の名は、アイリス。正式登録名称:アイリス・レイン・アンヴレラ。ロボット研究者・アンヴレラ博士の元にいた家政婦ロボットであった。主人から家族同然に愛され、不自由なく暮らしていたはずの彼女が、何故このような姿になってしまったのか。これは彼女の精神回路(マインド・サーキット)から取り出したデータを再構築した情報 ── 彼女が見、聴き、感じたことの……そして願っていたことの、全てである。 第17回電撃小説大賞4次選考作。心に響く機械仕掛けの物語を、あなたに。
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Posted by ブクログ
章のタイトルなどで、大体何が起きるのかわかってしまう。
登場するキャラクターが大体どういう役割を持っているのかわかってしまう。
・・・それでも先を読むのをやめられない。
この先、何が待っているのかわかっても先が読みたい。
アイリスが。リリスが。ボルコフが。みんなが一生懸命生きる話。
プロローグで不穏な状況だった事が示されるが、序盤はアイリスとその主人であるアンヴレラ博士との幸福な情景が描かれる事もあり、中盤以降のアイリスを取り巻く環境があまりに辛くて読了を断念してしまいそうになるほどでした。
代用品ではありながら幸せだった頃のアイリス、その耳にロボットに対する社会の扱いや不条理は届いていても、実体験するまで真意に気付くのは誰しも難しく。
中盤、自身を映す鏡には異形のロボット、音も視界も雨の中、命令され逆らえない強制労働。
そんな中で出会うリリスとボルコフ、生きる事の意味について話す3人に、決断の時は迫り…。
途中に挿入されていた各種の描写から、バッドエンドは避けられないと思い読み進めましたが、最後に救いがあったのは幸いでした。
但し、人間ではない物に対する社会的不条理や、確かな人格を持つ個体にも人権の保有を認めていない法令等、アイリスが陥った不条理を再び招かない状況には無く…。
現実世界でも、AIが単なるプログラムでは無く、人格を持ってしまったら、と考えさせられてしまいます。
また中盤の強制労働も、かつて人間が人間に対して行っていた奴隷制度を想起させるもので、価値観の違う時代とは言え、何とも暗澹たる気持ちに…。
Posted by ブクログ
評価:☆3.5
「心に響く機械仕掛けの物語を、あなたに。」
1冊完結もので、ロボットがメインのお話。
と言ってもこの世界でのロボットは感情があって痛覚があって笑ったりもするので人間にしか思えないわけですが。
希望→絶望→希望と話自体は王道そのもので、綺麗に纏まってる。だけどこの作品に関しては王道というよりはありきたりなように感じたかも。
この辺はホントに感覚の問題だから上手くは説明できないんだけど、多分ところどころで疑問があって話やキャラに没入できなかったからそう感じたのかな。
感情は分かるけどロボットに痛覚いるか?とか(脱走のシーンでも激戦になる可能性は十分考えられるんだから先に痛覚OFFにしとけよと思った)、「優しく撫でると目尻から涙のように黒い油がつたった」とか(部品が壊れて出てきた油が涙のように見えたとかなら分かるんだが)、わざわざ順番に1体ずつロボットに命令してローラーに自ら入らせて潰させたりとか(他の複数のロボに廃棄するロボをローラーに放り込むように命令すればいい話)、いくつかのシーンで泣かせてやろうという作者の意思が透けて見えてしまった。
見方の問題だと思うんだけどね。だからこの作品が高評価なのは理解できるけど、自分にはちょっと合わなかったかな・・・。
Posted by ブクログ
大好きだったご主人様に先立たれてしまったメイドロボットが更に運命の変転を受けて、思いを伝え合う絆を噛み締める話。
書評で絶賛されていたもので読んでみたのだけど、
往年のアシモフに傾倒した身には、なぜ人造物にそんなことをやらせるのかという掘り下げが足りなく思えて、そのロボットたちの扱いによる悲劇にまるで浸れなかった。
誤作動でなく、意図して作られた故の悲劇であったりすればまた違うのだろうが、高い金をかけて作ったはずの製品に対してああいう扱いはない。
結局、ロボットということでSF的考証をある程度期待してしまったのだけれど、妖精さんを捕まえて精神回路にしたとでもいうような理屈の通らなさに、勝手にがっかりしてしまった。
性格が決まるのは、量子的な確率に支配される、的な理屈がどこかに据えられていれば納得いったかもしれないのだが、残念、私が望むような理屈は、通らなかった。