【感想・ネタバレ】モリオのレビュー

あらすじ

映画『かもめ食堂』『めがね』『トイレット』の荻上直子監督、初の小説集! 母の足踏みミシンが大好きだったモリオの憧れは、花柄のスカートをはくこと。でもそんな自分を肯定できない(表題作)。末期癌の猫の面倒を見ているうちに、「僕」は自分に「猫と心を通わせる力」があることに気づく(「エウとシャチョウ」)。コンプレックスに苛まれる者たちが再生していく姿を、優しくユーモラスに描く、透明感に溢れた荻上ワールド。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

足踏みミシンを踏む母の傍らで、じっと聴いていた心地よいリズムとほんのり漂う油の匂い。
私の母もかつて足踏みミシンを使っていたので、私の中の記憶とシンクロする。
母が幼いモリオのために選んだ布は暖かい春の匂いのするような花柄。
亡き母から譲り受けた足踏みミシンで、今度はモリオがスカートを縫う。
「ひだり布地屋」のおばさんと黒猫の三郎さんが選んでくれた花柄の布で。
モリオにとって足踏みミシンを踏んでいる時が唯一の、大好きだった母と向き合える穏やかな至福の時。
人は安らぎの時間が持てれば心地好く生きていけるのかもしれない。
ちょっぴり不思議で、心の奥をきゅっと掴まれる文章がたまらなく好き。

もう一つのお話『エウとシャチョウ』も柔らかい雰囲気がとても好き。
人付き合いは苦手だけれど猫には好かれるエウと、余命三カ月の猫シャチョウとの穏やかに過ぎる時間。
その時が近づくにつれ切なくなるけれど、温かい気持ちにさせてくれる。
「僕もヨーコさんも、君を本気で愛しているよ」
「知ってるよ」

『かもめ食堂』『めがね』『やっぱり猫が好き』を監督した荻上さんの創る物語は、それらの映画の醸し出す雰囲気そのままに、ふわふわした独特の間のあるものだった。
両方のお話に出てきた「ひだり布地屋」のおばさん役はもたいまさこさん以外あり得ない。

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2018年12月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

やっぱり荻上さんだなあ、と思った。
読んでいて何度もじわじわい涙が出てきてしまう。
モリオやエウのような人が近くにいるからかもしれない。
それを感じ取れるひと、その世界を理解できる人は、きっと「かもめ食堂」が好きだとおもう。
ミシンの思い出は、私の記憶にもつながる。
母のマンションを片付けながら、最後まで捨てられなかった足踏みミシン。
小さいころの記憶がよみがえってきた。

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2015年04月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ムコリッタがすごく面白かったので、こちらも読んでみました。

表題作は、とても好きでした。

エウとシャチョウはもう無理でした。
猫とともに暮らす身としては、読むのがしんどくて…泣きながら読みました。

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2020年03月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

映画「彼らが本気で編むときは」「かもめ食堂」の監督による、第一小説集。「モリオ」と「エウとシャチョウ」の中編2作。

子供の頃、一番お気に入りだった場所が母の踏むミシンのペタルの上だったという「モリオ」。母から花柄の布の端切れをもらい、うっとりとそれに顔を埋めた日々。
母が亡くなって、形見のミシンを独り暮らしのアパートに運び込み、モリオは思い出の中の花柄の布を買い求め、スカートを縫い始める。履きたくてたまらなかった花柄のスカートを。
モリオの下の部屋に住む少女は、モリオのミシンの音が聞こえているときだけ頭痛が和らぐモリオにミシンをかけてと頼む。少女は父親から買い与えられたピンクのランドセルが気に入らない。自分は、黒かブルーが良かったのに。
出来上がったスカートをこっそり自分の部屋で着るモリオを外に連れ出す少女。手をつないで前を向いて、堂々とスカートで町を歩くモリオと少女。少女もまた、嫌いなランドセルをビルの上から投げ捨てる。本当にありたい自分でいることの自由と清々しさと力強さが際立つ。

「エウとシャチョウ」のエウも、どんな職業もうまくいかない男だけど、猫の心を読むことに長け、猫のお相手をしている。彼にだけ心を許す猫たち。そして、癌で死んでいく彼の飼い猫・シャチョウとの日々。こちらも、淡々とした日々が描かれていながら、しみじみと心に浸透していく切なさがある。

二つの作品は、どちらも映画監督らしい言葉ですべてを説明しようとしない、立ち上る雰囲気で作品の世界を作り上げるような物語。どちらも、映画にすると素敵な作品になりそうです。そして、次の小説も期待大です。

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2019年08月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

映画『トイレット』の原案小説。舞台が日本だし兄弟も姉が一人に変わっている。情緒が不安定で弟に当たりが強い所が好きになれない。不器用に生き、自分の大切なものを誇るというテーマは映画も小説も変わらない。
併録の『エウとシャチョウ』も、社会に適合出来ないが自分に精一杯出来ることでひっそりと生きていく姿を描いている。ひだり布地屋さんはどうしても、もたいまさこさんで想像してしまう。

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2018年07月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「モリオ」と「エウとシャチョウ」の2話立て。
一話目のモリオは死んだ母の形見の足踏みミシンを譲りうけ、小さい頃の思い出と共に花柄スカートを作っていくお話。(階下の女の子も登場)
二話目は僕(エウ)と彼女(ヨーコさん)とその彼女が飼っていた猫(シャチョウ)の話。
シャチョウは末期癌で、僕は猫のお相手という職業でヨーコさんは耳かきが天才的な耳鼻科医。
この一冊は主に布と猫の話。
個人的には猫にあまり思いいれが無いというか、興味がないので2話目にはあまり惹かれず。
1話目のほうが雰囲気好きだけど最後のオチがイマイチかなぁ。

まぁ1話目のモリオもミシンがしたいがために会社を休んだり、二話目のエウも何をやってもノータリンだけど猫のお世話だけで生計を立てられるくらいの収入。。。あたりが非現実的。

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2011年11月29日

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