あらすじ
地震に遭った翌日、少年は、海の匂いのする、見たこともない町に立っていた。通りかかったオバサンの家で親の迎えを待つ間に体験したのは、少年がこれまでしてみたかったことばかりで……。(「翔る少年」) 「どんな人生にも必ず分岐点となる瞬間が存在するように思う。運命的な避けることのできない『あの日』もあれば、ほんの僅かなタイミングの違いでその後が揺らぐ『あのとき』もあるだろう。そのポイントにかえることができたら。いくことがかなうなら――。 もしも拙作を手にとって読んでくださる方がいるとするならば、ほんの少しでもいい、その方の『あの日』『あのとき』に対する思いに寄り添えたらと願う」――乾ルカ。時空を超えた小さな奇跡と一滴の希望を描く感涙の傑作小説集。第143回直木賞候補作。
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Posted by ブクログ
こちらも職場の方から借りた本。
短編6作が収録されている。
どの作品も「死」があたりに漂い、時空を超えた過去・現在・未来が交差する、せつない物語。
「真夜中の動物園」
→心にしみるいい話だな~と思いながら読んでいると、ラストでこれからが予想できて悲しいことこの上なし。
「翔ける少年」
→もうこれは、涙なしには読めない。実際に起こった災害が示唆されていて、せつない、悲しい。でも温かい。
「あの日にかえりたい」
→私個人的には、あまりピンとこなかったお話。でも、表題。ささる人にはささるだろうな~。
「へび玉」
→何が起こったのか気になって気になって、先へ先へと気が急いでしまうお話。こんなことを背負って生きていくのは辛いだろうな、と気持ちが重くなった。
「did not finish」
→おそらく死へ向かうであろう主人公が、走馬灯のように自分の過去を見ていくお話。現実を見ると悲しいけれど、過去に戻ったとしても同じ道を選ぶだろう姿がまぶしい。
「夜、あるく」
→これが最後にくるお話で良かったな、と思えた。希望を持てるお話。
期待せずに読んだからか、思いのほか良かった。せつない、悲しい、でも心にしみる。そんな短編集だった。