あらすじ
誇りと喜びにあふれて首都の神学校に入学したハンスがそこで見いだしたものは、詰めこみ主義の教育と規則ずくめの寄宿舎生活であり、多感で反抗的な友人の放校であった。疲れ果てて父の家に戻った彼は機械工として再び人生を始めようとするが……。重い「車輪の下」にあえなく傷つく少年の魂を描くヘッセの永遠の青春小説。
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Posted by ブクログ
教育とは敷かれたレールの上を歩かせるだけのものなのか。一人の貴重な人間の将来が奪われてしまったことに悲しみを覚えた。
最後の酔っぱらった中での溺死は事故なのか、故意なのか描かれていなかったが私は自ら川に入ったのだと思う。
救われない少年の話
Posted by ブクログ
教育とは何なのかを考えさせられる
良いとされる人生のレールに子供を乗せる親や教師、そして自分の周りの狭い世界の中では成功しそのレールに乗ることを望んでいる子供は自分の運命がわかっていない
何も考えずにレールを進む子供もいれば、多感な時期を過ごす中でそのレールから外れてしまう子供もいる
そして死んでしまったハンス。その死因は語られない。
そのことがむしろ、読み終わった後に、彼の周囲の彼への期待や強制を自分と照らし合わせて内省に向かわせる。
以下、あるサイトからのコピペ
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主人公ハンスは、他の子供たちと同様に自然や動物を愛する素朴な少年。
唯一違うのは、彼は学問に優れた天才であること。
ハンスは父親や学校の先生など周囲の大きな期待を背負い、一心不乱に受験勉強をする。
そして見事、エリート神学校への合格を果たすのだ。
しかし、神学校での規則や価値観に縛られた日々は、ハンスの神経を弱らせる。
彼は神学校を中退して、「脱落者」という不名誉な称号と共に帰省。
かつてエリートだったハンスは、同郷の仲間たちよりも遅れて肉体労働の見習いとなる。
それは肉体的にも精神的にも苦痛なことだった。
物語のラストで、ハンスは死体となって川で見つかるのである。
ハッピーエンドの小説が多い中、今作は主人公が死んで物語は終わりを告げる。
死因は分からない。
死ぬ直前に、ハンスは酩酊していたから、事故で川に落ちたのかもしれないし、もしかすると自殺したのかもしれない。
とにかく主人公の少年が死んで物語は終る。
「車輪の下」は救いのない小説と言われる。
確かに、小説を読み終わった後、陰鬱な気分になるだろう。
しかし、この救いのない作品は、現代人を救ってくれる一冊でもある。
僕達は成功体験からだけ学ぼうとしている。
でも、成功者から学んだとしても、誰もが彼らと同じように成功できるとは限らない。
一方、僕達は失敗体験からも学ぶことができる。
誰もが先人達の失敗を教訓に、人生を正しい方向へと導くことができるのだ。
100年以上前の作品ながらも、「車輪の下」は現代人の必読書である。
だって、誰もがハンスになる可能性があるのだから。
良い学校、良い仕事に就くことだけが、幸せなのだろうか。
周囲の視線や期待、価値観に捉われすぎて、自分らしさを失ってはいないだろうか。
僕達はハンスであり、だからこそハンスのような結末を迎えるのを避けなくてはいけない。
Posted by ブクログ
あまりにも言葉が、文章が、美しく、若者の繊細な感情を表すヘルマン・ヘッセ。自伝的とも言われる物語には、時代を越え国境を越え言語を越え、人々に普遍的な青春時代の脆さ・儚さを彷彿とさせる力がある。
翻訳は1958年の出版なので古めかしい部分もあるが、それも含めて味わい深い作品。
Posted by ブクログ
前半は主人公に感情移入したけれど、故郷に戻ったあとからはあまり感情移入はできなかった。精神の成長を描いているのかと思って読んでいたけれど違うようだ。
主人公は結局お受験エリートでしかなくて、結局人から与えられたものに時たま魅力は感じつつも、単に与えられたものとして物事に取り組む以外何もできなかったように見える。
自分で何かを獲ることが「強気」になれる唯一の方法だと思うが、それが最後までできなかったのを見ると、なにがその段階への成長を遮ったのかなぁと疑問を感じてしまう。
Posted by ブクログ
優秀さ故に大人達から勝手に期待されて勝手に失望されて
勉学と引き換えにせっかく築いたはずの友情は脆くも消え去り鬱状態になったあげく
初恋の純情は弄ばれ
仕事は二日目にして早くも苦痛で
仕事仲間が一週間の楽しみにしているらしい酒盛りもそれほど楽しく感じられない
そりゃ辛いよね…まして若くて繊細な子だもの…
名作はどの時代にも通じることが描かれているから名作なのだと、改めて思った。